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感覚を共有する、考えただけで機械を操作できる
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人間の脳をコンピューターと直接つなぎ、人間の能力を高めたり、手足の動きを補助したりする「Brain-Computer Interface(BCI)」(もしくは、ブレインマシン・インターフェース:BMI)の研究開発が進められています。脳に極小のデバイスを埋め込む「ブレインチップ」の研究もそのひとつ。チップ状のデバイスを脳に埋め込むことで、人間の能力はどう高まり、そして、人間社会はどう変わっていくのでしょう。

実用化への研究が急ピッチで進む「ブレインチップ」とは?

ブレインチップとは、人間の脳に埋め込む、極めて小さなチップ状のデバイスです。ブレインチップは、人間の記憶力を高めたり、脳で考えるだけで電子機器を操作できたりと、人間の能力を補助し、高めると期待されています。こうした概念は、実はSFや映画の世界では、20年も前からさまざまに描かれています。

例えば、1999年の映画「マトリックス」では、主人公の脳にカンフーの技術が「アップロードされる」というシーンが描かれています。当時から、すでに脳とコンピューターをつないだり、ブレインチップを埋め込んで人間の能力を高めたりするテクノロジーが、近い将来、現実になると考えられていたのでしょう。

その研究が、ここにきて、にわかに現実性を帯びてきました。2017年末には、アメリカの南カリフォルニア大学で神経工学を研究するセオドア・バーガー博士の研究チームが、人間の脳にチップ(インプラント)を埋め込む実験を実施したと報道されました。

また、バーガー博士の実験開始よりも前、2016年にはテスラモーターズを率いるイーロン・マスク氏が新会社「Neuralink」を設立し、脳にチップを埋め込み、外部のコンピューターと接続する研究に取り組む計画を明らかにしています。これらの研究・技術開発の動きから、ブレインチップは、現実になりつつあるといえるでしょう。

図1:ブレインチップで実現できること

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ブレインチップで実現できること

脳の記憶力を高める

さて、ブレインチップが実用化されると、どのようなことが実現されるのでしょうか。まず、考えられるのがバーガー博士の研究チームが人間の脳で実験したように、「人間の記憶力の向上」が期待されます。人間の記憶力を高めると聞くと、「超小型の記録媒体」を脳に埋め込むことを想像してしまうかもしれません。

ところが、ブレインチップは必ずしも記録媒体とは限りません。あくまでも小型のデバイス、むしろ超小型のコンピューターに近いと考えて良いでしょう。例えば、先述のバーガー博士の研究チームの実験では、脳に小型のチップを埋め込んで、微弱な電流を流すことで脳を刺激し、「記憶力を高める」実験をしています。

人間の脳が記憶する仕組みは、短期記憶から長期記憶へと「変換してから保存する」と考えられ、短期記憶を長期記憶に変換するときには、保存場所となる脳の海馬の一部に電流が発生していることが知られています。ブレインチップで海馬の一部に電流を流すことができれば、短期記憶を長期記憶に変換して記憶すること=記憶力を高めることができると考えられています。

バーガー博士の研究チームの実験では、20人の被験者を対象に脳に埋め込んだチップに電流を流したところ、「記憶力が約30%向上した」という効果があったと発表されています。

図2:ブレインチップで記憶を保存する仕組み

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脳の記憶をバックアップする

また、ブレインチップにより「脳の記憶をバックアップする」ことも可能になると期待されています。電流を流して脳を刺激する機能だけでなく、脳が発する電気信号を受信する機能を備えているブレインチップの研究も進められています。その場合には、脳が記憶するときに発する電気信号をブレインチップで受信して、脳とは別にブレインチップに保存する=バックアップすることも可能になると考えられています。

脳で考えるだけで機械を操作する

さらに、ブレインチップには、脳の電気信号を受信するだけでなく、受信した電気信号を外部に発信する役割も期待されています。これが可能になると、脳で考えただけで機械や装置、デバイスを操作することも可能になるでしょう。米デューク大では、サルを使った実験で、脳に差し込んだ電極とロボットアームを直接つなぎ、脳からの信号でロボットアームを動かすことに成功しています。

コミュニケーションの形を変える

一方、ブレインチップには、人間のコミュニケーションの形を大きく変えてしまう可能性も期待されています。例えば、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の機器とブレインチップを直接つなぐことで、VRやAR機器からの信号をブレインチップで受信して、脳内で再現することや、反対にブレインチップから信号でVRやARの機器を操作することもできると考えられています。つまり、ブレインチップにより思考するだけで、VRやARの空間に入ってけるようになるのです。

また、米セントルイス・ワシントン大学の脳外科医でSF作家でもあるエリック・レアットハルト氏は、2014年のSF小説「RedDevil 4」で、人類の90%が脳内にブレインチップを埋め込んでいる姿を描いています。レアットハルト氏によれば、今後数十年の間に、人間の脳はブレインチップによってオンラインでつながり、言葉を交わさなくとも、思考をやりとりすることでダイレクトにコミュニケーションできるようになるといいます。

そうなると、人間同士は、現実世界で直接会って話をしたり、スマートフォンなどの機器を使ってやりとりしたりするのではなく、お互いにVRの世界に入っていき、その中で出会い、さらに、言葉ではなく思考のやりとりで、さまざまな情報交換をするというコミュニケーションが主流となってくるかもしれません。

プロスポーツ選手の動きを「コピー」できる

その他にも、ブレインチップを埋め込んだ人間同士であれば、思考をダイレクトにやりとりすることや、他人の「脳が感じている感覚を共有できる」ことも現実になると考えられています。この機能が実現されると、例えば、プロのスポーツ選手が競技中の「体感」を他人が共有できるようにもなるでしょう。プロゴルファーがスイングのときに身体をどう使うのかを感じ取ったり、サッカー選手の芸術的なフリーキックの感覚を、そのままコピーするように感じ取ってまねてみたりすることができるようになるのです。ただし、例えば、サッカーでフリーキック(FK)の名手である日本代表級選手が「FKを蹴る瞬間」の感覚を共有しても、「同じ筋肉・同じ足」でなければ、同じ軌道を描くボールを蹴り出すことはできないでしょう。サッカーに限らず、ゴルフやテニス、水泳など一流選手のフォームを「真似する」ことは競技上達の早道とされていますが、「真似」を現実に変えるには、まだまだ課題があります。

脳に起因するとされる病の治療が変わる

ブレインチップの医療分野での応用研究も積極的に進められ、例えば、身体にハンディキャップのある人の「手足となる」ことも期待されています。アメリカのブラウン大学の研究チームは、四肢麻痺の患者にブレインチップを埋め込み、患者が思考するだけで高速でタイピングする実験に成功したと発表しています。さらに、アメリカのピッツバーグ大学では、ブレインチップをロボットアームと接続する実験を実施。患者が、ロボットアームの指先にある触覚センサーで触感を感知したと発表しています。

さらに、ブレインチップで脳を刺激することで、てんかんなどの脳に原因があるとされる病を抑制することも期待されています。アルツハイマー症候群では、記憶が失われるのではなく、記憶にアプローチする脳の働きになんらかの支障が生じるという説もあります。そこで、ブレインチップにより脳を刺激することで、記憶にアプローチする機能を活性化できれば、アルツハイマー症候群の治療に効果があると期待されています。その他にも、例えば、失明した人の脳に、ブレインチップを介して映像を直接送る研究も進められています。

コミュニケーションが変わると、ビジネスはどう変わる?

さて、ブレインチップをはじめ、人間の脳とコンピューターを直接つなぐBCIの研究開発は、今にはじまったことではありません。アメリカでは、すでに1970年代から現在に至るまで、BCIの研究開発が着々と進められています。そうした長年の研究成果が、コンピューターの計算能力の飛躍的な向上、データ転送速度の向上などを背景に、一気に現実性を帯びてきたといえます。

ブレインチップが実用化されて、人間が思考しただけで機械を動かしたり、その思考を他人に送信したりできるようになると、人と機械、人と人との間での情報伝達手段も変化させていくでしょう。情報伝達手段の変化は、「コミュニケーション」の変化につながります。情報伝達手段が、新聞・雑誌からテレビ・ラジオ、インターネット、SNS(Social Networking Service)へと変化したことで、人と人、人と企業、企業同士のコミュニケーションの形態は大きく様変わりしました。

こうしたコミュニケーションの変化は、ビジネスに大きな影響を与えてきました。今後、ブレインチップによって情報伝達手段がさらに進化し、コミュニケーションが変われば、人々の暮らしだけでなく、ビジネスもそのあり方が大きく変わってくるでしょう。

例えば、ブレインチップにより、仕事の打合せ、会議の方法が変わるでしょう。過去の打ち合わせの内容や会議の議事録は、各人のブレインチップの中に記録されていて、その日の会議・打合せは、まず、「参加者が過去の記憶を共有する」ことから始まるようになるかもしれません。そして、会議や打ち合わせに初めて参加する人には、ブレインチップに過去の記録を簡単に送信できるようにする機器や装置が必要になるでしょう。

ブレインチップをはじめとするBCIの研究開発、そしてその実用化は、人間社会の根幹をなすコミュニケーションのあり方を変えるほどのインパクトがあります。そのインパクトは、私たちの暮らしの隅々にまで広がり、医療、教育、産業などさまざまな分野へと広がっていくと考えられます。

【 制作/コンテンツブレイン 】

2018/08/20

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