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ITジャーナリストや現役書店員、編集者が選ぶ デジタル人材のためのブックレビュー 
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今月の書籍

レビュワー:新野 淳一

  • 『チームトポロジー』
  • 『恐れのない組織』

ソフトウェア開発チームの構成に必須の専門知識に踏み込む、類を見ない一冊

 ソフトウェアの構造(アーキテクチャ)は、そのソフトウェアを開発した組織の構造をまねてしまうという「コンウェイの法則」は、IT業界においてよく知られている法則の一つだ。
 一方で、ソフトウェアのアーキテクチャを適切に設計するには専門的な知識が必要であることは論を待たない。であれば、そのアーキテクチャに大きな影響を与える組織の構造、すなわちチームトポロジーの決定にも専門知識が求められるはずだ。
 本書はその専門的内容に踏み込む、ユニークかつ貴重な内容の一冊である。

 現代のソフトウェアの多くは複数のチームが連携して開発を行っている。チームをいくつに分け、それぞれの人数を決め、チームごとにどのような役割と責任を持たせるのか、チーム間のコミュニケーションはどうするのか、といった課題を、ソフトウェア開発の現場を十分に理解せずに適切に解決することはできない。

 本書は上に挙げたそれぞれの要素について、事例や考え方を紹介しつつ、何が適切であるかの指針を示してくれる。例えば、長続きする小さなチームが標準であること、ソフトウェアの境界のサイズをチームの認知負荷に合わせること、4つの基本的なチームタイプによってチーム間のインタラクションが単純化できること、などだ。

 ソフトウェア開発組織の構成やオフィス環境、ツールを含む周辺環境は現場のチームが機能することを優先して考えるべきであるとし、そのためにソフトウェアのアーキテクチャや開発方法論にまで論が展開される本書の内容は、経営陣や人事部門が組織を決めるものだ、という先入観を持つ多くの人にとって目の覚める思いだろう。

 それに加えて本書では場面ごとに具体的なチーム構成例など、実際に「使える」ことを意識して説明されている点も高く評価したい。ソフトウェア開発に関わる組織のリーダーにぜひ読んでもらい、経営陣や人事を説得する材料にしてほしい。

『チームトポロジー』

著者:マシュー・スケルトン、マニュエル・パイス

訳:原田騎郎、永瀬美穂、吉羽龍太郎

出版社:日本能率協会マネジメントセンター

https://jmam.shop/shopdetail/000000004375/

健全な組織に欠かせない「心理的安全性」に取り組むとき、最初に手にすべき一冊

 本書の主題は、組織における「心理的安全性」の重要性と、その実現方法である。

 「心理的安全性」は、Googleが5年にわたる調査の結果、最高のチームを作るために飛び抜けて重要であると指摘された要素だ。そしてそのことで、この言葉と重要性は多くの人に知られることとなった。

 心理的安全性の欠けている組織では、上司や同僚との軋轢を恐れて誰も率直な発言をしなくなる。たとえ問題に気づいてもだ。多くの読者も、いちいち組織内の問題を指摘して波風を立てるよりも黙って見過ごしてしまおう、という気持ちになったことがあるはずだ。

 本書の例を挙げれば、それによって集中治療室のナースは医師のミスを指摘できず、フォルクスワーゲンはディーゼルエンジンでの不正を止められず、ノキアはスマートフォンの台頭を見過ごし、スペースシャトルは爆発してしまったのだ。

 心理的安全性は最高のチームのための要素であるだけでなく、失えば組織そのものを危うくする大事なものでもあり、多くの人がそれに気づいていないことが本書の前半で示される。

 そして心理的安全性を実現するのはリーダーだとし、実現方法に触れていくのが後半である。率直な発言を引き出し、発言しても上司や同僚の反発やひんしゅくを買わない関係を作り、失敗から学ぶ組織を作るためのツールが紹介される。

 本書の説明は明確で具体的ではあるが、実践し実現するのは容易ではないだろう。真剣に心理的安全性に取り組みたい読者は、類書を読み、さらなる学習や実践を重ねることになると思われる。そのための適切な第一歩を踏み出す基礎となり得るのが本書の大事な存在意義だと考える。

『恐れのない組織』

著者:エイミー・C・エドモンドソン

訳:野津智子

出版社:英治出版

http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2288

今月のレビュワー

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新野 淳一(にいの・じゅんいち)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。

2022/02/25

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