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製造業を革新するデジタルツイン。都市や社会を一変する可能性も
製造業を革新するデジタルツイン。都市や社会を一変する可能性も
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コンピューター上で自社製品やその使用環境を再現する「シミュレーション」は、製造現場で広く利用されてきました。ネットワークやセンサーなどの高性能化とAI(人工知能)やAR/VR(拡張/仮想現実)の実用化によりIoTの波が加速する今日、シミュレーションも新たな潮流が見られます。製品や製造環境など実在するモノをコンピューター上に忠実に再現する「デジタルツイン」です。

「フィジカル」と「サイバー」の一卵性双生児

コンピューターをベースとした最新テクノロジーを、製品の設計や製造の現場に取り入れ、活用する動きは今に始まったことではありません。実用的なコンピューターが登場してから半世紀あまり、製造業はコンピューターとともに進化してきたともいえるでしょう。

たとえば、コンピューターで創り出した仮想空間(サイバー空間)に製品を再現して、さまざまなシミュレーション解析を行うエンジニアリングの手法であるCAE(Computer Aided Engineering)は、製造工程の短縮やコストの削減に寄与してきました。このCAEをより進化させたアイデアが「デジタルツイン(Digital Twin)」です。

デジタルツインは、「デジタル世界に再現された双子」という意味合いですが、「twin」は単数形ですから双子の一方です。双子のもう一方は現実世界(フィジカル空間)に実在する”モノ”であり、その情報を集めてコンピューターネットワーク上のデジタル世界(サイバー空間)に忠実に再現した”モデル”が「デジタルツイン」です。いわば、「フィジカル」世界にいる”兄”とほぼ同様な、「サイバー」世界にいる双子の”弟”が、デジタルツインの正体です。

図1:現実の工場をデジタルで再現する「デジタルツイン」

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このデジタルツインが最近注目されてきた背景には、次のような理由が挙げられます。

  • 1.製造業の競争力強化のために先進国が産学官連携で導入を進めていること
  • 2.機器やインフラの高機能化によりシミュレーションの精度が飛躍的に高まっていること
  • 3.フィジカルの変更に合わせてサイバーがアップデートされること
  • 4.製造物のみならず、製造現場やサプライチェーンにも応用できること

製造業強化をめざす国を挙げての取り組み

ドイツでは、2011年に官民連携の国家的プロジェクト「インダストリー4.0」を立ち上げました。その中核となる「サイバーフィジカルシステム」は、機械・設備・流通網など実世界(フィジカル空間)から収集したあらゆる情報をコンピューターネットワーク(サイバー空間)とリアルタイムに連動させて製造業の競争力強化をめざすもので、まさにデジタルツインと同じ発想です。

同様に官民連携の取り組みとしては、アメリカの「インダストリアル・インターネット」や中国の「メイド・イン・チャイナ2025」などがあり、いずれも同じ方向性をめざしています。わが国も、狩猟社会・農耕社会・工業社会・情報社会に次ぐ5番目の「超スマート社会(ソサエティー5.0)」を実現するために、内閣府を中心に新たなものづくりの基盤としてデジタルツインを推進しています。

情報量増と高速化でシミュレーション精度は飛躍的に向上

IoT化の急速な進展と解析技術やネットワークの高速化によってシミュレーションに用いられる情報が格段に増えたことも、デジタルツインの普及を後押ししています。モノの状態を把握するために欠かせない各種センサーは、小型・軽量化、低価格化、高機能化が進み、製品や機械のさまざまな場所の状態を、リアルタイムにサイバー空間へ送れるようになりました。その大量の情報(ビッグデータ)を収集・解析してサイバー空間に構築されたデジタルツインは、フィジカルの再現度が格段に高くなるため、シミュレーションの信頼度も飛躍的に向上します。

また、小型・軽量化が進んだことで、センサーは自社製品や製造機械のみならず、作業者が装着する「ウエアラブルデバイス」の形でも広く使われるようになりました。作業効率を下げずに装着できるリストバンド型・腕時計型・メガネ型などが登場し、作業者の位置や健康状態、作業の難易度などを一元的に把握することで最適な作業状態をシミュレートできます。また、デジタルツイン上で得られた結果をARやVRを活用した、作業者が理解しやすい形でのフィードバックも可能になりました。 一方で、大量に収集されたセンサーデータは通信インフラに負荷をかけ、遅延を生じさせてリアルタイム処理を損なうリスクもあります。これを回避するのが、センサー側サーバーで処理を行い、必要な情報だけをクラウド側のサーバーに送る「エッジコンピューティング」です。クラウドの負担を軽減することでフィジカルとサイバーのリアルタイムな情報共有を可能にするとともに、通信コストやセキュリティーリスクの低減にもつながります。

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