これまで企業システムを中心に形成されてきたIT(Information Technology)と、さまざまな産業分野における装置のモニタリングや運用を制御する、いわゆるOT(Operational Technology)との融合が急速に進んでいる。ファクトリーオートメーションなどに代表されるOTの開発や運用は、これまでITの構築・運用とは分断されていた。しかし、両システム間のデータの相互アクセスが可能になれば、計り知れない可能性が広がる。ITの分野で広く収集した情報を活用して、インフラの運用やものづくりの分野などで、新しい価値を提供できるようになるとの期待もある。ITとOTの融合がもたらす今後の変化を読み解いてみたい。
今日、電力や交通などの社会インフラシステム、ならびにファクトリーオートメーションに代表される産業システムは、利用者への最適なサービスの提供はもちろん、地球環境や高齢化社会といったシステム外部の社会問題への対応まで求められるようになり、急速に複雑さを増している。こうした環境下では、各産業分野に閉じたシステムの効率化だけを追求しても、課題の解決にはつながりにくい。そこで、社会インフラシステム・産業システムのオペレーションを制御するOTと、情報システムをつかさどるITの連携により、課題を解決しようという動きが活発になっている。
その一例として挙げられるのが、これまでIT側で発展してきたクラウドとビッグデータの活用だ。クラウドに集まった利用者の動きやセンサーが捉えた情報などをビッグデータとして分析する。そこで得られた分析結果を、装置のモニタリングや運用を制御するOT側で共有することで、新しい価値や判断を生み出すことが可能になるのである。 こうしたITとOTの融合は、医療、交通、防衛などの社会インフラ、電力、ガス、水道、通信といった公共サービス、製造やエンジニアリングなどのものづくりなど重要な産業分野で、急速に進んでいる。これまで分断されていたITとOT間でデータの相互アクセスが可能になれば、利用の範囲は計り知れないほど広がる可能性がある。また、ITとOTの双方から収集された大量のデータを活用することで、これまで以上に効果的な意思決定が可能になることへの期待も寄せられている。