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ITジャーナリストや現役書店員、編集者が選ぶ デジタル人材のためのブックレビュー 
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今月の書籍

レビュワー:新野 淳一

  • 『超高速開発の本命 ローコード/ノーコード最前線』
  • 『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』

多様性ゆえに混沌とする分野への入り口として豊富な事例が理解を助ける

 ITによってソリューションを提供するための新たな道具として、ローコード/ノーコード開発ツールが注目され始めている。

 この分野そのものは1980年代あるいはそれ以前から存在するが、Salesforce.com、Google、マイクロソフト、AWSなど大手ベンダが相次いで本格参入し、そしてこの分野に「ローコード/ノーコード開発ツール」というキャッチーな名称がつけられ、一気に耳目を集めた。

 一方で、この分野は導入にあたって評価が難しい側面を持つ。エンドユーザー自身が単純なルーチンワークの自動化を行えるようなものから、専門家がアーキテクチャーから設計して基幹業務構築が可能なものまで、技術面でもRPAからAIを利用したコードの自動生成まで、きわめて多様な製品群で構築されているからだ。

 この多様性を理解し、その上で適切な分野における適切な用途での利用を想定することが、ツールをしかるべく選択し活用する上で欠かせない。

 その指針として役立つのが本書だ。前半を占めるカインズ、代々木ゼミナール、富士フイルムHDなど多くの企業の事例から成功パターンを得られ、後半では「Power Apps」「AppSheet」「Wagby」「Outsystems」など主要な製品のレビューが掲載されている。

 特に事例では導入の背景と目的が説明されており、またSIer目線での記事もあるため、エンドユーザー、SIerのどちらにも参考になるだろう。

 国内ベンダによる代表的なローコード開発ツールのひとつであるサイボウズ「kintone」での開発事例もページ数を割いて紹介されているため、これまでローコード開発に触れたことのない読者にとって、ローコード開発とはどういうものなのかもイメージできるようになっている。

 ただし、本書を読み、関連情報などに触れていくほどに、この分野の製品と技術の多様性、そして製品の機能そのものも時間とともに強化されていくことに気が付く。それゆえ、本書でカバーできているのは分野全体から見ればほんの一部だということもまた指摘せざるを得ない。

 それでも本書はこの分野を俯瞰し全体像を把握しつつより詳細な各論への入り口として、類書が見当たらないゆえにおすすめできる一冊だ。

『超高速開発の本命 ローコード/ノーコード最前線』

著者:日経クロステック編

出版社:日経BP

https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/21/282290/

事業のサービス化には何が必要か。世界的IT企業で培われた知見が次の一手を示す

 音楽産業や映像産業はレコードやCD、DVDなどのパッケージ販売から、SpotifyやNetflixのようなサブスクリプションによる配信、つまりサービス化へと大きく変化してきた。そして金融や小売りなどさまざまな産業でも、同じような変化が起きていることはIT業界にいる誰もが感じているはずだ。

 本書の著者である及川氏は、こうした変化に対応するキーワードこそ「ソフトウェアファースト」だと主張。どのようにソフトウェアファーストを実現するかを懇切丁寧に解説するのが本書である。

 本書における及川氏の視点は多層的だ。前半では視野を日本経済全体に広げつつ、多くの国内企業におけるITとの向き合い方として、SIerへの丸投げ文化、ソフトウェアを工業製品のように扱ってきたこと、品質管理やセキュリティ施策の画一化など、多くの課題があることを指摘。

 その上で、中盤では個別の企業がソフトウェアファーストへと変革するために必要な事柄を、おもにマネージメントの視点で語る。リーンスタートアップ、PRD、インセプションデッキ、OKRなどさまざまなフレームワークや考え方を具体例として挙げながら、組織構造、組織文化に至るまで解説。このあたりはマイクロソフトやGoogleなどグローバル企業の管理職として製品づくりをしてきた及川氏ならではの知識と経験に基づいた説得力がある。

 そして最後に、ソフトウェアファーストなキャリアを個人としてどう構築し、生涯にわたって「ソフトウェアに携わる人」として、どう成長するかという論にまで視点が降りてくるのだ。

 このそれぞれの視点において一冊分くらいの情報量があると言ってよいほど充実した解説と、それが筆者の一貫したソフトウェアファーストという主張によって貫かれているのが本書の大きな価値だろう。自分や自分の所属する組織を変革したいと考えているマネージメント層におすすめしたい。

『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』

著者:及川 卓也

出版社:日経BP

https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/19/P89910/

今月のレビュワー

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新野淳一 (にいの・じゅんいち)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。

2021/08/18

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