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NTTコムウェア「スポーツビジネス」インタビュー スポーツビジネスにおけるNTTコムウェアの取り組み
NTTコムウェア「スポーツビジネス」インタビュー スポーツビジネスにおけるNTTコムウェアの取り組み
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スポーツビジネスの変革期といわれる中、NTTコムウェアでは、ICTとデータサイエンスを活用したスポーツビジネスのサービス化を推進しています。今回はその取り組みを担う、ビジネスインキュベーション部のスポーツグループとデータサイエンス推進室の社員が、サッカーやラクロスでの実証実験や、未来への想いを語ります。

自社の強みを、どうビジネスに結びつけていくのか

―スポーツビジネスに取り組むことになったきっかけについて、お聞かせください

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中里 英則
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部
統括課長

中里:2020年に向けて、スポーツ関連ビジネスが盛り上がりをみせています。2016年に内閣府が発表した「日本再興戦略」の中でも、2015年時点で5.5兆円のスポーツ市場規模を2025年までに15兆円にするという目標が掲げられました。そのくらいマーケットポテンシャルが高まる中、私たちビジネスインキュベーション本部でスポーツビジネスを立ち上げました。

龍:2017年度に内閣府が実施した「先進的な宇宙利⽤モデル実証プロジェクト」において、衛星の位置情報データ(GNSS: GPSや準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称)を利用したスポーツ分野での実証実験を行いました。宇宙からのデータと、映像や心拍といった地上データの情報を収集・分析し、スポーツ選手がどのように活用できるかということを、慶應義塾大学とスポーツメーカーと組んで検討したのが始まりです。

―スポーツビジネスのサービス化に向けた取り組みについて、お聞かせください

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得永 真吾
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部
データサイエンス推進室
スペシャリスト

得永:衛星の位置情報データは、現在でもプロのサッカーの試合などで活用されていますが、私たちは、スポーツビジネスのサービス化のファーストステップとして、移動量や心拍情報などの「フィジカル」な活動データを収集・分析し、「選手育成」に活用することに着目しました。

龍:スポーツ選手は、小学生から中学生、そして高校生と、段階を踏んで強くなっていきますが、目標となる選手の活動データを蓄積することで、今の自分はこの段階にいて、めざすところとのギャップはどれだけあるのかということを、数値という客観的な指標から理解することができるようになります。さらに、ギャップの改善を練習に反映すれば、PDCAサイクルが回せるようになります。将来的には栄養や脳の働きなどの多種多様なデータを収集してビッグデータを作り、スポーツ選手育成のロールモデルを作ることをめざしています。

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スポーツ選手育成のロールモデル

中里:コムウェアの強みは、データマネジメント技術やそのノウハウがあることです。収集したデータの見せ方や活用方法を検討するプロダクトマネージャーやプロモーションを担うスポーツグループと、データ選定やビッグデータ分析、各種ツールの活用支援を行うデータサイエンス推進室の二つのチームでフォーメーションを組んでスポーツビジネスを推進しています。

選手との試行錯誤とデータの蓄積により、ニーズに合ったサービスを構築する

―大宮アルディージャU18様とこれまで行ってきた営みについて、詳しく教えてください

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龍 弘大
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部

龍:まず、データの収集・分析を進める上で、どの種目にターゲットを当てるべきかを考えたとき、「フィジカル」「選手育成」と現状のデバイスで取得できる「データ」に相性がいいのはサッカーだと判断し、育成年代の最高位にあたる高円宮杯JFA U-18プレミアリーグに2019年参入し、より高いレベルの育成をめざす、大宮アルディージャU18様のご協力を得ることができました。

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GNSSデバイスと心拍計

U18チームの全員がGNSSデバイスと心拍計をつけて練習から試合まで毎日データ収集を行いました。GNSSデバイスはベストの背中に、心拍計は腕につけますが、非常に軽いので練習終了時にはつけていたことを忘れるくらい違和感もなく利用できます。翌日には選手やコーチに対してフィードバックをして、実際に気になったデータがどれなのかも伺いました。

以前はコーチと選手は、感覚や主観で話していたと思いますが、実際に試合でどの程度スピードを出していたか、1試合あたり何キロ走っていたのか、どのくらい心拍が上がっていたかなどの数値を客観的に見ることができるので、コミュニケーションツールとしての効果もありました。

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選手向けのレポート

得永:分析結果をもとに大宮アルディージャU18のトレーナーの方々と定期的に議論を重ねています。その中で、「心拍数をそのまま表示するのではなく、10分毎にまとめてはどうか」など育成の観点で選手に分かりやすく伝えるためアイデアもいただきながら、U18の選手が興味を持ちやすいように、収集したデータの見せ方も工夫しました。選手向け個人リポートでは、最高速度などの各項目の履歴を出し、グラフ化をしています。また、U18の選手とコーチに渡すものとでは、見せ方に違いをつけるようにしています。選手には誰もが楽しく活用できるように簡易版を、コーチには詳細版をという形です。分析自体は同じですが、UIは目的に応じて変えています。

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選⼿Aの試合後のレポート

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九内 崇弘
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部

九内:取得したデータはセルフアセスメントとしても活用できます。体調やパフォーマンス具合を把握して、「次はがんばるぞ」といったモチベーションアップにつなげてもらうことができます。また、選手のパフォーマンスは、いいときもあれば、当然悪いときもあります。その原因がどこに現れてくるか、これを専門用語で「説明変数」と言います。データサイエンス的には、さまざまな説明変数を駆使して高い精度で表現するという話になりますが、あまり説明変数を増やしてしまうと、現場で対策を考えるのが難しくなります。「選手育成」のためには、一番影響度の大きいものを選りすぐり、3つ程度の要因でパフォーマンスが説明することができるよう検討を進めていきたいと考えています。

また、スポーツビジネスのサービス化には、誰がそのデータを見て、理解して、選手たちにフィードバックをかけるのかを明確にするという課題があります。サッカーチームのように組織化されている場合は、コーチが自らアナリストの役割も果たしてくれます。今後は、データサイエンス学科やスポーツアナリスト学部などでも、マネージャーのような形で学生の協力を得ることで、このような営みを進めていけると考えています。

―次に、ラクロスの実証実験での活用についてお聞かせ下さい

中里:日本ラクロス協会は昨年度に一般社団法人化し、2024年や2028年といった先を見据え、さいたま市とともにラクロスを盛り上げていこうとしています。コムウェアとしてもデータ活用の観点から大きく貢献ができるのではないかと考えています。さらにラクロスを盛り上げる一環として、男子と女子で違っていたルールを2019年1月に統一し、人数など男子のルールに寄せるという営みが行われていました。その中で女子の選手のパフォーマンスへの影響を検証したいという動きもありました。

―データとして、ラクロスとサッカーの違いは出てきましたか

龍:ラクロスで特徴的に見えたのは、1回で走る距離が長くなる傾向です。先ほどのサッカーで例えると、ディフェンダーがボールを持ってそのままゴール前まで走ってゴールを決めるという動きがラクロスでは起こりえるので、その動きの違いは実際のデータで確認することができました。

得永:フィールドの大きさはサッカーとほぼ同じですが、ラクロスの選手のほうがトップスピードで走っている時間が少し長く、上手な選手ほど、「フィジカル」のパフォーマンスを表わす数値が高い傾向がありました。そのため、試合結果が1人の上手い選手に大きく影響される点では、バスケットボールに近いです。

―実証実験の中で、苦労した点などあれば教えてください

九内:デバイス類の物理的な移動の苦労は別にして、やはり天候です。3日間のラクロスの試合のうち、はじめの2日間は豪雨ということがありました。天候に違いにより取得するデータに偏りが出てしまいます。ただし、現場で使ってもらうイメージ作りができた点ではよかったと思います。

龍:想定外のことも多々起こりました。例えば実証実験を開始するその日の朝に、ようやく最後のデバイスが届いたとか(笑)。そのような苦労なら数え切れません。練習と試合のデータを1週間分取りたいと考えたとき、デバイスを潤沢に用意するのはプロジェクトとして現実的ではないので、データを可能な限り速く取り出せるような改良もしました。

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西村 恒人
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部
データサイエンス推進室
スペシャリスト

西村:私はデータモデリングから機械学習まで技術面のアドバイス・サポートをしています。心拍数は1秒単位、衛星の位置情報データは0.2秒単位と、異なる単位で取得します。データ分析を始めるには、まずはそれらの項目を整理・統一する必要がありますが、それだけではなく分析を行う目的に沿ったデータの加工が必要となるため、取得するデータの領域の知識がないと難しいことがあります。無数のデータが存在する中、例えば高校生が疲れる要因は何であるか我々の知識のみでは想像がつきにくい点もあるので、データがもつ特徴を自動で抽出できるツールを導入することでコーチの方も気づきにくいような新たな傾向が見つけられないか日々試行錯誤しています。

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立川 範
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部
データサイエンス推進室
スペシャリスト

立川:データサイエンス担当として、衛星が収集したデータを機械学習の手法などを使ってさらに分析し、これまで見えていなかった部分で価値のあるものが提供できないか探しています。例えば、体重・睡眠時間・疲労度など、選手のアンケートで得たデータと、走行距離や加速度などの衛星から収集したデータをツールで分析し、どのデータの相関性が強いのかなど。データを見て、分析して、お客さまの潜在的なニーズを引き出すことは難しく、これからも苦労が続いていくのだろうと覚悟しています(笑)。

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久保島 彩
NTTコムウェア株式会社
ビジネスインキュベーション本部
スペシャリスト

久保島:私はお客さまが求めるサービスを形にすべく、裏のモノづくりを担当しています。サービス価値を高めるため、社外のパートナーと連携して、これから先に必要になる機能の検討を進めています。まだ明確な答えのない分野にチャレンジしているため苦労もありますが、その分やりがいのある仕事だと感じています。

―サッカーやラクロスなど競技によって評価するデータの指標は違うのでしょうか

得永:取得できるデータは決まっているので、そこからスポーツ選手のパフォーマンスを評価する指標を先行して検討しました。実際に、サッカーでもラクロスでも、その結果が期待通りに収集できました。他競技では、コムウェアにアスリート社員がいるビーチバレーでも有効に活用できるか実験に協力して貰いました。データは問題なく取れましたが、ビーチバレーは走ることがメインのスポーツではないので、サッカーやラクロスとは評価の指標が違ってきます。アスリート社員からコメントをもらいながら、よりブラッシュアップしていきたいと思っています。

―「選手育成」のために、他にも分析すべきと思うデータはありますか?

久保島:衛星の位置情報データに近いところでは、ジャンプや歩数、踏み込んだ時の力の関わり具合などのデータを取りたいと思っています。個別にはセンサーデバイスが存在していますが、プレーしている選手に違和感を与えない低コストの手段も必要です。そのほか、睡眠時間、食事の量、摂取した栄養素、血液検査の結果といったプレー外のデータも収集したいですね。特にスポーツ選手は鉄分が足りないと酸素が回らなくなります。こういったデータがあればあるほど、さまざまな状況を説明しやすくなるのではないかと考えています。

新たなサービスの創造が、スポーツの未来を変えていく

―今後、どのようにサービスを展開していくのか、展望について教えてください

中里:これまでの2年間は実証実験などを通じて、どういうデータを収集できるのか、どのような活用の仕方があるのかを実地でやってきました。現在それを体系化して、システムをツール化しているところです。今後は実際にテストマーケティングを実施し、その次のフェーズとして、選手育成サービスの正式なリリースをめざしていきます。将来的にコムウェアのサービスが、スポーツを科学的に取り組んでもらうきっかけとなり、やがて一流アスリートとなって活躍する未来が訪れるようにスポーツビジネスに取り組んでいきたいと思っています。

―サービスが展開されていくと、スポーツを見る側の意識も変わってきそうですね

中里:従来のスタジアムをIoT化して「スマートスタジアム」を作るという取り組みが進んでいて、最近では映像技術を駆使して実際のスタジアムにいるかのような臨場感を味わえる「デジタルスタジアム」がNTTで誕生しています。そういう施設の付加情報として、画面に表示されている選手が時速何キロで走っているといった運動情報を見ることができるようになるでしょう。もう少し進めば、選手のスタミナ量的なものも推定でき、「後半40分に、あとスタミナがどのくらい残っている。つらいけどかんばれ!」みたいな感じで、観客もより直感的に状況を理解しながら、選手を応援することができるかもしれません。夢はますます広がりますね。

2019/07/24

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