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ITジャーナリストや現役書店員、編集者が選ぶ デジタル人材のためのブックレビュー 
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今月の書籍

レビュワー:新野 淳一

  • 『ザ・ゴール コミック版』
  • 『図解即戦力 インフラエンジニアの知識と実務がこれ1冊でしっかりわかる教科書』

深い内容はそのままに、ベストセラーのエッセンスを手軽に理解できる好著

 IT企業は、企業や個人の「生産性を向上させる」ことをうたい文句にしたソフトウェアやサービスを数多く開発し、提供している。しかし「生産性の向上」とは、本当はなにを意味するのだろうか?それは新しいソフトウェアやサービスを導入することで本当に実現されるのだろうか?

 本書の導入部では、例えば一定期間に製造機械が生み出す製品の数や、従業員一人あたりの生み出す付加価値などの一般に考えられている生産性は「本当の生産性」ではなく、その向上をめざすだけでは無意味だ、という重要な指摘が行われる。

 「本当の生産性向上とは何か?それを実現するために何をするべきなのか?」が本書のテーマだ。そして本書の主人公が「本当の生産性向上」をめざして奔走するなかで、生産性向上のための考え方、指標の意味、解決方法が少しずつ見えてくる。主人公とともにそれを疑似体験できるのが本書の最大の価値だろう。読み終える頃には読者も生産性向上への理解を深めるはずだ。

 そして自分のお客様の生産性向上に、自分たちが、あるいはIT業界が作り出すソフトウェアは「本当の生産性向上」に貢献するものなのか、お客様と向き合ううえでも一段高い視線と知見をもたらしてくれるように思う。

 本書は有名なベストセラー「ザ・ゴール」を元にしたコミック版だ。短時間で読めて、しかも本書のエッセンスは十分に読み取ることができる。忙しいITエンジニアにおすすめしたい。

『ザ・ゴール コミック版』

原作:エリヤフ・ゴールドラット、ジェフ・コックス

監修:岸良裕司

脚色:青木健生

漫画:蒼田 山

https://www.diamond.co.jp/book/9784478039397.html

変化するインフラエンジニアの仕事を知るために管理者層も手に取るべき一冊

 クラウドの登場によって、インフラエンジニアの仕事は大きく変化した。データセンターの中で物理的なサーバやスイッチを操作する仕事から、管理画面経由でインフラをソフトウェアとして扱う「Infrastructure as Code」(IaC)のソフトウェアエンジニアとなったのだ。
 インフラエンジニアの守備範囲も変化した。組織によってはOSより上のレイヤであるKubernetesなどコンテナの実行環境も含むようになっている。DevOpsやSREといった新たな方法論の登場により、仕事のやり方も変化の波に襲われている。

 本書はこうした新しいインフラエンジニアが身につけるべき技術的な知識の範囲を広く網羅している。サーバやネットワークの基礎知識からインフラ設計のやり方、バックアップ、リプレースなど実践的だ。
 求人状況や労働環境、業務範囲、ケーススタディ、関連資格やインフラエンジニアのなり方などリアリティのある内容も多く、そこが本書の特徴である。
 ただしタイトルで「しっかりわかる教科書」とうたわれているものの、これだけですべてを学べるわけではなく、どちらかといえば詳細な用語解説集に近い。インフラエンジニアとしての知識を本格的に得るには、本書を手がかりに専門書などを当たることになるだろう。

 本書はインフラエンジニアに興味のある人にはもちろん参考になる。それだけでなく、ITにおける組織や人事に責任のある方々にも読んでもらいたい。クラウド時代のインフラエンジニアの価値とその役割をきちんと認識し、本書に書かれているようなインフラエンジニアの仕事を組織内で誰にどのようにアサインするのかを考えるうえで、大いに参考になるはずだ。

『図解即戦力 インフラエンジニアの知識と実務がこれ1冊でしっかりわかる教科書』

著者:インフラエンジニア研究会

出版社:技術評論社

https://gihyo.jp/book/2021/978-4-297-12289-8

今月のレビュワー

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新野 淳一(にいの・じゅんいち)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。

2021/11/19

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