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賢いはたらき方のススメ
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プロレスラーからアイドル、テレビスターまで数えきれないほどのインタビューを行ってきた、プロインタビュアー、吉田豪さん。インタビューをあまり受けない有名人も、吉田さんなら受けると言わしめるほどに厚い信頼を寄せられている。「10代までは心を閉ざして世の中を斜めに見ていた」という吉田さんが、心の内を見せることが少ない有名人から言葉を引き出すために心掛けていること、ビジネスにも生かせる会話をつなぐコツやコミュニケーションを円滑にする工夫について伺った。

自分が生きていく方向を示すプロの肩書づくり

写真:吉田豪さん

編注:本インタビューはリモートで行われた

―“プロインタビュアー”という肩書は、吉田さんが作られたと聞いています。インタビューに特化したプロと名乗ることになったきっかけは?

吉田:編集プロダクションからプロレス専門雑誌に転職し、その後フリーランスになったときに、名刺を作りました。最初はプロフェッショナルレスリング(プロレス)をもじって、「プロフェッショナルライティング吉田豪」と記していたんです。

肩書にこだわっていなかったのですが、『Number』(文藝春秋)での仕事の際に「プロレス評論家」と書かれたときは、ちょっと頭を抱えましたね。プロレスを評論したことはないぞと。これはいけない、「自分はこういう人間ですよ」と打ち出したほうがいいなと。
では、何のライティングでプロフェッショナルと名乗れるかと考え始めました。この時にインタビューと書評、この2つのジャンルで生きていこうと決め、“プロインタビュアー”という肩書を名乗るようになったんです。

―子供の頃から、人に話を聞くことが好きでしたか?

吉田:まったく反対で、子供の頃は世の中を斜めに見ていて、大人に心を開くもんか!と思っていました。
高校を卒業した後の無職期間に始めたバイトが、変わるきっかけになったかな。最初は心を閉ざしていたんですが、バイト先の上司はユニークな経歴の持ち主で、アイドルのバックバンド、マネージャー、プロのバンドとしてデビューしたことがある人などがいました。ここには書けないような裏話などを教えてくれるなど、最高じゃないですか。どんどん話を聞くのが楽しくなって、心を開いたほうが面白いなと思うようになりました。

“インタビューはプロレス”。協同作業でいい試合を作り上げていく

―吉田さんはよく「インタビューはプロレス」と例えていますね。そのココロは?

吉田:先日、元女子プロレスラーのブル中野さんのYouTube「ぶるちゃんねるBULLCHANNEL」に出演したときに、「どういうふうにインタビューをすれば面白い話を聞き出せますか」と質問されて、「インタビューはプロレスみたいなもの」と答えました。その一言で、ブル中野さんが謎が解けたという表情をしていて、この人はちゃんとわかってくれる人だと思いました。

インタビューは格闘技みたいにつぶしあいをするものだと思っている人が多くいますが、僕にとってはプロレスみたいなエンターテインメントであって、つまり観客を無視して一方的につぶすようなものじゃないんです。むしろ協同作業でいい試合を作り上げていくものだし、その上で試合中にどれだけ緊張感を作れるかなんですよ。
高田延彦さん率いるUWFインターナショナルでは、相手が気を抜いていたときにキックや関節技が入ったら試合が引っ繰り返って突然終わることもある裏ルールがあったらしくて。これが理想で、インタビューも「気を抜いたら攻めるよ」という空気をにおわせて、緊張感を持たせるのがいいですね。

―インタビューのプロレスを行う上で、吉田さんは下調べを綿密に行いますね。絶対に抑えておく基本はありますか。

写真:吉田豪さん

本棚からあふれかえるほどの書籍がある吉田豪さんの仕事場

吉田:そうですね。もともとデータを集めるのが好きなので下調べはしっかりやります。基本は相手の著書を読むこと。また、他の人の著書に登場しているなどが見つけられればインタビューの話題も広がります。ネットで収集できる情報はもちろん、まる1日かけて調査して、いかにしてインタビューでさらりと聞くかですね。過去のインタビューで疑問があれば、それも相手に投げかけます。

―苦手な人をインタビューする場合はどのように臨みますか。

吉田嘘をつかないことをルールとしてインタビューしているので、「あなたのことが好きで、興味があって取材に来ました」というスタンスをとれるようにしています。話が膨らまなさそうだなと思ってオファーを断ることもたまにありますが、下調べをたっぷりしているうちに興味を持てるポイントがひとつは見つけられるものですし、そこから話を広げられると思います。

―下調べのデータが少ない時はどうされますか。

吉田:長くインタビューをしてきたので、データがなくても、経験値で雑談からインタビューが成立することも増えてきました。最近、YouTube の街録chへの出演オファーを断り続けていたら、だったら代わりにインタビュアーとしてこちらの話を聞いて欲しいと言われて、本人のデータがほぼ何もないまま生い立ちから掘り下げたことがあったんですけど、それでもそれなりに深い話は聞けるんですよね。

リアクションを使い分けて正解の道を探すと、
深い話まで掘り下げられる。

―深い話まで掘り下げていくために気をつけていることはありますか。ここさえ押さえておけば相手の懐に飛び込んでいけるというポイントはありますか?

吉田:重要なのは「いつもしている話はいらない」「あまり話したことのない深い話が聞きたい」と言葉に出すことなく相手に伝えることですね。つまり、相手が話したい話題の中で道が 3 通りほどあったら、こっちの反応によって相手を誘導していくんです。
いつもの話になったら「ああ、それいい話ですよね」とか言って、違うルートを選ぶように持っていき、それが面白い話だったら派手に笑ったり驚いたりするなどリアクションをして誘導していくんですよ。これも、プロレスでわざと派手な音を出したりしながら、相手の技にやられた痛みを観客に伝えつつ盛り上げていくのと似ているなと勝手に思っています。
プロレス自体は、お互いのお馴染みの技を披露し合って盛り上げていくものだけど、僕の場合は鈴木みのるが相手の技をわざと避けたりするのにも近いのかもしれないですね。予定調和は拒否しつつ、ちゃんと試合を盛り上げていくという。

次ページ 話を掘り下げたら、バラエティ番組にしない、引き際の見極め方が大切。

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