

キャッシュレス決済の普及が世界で進んでいます。日本でも、キャッシュレス・ポイント還元事業に伴う各種キャンペーンが活発化し、交通系のICカードやクレジットカード、スマートフォンのアプリなど、キャッシュレス決済の方法が多様化してきました。そんな中、新たなキャッシュレス決済の方法として注目されているのが、「顔認証」による決済です。
顔認証決済の導入が進む中国
キャッシュレスが急激に普及した中国では、QRコードがキャッシュレス決済を牽引してきたことで有名ですが、次の段階として、顔認証決済の実用化が進められています。
2017年9月に杭州市のケンタッキーフライドチキンにアリババグループ(阿里巴巴集団)の「smile to pay」という顔認証決済のシステムがいち早く導入されました。
2019年5月には、広東省のセブンイレブン約1,000店舗でも顔認証決済が導入され、続いて2019年9月には広州市の地下鉄の改札に顔認証システムを導入するなど、顔認証決済の実用化が進められています。
中国の調査機関である艾媒諮詢(iiMedia Research)が2019年11月に報告したところによると、既に顔認証決済の利用者は2019年に前年の倍の1億1,800万人に達し、2022年には7億6,000万人を超えると推定しているのです。※1
国家レベルで導入を押し進める同国は、2019年12月からは、携帯電話を新規契約する際には、顔認証データを登録することを義務づけるに至りました。

図:顔認証決済のイメージ
※1 艾媒諮詢(iiMedia Research)「2019年中国顔認証決済技術応用社会価値特別研究報告」
顔認証決済のメリット
このように進められている顔認証決済には、以下のようなメリットが上げられます。
●手ぶらで利用できる
キャッシュレス決済を行うために、カードやスマートフォン、タブレットなどの端末を用意する必要がありません。
●店舗側の人員削減
カードやスマートフォンを利用したキャッシュレス決済のように、決済方法に合わせた方法で読み取りを行うレジ要員が必要なくなり、人手不足の解消となります。
●パスワードを覚える必要がない
パスワードやIDなどの入力は不要になるため、利用者はそれらを覚えておく必要がなくなり、パスワードが盗まれる危険も少なくなります。
以上のようにメリットが多い顔認証決済ですが、顔情報をスキャンされることで悪用されるセキュリティー面の懸念を持つ人もいます。
そこで、利用者の顔認証時に、目を閉じる、視線を動かすなどの動的な認証を行うことで不正利用を防ぐ技術※2も開発されつつあります。
※2 NEC 顔認証PCセキュリティー「NeoFace Monitor」
日本でも省人化が急務のコンビニなどが「顔認証」の導入へ
日本でも「顔認証決済」の実証実験が始まっています。
2018年12月には、セブン-イレブンがNECと共同で顔認証決済を導入した省人型店舗「セブン‐イレブン三田国際ビル20F店」をオープンし、NECの社員向けにサービスを提供しました。顔認証決済を含めコンビニの省人型店舗はロードサイドよりもサービスが限定されるビル内店舗との相性が良いとも言われています。
2019年4月にはファミリーマートがパナソニックと、2019年8月にはローソンが富士通と実証実験を始めるなど、コンビニ業界は各社が顔認証を取り入れ始めています。
キャッシュレス決済は「手ぶら決済」へ
日本では、2020年に向けた空港の入出国の顔認証ゲートや、2025年の大阪万博への大阪メトロ全駅の顔認証改札など、大きなイベントをきっかけとした顔認証の実用化を加速させる動きが出てきています。
しかし日本では技術やインフラが整備されても、心情的に顔認証決済を避ける方も多いとも考えられます。FeliCaと無線を組み合わせるような「タッチレス決済」の技術開発も進む中、「顔認証決済」のみにとらわれない「手ぶら決済」をめざした未来がやってくるのかもしれません。
【 制作/ブレイン 】
2020/03/25