COMWARE PLUS プラス・サムシングを大切なお客さまへ

メールマガジンのご登録
賢いはたらき方のススメ
賢いはたらき方のススメ
ポスト
        
        

この記事のPDFをダウンロードする

2021年5月16日、Jリーグの試合で初めて、主審として女性がフィールドに立ち話題になった。それが、国際審判員の山下良美さんだ。試合でのレフェリングは、イエローカードも1枚にとどまるストレスを感じない試合展開となり、高い評価を得ている。審判後は試合を客観的に見る振り返りを欠かさないという山下さん。試合でのコミュニケーションのポリシーは、「ロボットと人間の間でいること」なのだそうだ。国外で開催される国際試合の仕事の経験や、さまざまな環境でも素早く正確に判断する力を養う方法はビジネスマンにとっても学べる事が多い。女性の活躍の場が広がってきた世界で、スキルアップを重ね、切り開いてきた道について伺った。

夕暮れ時から始まる、審判としての自分

写真:山下良美さん

―サッカー選手としてプレーをしてきた中で、審判員をめざすことになったきっかけは?

山下:大学のサッカー部の先輩である坊薗真琴さんに誘われて、審判員に目を向けるようになりました。先輩を見て私も同じ道を目指したいと思いました。審判の大変さや奥深さを知ることができている現在から当時を振り返ると、選手としては審判のことを知ろうとしていなかったことが大変もったいなかったなと感じます。

―審判員という仕事はどのようなものですか。現在のルーティーンは?

山下:4級から1級、女子1級、国際審判員(副審、主審)と昇格していきます。年に一度更新するのですが、体力テスト、実技テスト、競技規則テストが課されてクリアしていきます。私は2015年から国際審判の主審の資格を持っています。国際審判になると英語が共通言語になるので、語学力も必要になります。

シーズンによって異なるのですが、私の場合は週に1度、試合で審判を行っています。それに向けて毎日トレーニング、準備、コンディションを整えていくようにしています。 体力を維持するトレーニングは必須なので、試合のない1日はまず審判とは別の仕事へ出かけ、私は朝が苦手なので、夕方仕事を終えてそのまま審判のトレーニングに入ります。その後はリモートで研修をしたり、試合を観て分析したり。

―2足のわらじですね。審判員の活動との両立で苦労をされていることはありますか。

山下:時間という面では足りないと感じることはありますが、現在の職場は、私が審判員として活動していることを理解して協力してくれるので大変感謝しています。仕事を持っていてそこで出会った仲間がとても応援してくれるので、力になっています。だから仕事をやっていてよかった、毎日楽しんでやっていますよ。職場の理解はとても大切だと思います。

写真:山下良美さん

2021年6月 国際親善試合 なでしこジャパン 対 ウクライナ女子代表での山下主審 ©JFA

目指すは“ロボットと人間の間”

―審判員として体力はもちろん、競技規則など覚えることも多く、判断力決断力も大切だと思うのですが、どのように身に着けていったのでしょうか。

山下:さまざまな試合を担当していくなかで、その時々の課題を克服するために、体力、語学、分析力、判断力などそれぞれの必要性に気づいていくのが大切です。 私は試合のなかで気づくことが多いので、自分に足りないものがあれば、トレーニングしたり、研修会で学ぶなど積極的にするようにしています。特に自分や仲間が審判を担当した試合の映像を見て分析し、これは身に着けたいと思うことが多いですね。自分自身で常に何かを感じて吸収していこうと思っています。

―審判員として審判団や選手とのコミュニケーションで心掛けていることはありますか。

山下:試合が決まったら、事前に選手の特長や癖は分析しますが、先入観にとらわれてはいけないので、事前情報として得るくらいです。それよりも、コミュニケーション方法は審判員ひとりひとりにいろいろな考え方があると思うのですが、私の場合は、審判員は“ロボットと人間の間” でありたいと思っています。

―ロボットと人間の間ですか?

山下:ロボットが判定するように間違いなく、そして機械のように、競技規則に当てはめて判定することは大切だと思っています。
ですが、競技規則は文章で書いてあるものなので、白黒はっきりつかないこともあります。グレーな状態になることも。試合中は、「選手は今こう思っているだろうな」、「この選手は今少しストレスがたまっているから相手に対して何かしてしまうかもしれない」など、選手の声や表情、息づかいから感じ取ることも必要だと思います。
この点に関してはロボットではなく人間であることが大切だと思うのです。選手とのコミュニケーションは人間である部分を大いに活用しています。
“ロボットと人間をうまく使い分けられる審判員”でいたいなと思います。

―難しそうですね。

山下:試合中に選手が声を上げることはよくあります。でもそれは選手が一生懸命、試合に力を注いでいるからなんです。そういうことに動じずに、しっかり見極めていかないといけないという部分は人間として難しいかもしれません。

次ページ 振り返り、俯瞰することで、人間は技術面も精神面もスキルアップする

ポスト

事例紹介

スマートフォン用リンク

エバンジェリストが語るICTの未来

スマートフォン用リンク

ページトップへ

トップへ