サブスクリプションビジネスへの注目が高まり、さまざまな企業が検討・参入するなかで、ビジネスを成功に導くためには何が必要になるのでしょうか。2019年11月6日、NTTコムウェアは、日本電気株式会社(以下NEC)と共同で「サブスクGO!」プライベートセミナーを開催しました。NTTコムウェア テレコムビジネス事業本部 ビリングソリューション部長 大柳による挨拶の後、「これからのサブスクビジネスを成功に導く戦略と戦術」をテーマに、必要となる視点や手法、そして重要となるポイントとSmart Billing®の活用について示しました。
サブスクリプション断捨離で生き残るためには
紣川 謙 氏
株式会社CustomerPerspective
代表取締役
基調講演を行ったCustomerPerspectiveの紣川謙(かせがわ けん)氏は、サブスクリプションの現状について、「サービスの普及が進み、月々の支払額が増加した結果、『サブスクリプション疲れ』という現象が起き、サービスの『断捨離』が始まっている」と指摘します。
「サブスクリプションだから使ってもらえる訳ではなくなりつつある。そんな今こそ、顧客に選ばれるサービスを構築するためには、まず『コア・バリュー・プロポジション(CVP)』として、誰に、どのようなベネフィットを、いくらで提供するのかを考えることで、『提供価値』を明確化したサービス設計を行う必要がある」という持論を展開。
その上で、サービスのプロトタイプを早期に創り、潜在顧客、既存顧客からフィードバックを受けて、改善を繰り返すことで『顧客体験』を向上させることが肝要であると説明しました。
さらに、“継続”が前提となるサブスクリプションのサービスでは、顧客の利用データを元にリテンション(顧客維持)の施策を講じることが基本になりますが、紣川氏は顧客獲得後の「初期エンゲージメント(関係構築)が重要である」と力説します。
「『鉄は熱いうちに打て』という言葉があるように、サービス入会直後の最もサービスに対して関心が高い時期に顧客体験を向上させる施策を打つことで、“継続”を選択する顧客の割合を高めることができる」
その中で、「料金プランの設定については『お得感を大切に、持続的成長が可能な水準に』という基本的な考え方をベースに、オプションとしてアップセルとクロスセルのプランを用意し、収益を最大化させる設計の必要がある」と訴えました。
サブスクリプションとは、ビジネスの”目的”を達成するための”手段”
松田 尚久 氏
日本電気株式会社
デジタルサービスソリューション事業部
事業部長代理
NECの松田尚久氏は、これまでの数多くの支援実績から、サブスクリプションビジネス成功のポイントは「ビジネスの“目的”とサブスクリプションという“手段”の合致」、「小さく始めて素早く事業を改善していくこと」の2点であると分析します。
最初に松田氏は、BtoBのプリンター事業を手がける企業を例に上げ解説しました。
その企業は「中国において純正サプライ品の利用を促進するという“目的”があった」とし、「プリンター貸出後に純正サプライ品を購入してもらうという従来の”手段”から、通信でプリンターの使用状況を収集し、トナーや用紙の残量が少なくなったら自動配送するという仕組みに変えた」と説明。そして、「印刷枚数に応じて従量課金するサブスクリプションという“手段”にシフトすることで、純正サプライ品を含めたトータルでの利用促進に成功した」と力説しました。
次に、農業をIT化し、ビニールハウス環境を通信でモニタリングする事業を展開する企業の例を提示し、「IT化がまだピンときていなかった農家の方々に、ITを受け入れてもらうという“目的”のため、初期コストの必要な売り切り型ではなく、サブスクリプション型で導入いただくという”手段”を用いた」と説明。そして、「顧客である農家の方々とともにアジャイル開発でスピード感を持って改善した結果、提供価値が向上し、サービスイン後に数十社出現した競合相手へ優位性を保ち続けることができた」と語り、”小さく始めて素早く事業を改善していくこと”で顧客満足を得る重要性を強く訴えました。
最後に松田氏は、「NECでは前述したようなサブスクリプションビジネスの立ち上げ支援実績や、新たな社会価値を創造するコミュニティを主催してきた経験を元に、5G/デジタル時代に向けてネットワークに付加価値を加えたサブスク型でのサービス“NEC Smart Connectivity”を展開していく」とまとめました。
SaaS導入では終わらない!ビジネス成功の鍵は運用プロセス
長尾 憲幸
NTTコムウェア株式会社
テレコムビジネス事業本部
ビリングソリューション部
顧客料金ビジネスユニット長
サービスの継続的な提供が必要となるサブスクリプションビジネスにおいて「最も労力を要するのは受注後の運用プロセスです」と、テレコムビジネス事業本部 顧客料金ビジネスユニット長 長尾は訴えます。
サブスクリプションの運用プロセスでは、“継続”するがゆえに、顧客に紐づいた商品や契約の変更履歴を適切に管理する必要があり、それらの情報に基づいた“毎月”の料金計算・請求、回収・決済というサイクルの発生が、従来の売り切り型と大きく異なる点だといいます。
長尾は、「全契約者に対して正確かつ滞りなくこのサイクルを回すことが求められますが、顧客が増えるほどこれらバックオフィス業務の負担が重くなることは明らかで、持続的に業務の効率化・自動化を図る仕組みが必要」と主張します。
また顧客との継続的な関係構築のためには、「サブスクリプションビジネスに合わせた各種KPIをタイムリーに測定・可視化し、継続的にデータを分析することで、レコメンドなどの提案につなげることが大切であり、業務プロセスの中でアップセルやクロスセルにつなげる施策を打ち出すことで、より収益性を高めることができます」と説明しました。
「ビジネスにスピード感が求められる今、サブスクリプションビジネスを立ち上げる事業者は、事業計画をはじめ、ビジネスモデル、サービスプランや料金体系、決済手段など、戦略、戦術の両面における重要ポイントを決定することに注力し、前述した運用プロセス以降であるバックオフィス業務の課題解決に関しては、汎用的なサービスの活用を検討すべきです」
そうした考えのもとにNTTコムウェアが提供しているのが、サブスクリプション管理プラットフォームの「Smart Billing®」です。「Smart Billing®は、サブスクリプションビジネスの運用プロセスに必要なすべての機能を備えたクラウドサービス。最短1か月でそれらの仕組みを整備することが可能で、導入時には他のSaaSや基幹システムとの連携まで責任をもってトータルサポートできるのがNTTコムウェアの強み」と紹介しました。
最後に、「サブスクリプションビジネスには、戦略・戦術に加え、よりよいITを効果的に用いることが重要であり、単に『SaaSを導入すれば終わり』ではありません」と訴え、「SaaSや既存の基幹システムと連携することで業務プロセスが正常に運用され、初めてサービスの立ち上げや成功を実現することが可能になります。だからこそIT面においては信頼のおけるパートナーと組むべきです」と締めくくりました。
2019/12/12
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