NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモソリューションズの3社が連携し、日本の通信インフラを次世代へと進化させる「PSTNマイグレーション」を2024年12月に完遂した。長年にわたり国民生活を支えてきた電話ネットワークを、サービスを止めることなくIP網へ移行させた歴史的な取り組み、大規模インフラ転換プロジェクトである。
2025年度IT賞 IT優秀賞(社会・環境価値の創出)受賞の対象となった本プロジェクトについて、NTTドコモソリューションズ 執行役員 ネットワーククラウド事業本部 IOWN推進部長の北田祥規氏が、その意義と成果について第41回IT戦略総合大会の受賞記念講演で語った。
左から、NTT東日本株式会社 木村泰裕氏 伊藤努氏
NTTドコモソリューションズ株式会社 青木英夫氏 北田祥規氏 田中謙次氏
「止めることが許されないインフラ」を支える挑戦 ― PSTNマイグレーション
PSTN(Public Switched Telephone Network)とは、いわゆる黒電話の時代から続く電話専用ネットワーク(公衆交換電話網)。従来は、光電話などIPサービスであっても、最終的にPSTNを経由して他事業者(例:他通信キャリア)と接続していた構成であった。
NTTドコモソリューションズ
北田祥規氏
「このPSTNを支えてきた中継交換機や信号交換機が、いよいよ維持限界を迎えるため、料金体系や接続ルートを含めて見直し、大規模にIP網へ移行する必要が出てきたのです。PSTNマイグレーションとは、日本の通信インフラを次世代へ進化させる、歴史的なプロジェクトです」(北田氏)
PSTNマイグレーションが特別なのは、「止めることが許されないインフラ」を扱っている点だ。電話は、緊急通報、医療・行政、企業活動など、社会のあらゆる場面で使われている。そのため、工事中に「電話が使えなくなる」ことは許されない。
「一般の通話だけでなく、警察や消防につながる緊急通報も対象です。全国、全事業者、全ての呼種(通話種別)を同時に扱うため、非常に厳しい品質基準が求められました」(北田氏)
10年に及ぶIP網への切り替え準備、7年の開発期間を経て、IP網切り替え工程(2021年5月~2024年12月)を完了するという長期にわたるプロジェクトとなった。日本全国に張り巡らされた電話網、他の通信事業者との接続、料金体系や仕組みの変更といった要素を同時に見直しながら、利用者への影響を最小限にして切り替えるという、極めて難易度の高い対応が求められた。
3つの取り組みを同時に遂行― PSTNマイグレーション
PSTNマイグレーションでは大きく3つの取り組みを実施した。
①終了サービスの廃止
利用実態や技術的制約を踏まえ、2024年1月1日終了対象のサービス*を一斉廃止。
- * 2024年1月1日終了対象のサービス:加入者交換機から、中継交換機、信号交換機、相互接続交換機を経由して他事業者へつなぐサービス
②料金変更の実施
距離別料金から全国一律料金へと変更しメタルIP料金体系を導入。利用者の分かりやすさと利便性を向上。
③接続ルートのIP化
今までPSTNでつながっていた接続ルートをIP化したことにより、接続先事業者でのフルメッシュ接続、緊急通報受付のIP化を実現。電話会社同士の接続はIPベースとなり、緊急通報(110番・119番)もIP網で受け付ける仕組みへと進化した。

これらを全国規模・全事業者・全呼種を対象に実施した点に、本プロジェクトの難易度と先進性がある。
大規模かつ高品質を両立させた組織力
プロジェクト推進にあたり、NTT東日本・NTT西日本は現場の切替本部を設置。大規模プロジェクトを支えた「統制」と「連携」。北田氏が強調したのは、技術だけでなく体制づくりの重要性だ。 NTTドコモソリューションズは、ネットワークと業務システムを横断するソフトウェア開発・品質統制・技術支援を担った。

ネットワークと業務システムを横断した統制体制、商用環境を使った事業者間接続試験、コミュニケーションツールを活用した迅速な情報共有、これらを組み合わせることで、重大な通信影響0件、工事遅延・リリース遅延0件、東西合わせて全国凡そ1,000万超の加入者の切り替えを完遂した。
北田氏は、「過去に類を見ない規模の切り替えでしたが、グループ一体となることで乗り越えることができました。技術力と統制力、そしてグループ連携の成果です」と語る。
国民生活への影響を最小限に、そして次の時代へ

PSTNマイグレーションの完遂により、日本の電話サービスは品質と利便性を維持したままIP時代へ移行した。老朽したPSTN設備の撤去工期短縮にも取り組むことで、消費電力削減・GHG排出量削減といった環境面でも貢献していく。
次のステージへ――IOWN構想への展開
講演の締めくくりで北田氏は今後の展望としてIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に言及した。

「NTTグループは次世代の情報通信基盤として、IOWN*構想を掲げています。IOWNに向けた最適なネットワーク構築、運用、マネージメント。そういったところに今回のPSTNマイグレーションで培った、大規模ネットワークを安全・確実に変革するノウハウが非常に活かせると思います。これからも日本の情報通信基盤を支えていきたいと思います」(北田氏)
- * IOWN(Innovative Optical and Wireless Network):あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・ 情報処理基盤の構想。(https://group.ntt/jp/group/iown/)
社会インフラを支え続けてきたNTTグループの技術と組織力。
PSTNマイグレーションは、その価値を改めて示す取り組みとなった。
【ニュースリリース】
NTTドコモソリューションズ | 「IT優秀賞(社会・環境価値の創出)」受賞について
2026/03/13
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