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社員のモチベーション増進など脳科学を経営に生かす

マーケティング分野だけでなく、マネジメントやリーダーシップに脳科学を活用しようという動きもある(図2)。経営やリーダーの選抜・育成などに脳科学を生かす、というものだ。例えば、地域や人種などによって人々の感情、物事の捉え方は脳のレベルで異なる場合がある。こうした知見を用いれば、より良い組織や制度づくりが可能になる。「社員に報酬を与えるとき、お金で報いるときと褒めるときでは、共に脳内の同じ場所が反応するという研究がある。こうした研究成果は、効果的な報酬のあり方を考える際に有用になります」(萩原氏)
モチベーションを高める上では、「本人の選択」が持つ意味も大きいようだ。玉川大学の松元健二教授らのグループが行ったストップウオッチゲームという実験がある。実験参加者にストップウオッチを渡し、表示を見ずに5秒で止めてもらう。誤差が0.05秒以下なら成功、そうでなければ失敗だ。一方のグループにはストップウオッチのデザインを選んでもらい、他方には選択の自由は与えられなかった。前者の成績は後者に比べて、統計的に有意に高かったという。新規事業の立ち上げなどで希望者を募るケースは少なくないが、本人の選択を人事異動などに広く適用すれば、業績への好影響が期待できるかもしれない。

脳科学がもたらす新たな価値

ビジネス分野における脳科学の応用の可能性は広い。個人にカスタマイズされたマーケティングにも、脳科学の知見が加われば一層の進化がもたらされるだろう。 「個々人の脳活動を測定・分析することで、その人と商品との関係性がより深く理解することができ、結果としてその人向けのカスタマイズされたマーケティング施策を実施できると思います。もちろん、コストや精度の問題もあり、いつ、どういった形でそうしたマーケティング活動が実践されていくのかは、まだはっきりとは分かりません。そうしたマーケティングが本当に普及するには、ウエアラブルの技術進歩も不可欠でしょう」(阿久津氏)

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今後の課題としては、チップやデバイスなどハードウエアの各レベル、そしてAI(人工知能)をはじめとするソフトウエアなど、さまざまな分野での技術革新が求められる。各要素技術をいかに統合するかという視点も重要になるだろう。
ほかにも、課題は少なくない。阿久津氏は社会的な環境づくりを進める上で、「プライバシーに対する不安を感じる人は多いと思います。倫理的な観点から社会のコンセンサスを得ていくことが今後の課題です」と指摘する。
一方、萩原氏は日本企業の脳科学に関する研究開発への消極姿勢に課題を感じている。
「脳科学のビジネスへの応用には長期的な投資が必要で、自らがかなり主体的に関わらなければ活用できません。それが、日本企業の経営者が二の足を踏む理由かもしれません」とはいえ、先進的な実践を始めた企業も現れ始めてきているのも事実だ。ユニ・チャームは商品の香りを検討・開発する際に、脳波測定の結果を用いるなどの実績を積み重ねている。また、資生堂は国境や文化を越えて「おもてなし」の顧客対応を浸透させるために、脳科学の知見を生かしている。例えば、化粧品を顧客に見せるとき、両手を添えるか、それとも片手で持つかによって、見せられた相手の脳の反応は異なるという。客観的なエビデンスがあれば、海外の店舗スタッフから「なぜ両手を添えなければならないのか」と疑問を投げかけられたとしてもきちんと説明することができる。
こうした実践例が増えれば、それが刺激になり、幅広い企業での取り組みが本格化することだろう。脳科学の将来には新しい景色が広がっている。先行投資を回収するには時間がかかるかもしれないが、それがもたらすビジネス価値は大きい。

  • ※図1・図2出所:NTTデータ経営研究所 萩原一平氏「オープンイノベーションのプラットフォーム『応用脳科学コンソーシアム』のご提案-2014年度版-」を基にNTTコムウェアが作成
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