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「ヘルステック」が実現する、超高齢化社会の正しい健康管理の在り方
「ヘルステック」が実現する、超高齢化社会の正しい健康管理の在り方
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日本は世界でも長寿国とされていますが、それを支える医療分野にはさまざまな課題を抱えています。医療の質的な向上はもちろん、高齢化社会の進展に伴う医療費の増加、また、最近では介護離職も社会問題となっています。これらの問題の解決策として期待されているのが、最新のICTを活用して革新的なサービスを生み出す「ヘルステック」です。

医療分野のさまざまな課題を解決する「ヘルステック」

世界でも類を見ない超高齢社会である日本では、医療に関するさまざまな問題が浮かび上がっています。例えば、「医療費の高騰」。日本は、誰でも平等に医療サービスを受けることができる国民皆保険制度を取っています。しかし、高齢になれば病気にかかる率も高くなり、医療費は増加の一途をたどっています。

特に1940年代後半に生まれた団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となることから「医療費の2025年問題」が持ち上がっています。また、高齢医療の問題だけでなく、生活習慣病などの慢性疾患の患者が年々増えていることも、医療費の増加要因といえます。さらに医療現場では医師が大都市部に集中し、地方で医師が不足するという偏在も出ており、加えて、医療従事者の過酷な労働環境も問題視されています。

政府は、医療の質を担保しながら医療費を削減する医療制度の改革を進めていますが、有効な解決策を見いだせていないのも実情と思われます。そうした現状を受け、医療分野におけるさまざまな課題の解決策として近年注目されているのが「ヘルステック(HealthTech)」と呼ばれる新しいコンセプトです。

ヘルステックとは、「ヘルス(Health)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。「金融(Finance)」とテクノロジーを組み合わせた「フィンテック(FinTech)」という言葉を耳にする機会が増えていますが、ヘルステックもそうした新産業のキーワードとして登場しました。

ヘルステックには明確な定義はありませんが、最新のICT技術を活用した新しい医療サービス、あるいはそれを創造することと考えていいでしょう。具体的には、クラウドコンピューティング(クラウド)、スマートフォンやタブレットなどのモバイル、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ウエアラブルデバイスなどの技術を活用し、これまでは存在しなかった革新的なサービスを開発することです。

図1:ヘルステックの要素

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患者の医療・健康に関する情報は、これまで医療機関で保有することが中心でした。患者の受診履歴や既往症、アレルギーの有無、血液型、処方薬などのデータが記載された紙媒体のカルテは、病院やクリニックのカルテ倉庫に保管され、受診時に取り出して医師が閲覧、記入することがほとんどでした。

しかし医療情報の電子化を促進させる「電子カルテシステム」などの医療情報システムの普及によって、患者自身や他の医療機関と情報を共有したり、医療ビッグデータとしての利活用が可能になりました。他の業種よりもICT化が遅れているといわれていた医療業界ですが、そのICT化は徐々に進展しはじめています。そのカギを握るのが、ヘルステックだといえます。

ヘルステックが生み出す医療分野における新たなサービス

ヘルステックの活用領域は多岐にわたります。医療機関向けの高精度な分析や診断支援、間接業務の効率化のための仕組みから、一般人向けの健康増進のための仕組みまで幅広い製品やサービスが含まれます。

安全な服薬を可能にする「電子版お薬手帳」

「電子版お薬手帳」もヘルステックを活用したサービスです。お薬手帳は、服薬している薬の名前や使い方などに関する情報を過去のアレルギーや副作用の経験の有無とあわせて経時的に記録するものです。診察や調剤を受ける際、医師や薬剤師にお薬手帳を提示すれば、薬の重複や飲み合わせのチェック、アレルギー歴や副作用歴の確認などが可能となり、より安心して薬を使用できます。

電子版お薬手帳では、服薬に関する情報をクラウド上で保管してスマートフォンなどから閲覧します。災害や緊急の際、紙の手帳を持っていないときでも、スマートフォンがあれば服薬中の薬の情報を確認でき、万一のときも安心です。また、服薬履歴を薬剤師と共有して、利用者に寄り添った服薬指導を受けられます。

在宅でも医師の診療が受けられる「遠隔診療サービス」

医療機関に通院できない在宅患者が、遠隔地にいる医師に診察・診療してもらう「遠隔診療」。医師・患者間の非対面診療であるこの診療方法を実現しているのが、スマートフォンやタブレットから利用できる「遠隔診療サービス」です。オンラインのビデオチャットなどを通じて、医師から診療を受けられます。

遠隔診療サービスの中には、医療機関への診療予約から診療、処方箋や薬の受け取りまでの、一連の流れをスマートフォンやタブレットで完結できるサービスもあります。離島や過疎地域などの住民だけでなく、都市部でも外出が困難な高齢者や多忙で通院が難しいビジネスパーソンなどの活用が期待されています。また、遠隔診療は医師が専門外の治療内容を専門医に相談したり、助言を求めることなどにも活用できます。

AI(人工知能)による診断支援や病気進行の予測が可能に

CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)などの医療機器の進化とともに、医師は膨大な数の医療画像を診断しなければなりません。現在、画像解析技術にAI技術を応用して医療画像診断の効率化を促進することで、診断医の画像診断をサポートする技術が登場しています。具体的にはCTやMRI、内視鏡の画像を分析し、AIが画面上で異変と疑われる箇所を指摘することで病気の有無や進行の把握を支援します。

また、健康診断のデータや現在の治療内容を時系列的に分析し、その患者が将来発症する確率や発症後の進行などを予測したり、介入の必要性を担当医に示したり、スマートフォンのアプリでユーザーに服薬や行動改善を働きかけたりすることもAI技術を使えば可能になります。

QOL向上にも役立てられる「IoMT」

IoMTとは「Internet of Medical Things」の略で、さまざまな医療機器やデバイスをヘルスケアシステムとインターネットでつなぎ、リアルタイムでの医療・健康情報の収集や解析を可能にする技術や概念のことです。

例えば、医療機器に「Wi-Fi」や「Bluetooth」を搭載すれば、医療情報をヘルスケアシステムとネットワークで結ぶことが可能です。また、IoMTをすべての医療デバイスが持つことでビックデータを収集し、新しい治療方法や医学的知見を得られます。集積されたデータは治療だけでなく予防や健康維持、介護にも役立てられます。

医療は必ずしも良い結果を生むとは限りません。せっかく治療をしたのに日常生活に不便を感じ、患者のQOL(Quality of Life:生活の質)が下がるケースもありえます。IoMTによって蓄積された広範なデータを利用することで、治療後の患者のQOL向上にも貢献できるかもしれません。

利用者に寄り添う「介護支援ロボット」

超高齢社会にある日本では、介護職員の人材不足や在宅での老老介護など介護に関する問題も多くあります。近年、それらの解決方法として注目を集めているのが「介護支援ロボット」です。

介護支援ロボットは、主に「介護支援型」「自立支援型」「コミュニケーション・セキュリティー型」の3種類に大別されます。介護支援型とは、主に移乗・入浴・排泄(せつ)など介護業務の支援をするロボットのことです。自立支援型は、歩行・リハビリ・食事・読書など介護される側の自立を支援します。コミュニケーション・セキュリティー型は、利用者とコミュニケーションを取ることでメンタルケアや見守りなどに活用されています。

広がりを見せる「ウエアラブルデバイス」活用

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ICT機器は日々進化を続けています。身体に身に付けるコンピューター「ウエアラブルデバイス」もその代表で、身に付けることでバイタルデータを日々自動的に記録できます。ウエアラブルデバイスは、医療機器に分類されるものではありませんが、病を抱える患者が自分の体の状態を見える化し、治療に役立てることができます。

例えばウエアラブルデバイスから取得した歩数や消費カロリー、体温・心拍数などの情報を、クラウドを介してパソコンやスマートフォンに記録するサービスが数多く登場しています。こうした情報をリアルタイムに取得することで身体の異変を検知し、本人や家族に気づきを促すサービスも提供されています。こうした取り組みは個人だけではなく、従業員の生活習慣改善サービスとして導入したり、従業員のメンタルヘルス対策に利用するなど企業でも幅広い活用が始まっています。

次ページ 「予防医療」促進で医療費の削減を

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