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ITジャーナリストや現役書店員、編集者が選ぶ デジタル人材のためのブックレビュー 
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今月の書籍

レビュワー:新野 淳一

  • 『サム・アルトマン:「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』

AI時代を託すに値するか? ChatGPT創始者の光と影を追う

今からわずか3年ほど前の2022年11月末にOpenAIが公開した「ChatGPT」は、それまで誰も経験したことのない高度なAIとの会話を可能にしたことで、今に至るまで続くAIブームを引き起こした。

本書は、そのOpenAIの創業者であり最高経営責任者でもあるサム・アルトマン氏の半生を中心に、彼が関わってきた起業家、投資家、ベンチャーキャピタル、技術者たちとのやりとりや、アルトマン氏が設立したOpenAIの内幕を、ウォールストリートジャーナルの記者である筆者が緻密な取材を元に著している。

OpenAI最高経営責任者として注目されるまで、アルトマン氏は日本ではほとんど無名の存在だった。しかし本書で詳細に描かれるその経歴を見れば、スタートアップ分野において重要なポジションを歩むものであったことが分かる。彼はスタンフォード大学在学中に起業すると、著名なベンチャーキャピタルであるYコンビネータの出資を受け、その後自身がYコンビネータの代表となり、そこで築いた集金力や人脈などを活かしてOpenAIを立ち上げた。

そして彼の野心的な姿勢や生来の人心掌握術、楽観主義、AIにおけるシンギュラリティへのこだわりとリーダーシップによって、圧倒的に巨大なGoogleやMeta(旧Facebook)などに先んじて当時非営利団体とされていたOpenAIがChatGPTを公開できたことが示されるのだ。

本書にはAIの技術面での説明はほとんど登場せず、ひたすらアルトマン氏を中心に、彼がどのような人間関係や状況の中で、どう判断し、行動し、周囲に影響を与えてきたかが情報量豊富に描かれている。2023年秋に起こったOpenAI理事会による彼の解任とその後の復活劇についても、様々な関係者が絡む複雑な過程が詳しく記述されている。

その理由は本書が、「果たして彼はAGI(評者注:Artificial General Intelligence=人間のように汎用的な知能を備える汎用人工知能)の先導役を託すに値する人間なのか?」という記者の視点で描かれているからだと読める。

AGIやASI(Artificial Super Intelligence=人工超知能)の登場は人類にとって脅威だとする意見は、一部のAI専門家の間で真剣に議論されている。人類の脅威とまで言わなくとも、例えばAIによって著作権に守られていたコンテンツの派生物が容易に作れるようになることが従来の社会規律の脅威になるように、AIの進化には一定の倫理や規範が求められることは容易に想像がつく。

そのAI開発の先頭にいるとされる人物がどのような者なのか、それを本書によって世に知らしめたいというのが著者の意図なのだろう。そうしたAIをとりまく状況に広くアンテナを張っていたいと思う方には必読の一冊だといえる。

『サム・アルトマン:「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』

著者:キーチ・ヘイギー

翻訳:櫻井祐子

出版社:NewsPicksパブリッシング

https://publishing.newspicks.com/books/9784910063447

今月のレビュワー

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新野 淳一(にいの・じゅんいち)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。

2026/02/18

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