

今月の書籍
レビュワー:新野 淳一
- 『クラウドFinOps 第2版』
財務面からクラウド利用の最適化を支援するための必携の書
クラウドの登場はIT業界に多くの変革をもたらしてきた。DevOpsはその変革のひとつである。オンプレミスの時代にはお互いの専門領域を守り、分業することが一般的であったが、DevOpsにおいては、開発担当者(Dev)と運用担当者(Ops)が互いに協力し、相互のフィードバックによって継続的にシステム改善を行っていくことが重要である。
本書のテーマ「FinOps」は、このDevOpsの考え方を組織の財務会計(Financial)にまで拡大したものだ。クラウドの最大の特徴は使った分だけ課金される従量課金である。財務会計の視点からもフィードバックが提供されるようになると、開発や運用の担当者は、より広い視点で自信をもって決断と実行ができるようになる。
例えば本書では、FinOpsによってクラウド費用が明確に把握できるようになったチームでは、開発環境に月額20万ドル以上の費用がかかっていることを認識し、わずか3時間で対策してコスト削減を実行した、などの例が示されている。
しかし問題はこのFinOpsの体制をどのように構築するかである。文化も知識も異なるであろう財務会計担当者と開発運用担当者が、どのような情報を参照し、どのような共通言語を持ち、どのような会議体で協力したらよいのだろうか?
本書を読むことで、そのFinOpsを実現する際に発生するさまざまな問いの答えを見つけることができるだろう。
FinOpsの活動を促進支援する「FinOps Foundation」という組織が提唱している「FinOps Foundation Framework」の紹介に始まり、ダッシュボードやレポートなどのUIの開発、コストの予測手法、そしてコストの最適化に向けた戦略と手法などが解説されている。
さらに一定期間のクラウド利用をコミットすることで割引を受けられる仕組みやコンテナ採用によるコスト削減のテクニック、そして最適化の自動化まで技術的な側面にも触れられており、組織論、技術論の両面が揃っている。
FinOpsは単にコスト削減のテクニック集ではなく、サービスや組織の成長に合わせてクラウドの利用を最適化する戦略の一部だということが、本書を通して理解できるはずだ。
それぞれに具体的な解説が多い分、気になった部分だけでも取り入れてみようという気持ちになれるのではないだろうか。
FinOpsは直接的に財務会計へのインパクトが見えやすい分野である。開発や運用担当も積極的にビジネスに貢献すべしという風潮が強まっている中で、そうしたインパクトのある手法を探しているITエンジニアに特にお薦めしたい。
※DevOps(デブオプス):ソフトウェア開発(Development)とシステム運用(Operations)を連携・統合し、より迅速かつ効率的にシステムを開発・運用するための考え方や手法。
『クラウドFinOps 第2版 ―協調的でリアルタイムなクラウド価値の意思決定』
著者:J.R. Storment、Mike Fuller
翻訳:松沢 敏志、風間 勇志、新井 俊悟、福田 遥、門畑 顕博、小原 誠
出版社:オライリー・ジャパン
今月のレビュワー

新野 淳一(にいの・じゅんいち)
ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。
2025/08/20