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今月の書籍

レビュワー:yomoyomo

  • 『改訂新版 電子工作入門以前』

電子工作の世界へ踏み出すための「入門以前」――電気の歴史からクラウド連携まで

日本の「メイカーフェア」で最大の規模を誇るMaker Faire Tokyoが、今年は10月はじめに開催されました。筆者はこのイベントにだいたい毎年足を運んできましたが、今年は都合がつかず、残念ながら参加できませんでした。主催企業の変更などの影響を心配しましたが、今年も盛況だったようです。

メイカーフェアは様々な分野の「メイカー(Maker)」が集うものづくりの祭典ですが、これに足を運んだことを契機に、ものづくり、特に電子工作をやってみようと思った人が、子ども、大人問わず少なからずいるはずです。

本書は、その「まえがき」から引用させてもらえば、「電子工作をはじめたいけれど、電気のことは何もわからないし、知らなければならないことが多すぎて何から始めたらよいか見当がつかない」人に向けた書籍です。

ただ、電子工作に興味がある人も、本書の第1章「電気の発明からトランジスタの発明まで」で、電気に関する発見の歴史を辿るのにいささか面食らうかもしれません。しかし、電気の原理と特性の発見の歴史だけでなく、現在のインターネットにいたる通信技術の発展まで含めて概観することで、電子工作がどのような技術の上に成り立っているかを俯瞰できます。

本書は書名が「電子工作入門」でなく「電子工作入門以前」なのがユニークですが、第2章から第4章までで、電子工作に必要な工具や道具の入手に関する情報、回路図の読み方、抵抗やコンデンサといった部品の使い方、そして電源(電池)について必要な知識など、まさに「入門以前」に必要な基礎的な知識を一通り押さえます。

そして、第5章以降は実作に入りますが、LEDを光らせる、音を鳴らす、ものを動かすといった、初学者がまずやってみたいことを実践するうちに、気がつけば、MP3プレイヤー、FMラジオ、赤外線リモコンカーなどの製作、そしてセンサーのデータをクラウドに送信するところまで到達する構成です。

本書は、2015年に刊行された『電子工作入門以前』の改訂版ですが、人気のあるマイコンボードのRaspberry Pi Pico Wが採用されており、現代的な電子工作に対応しています。それに加え、本書でも紹介される「micro:bit」や「Arduino UNO」といった安価なマイコンボードの登場により、電子工作の可能性は10年前よりもさらに広がっています。

本書は、必要な情報が明瞭簡潔に記述されている代わりに、電子工作の入門者がつまずく点を先回りして教えてくれる親切な本ではありません。早い話、この本だけで電子工作が何でもできるようにはなりません。しかし、本書を読みながら手を動かせば、自分が何を作りたいか、そのためには何が必要かが見えてくるでしょう。

『改訂新版 電子工作入門以前』

著者:後閑哲也

出版社:技術評論社

https://gihyo.jp/book/2025/978-4-297-15070-9

今月のレビュワー

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yomoyomo

雑文書き/翻訳者。1973年生まれ。著書に『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』など、訳書に『デジタル音楽の行方』などがある。ネットを中心にコラムから翻訳まで横断的に執筆活動を続ける。

2025/12/17

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