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ニッポンの想像を超える未来
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100年後。休日にリビングでくつろぐ家族の会話。
(プロローグ)

子ども:(冷蔵庫を開けて)あれっ、この新発売のレモンジュース、どうして3本もあるの?

おかあさん:1本はあなたの、残りはおかあさんとおとうさんの分よ。

子ども:おかあさんもおとうさんも、ふだんジュースを飲まないのに、めずらしいね。

おかあさん:スーパーで買い物しながら“ARレシピ”を見ていたら、人気のお料理研究家がこれでお肉を煮込むととっても柔らかくなって、子どもの歯の生えかわり時期でも食べやすいっておすすめしていたの。さっそく試してみようと思って。

おとうさん:僕はタブレットで読書をしていた時、“ICしおり”に表示された作者からのメッセージ広告で見たんだ。作者もこれを飲みながら執筆していて、頭の切り替えに役立つらしいから、明日、家で仕事をする時に飲もうと思って。おかあさんに買ってきてもらったんだ。

子ども:ふーん、そうなの。このジュース、オンラインシューティングゲームにキャラとして登場するお笑い芸人が、ゲームの中で美味しそうに飲んで体力を回復してたんだ。サッカーしてきて疲れたから、いま飲んでもいい?

才能やセンスは不要、法則を知れば誰でも「伝え上手」になれる!

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 コミュニケーション能力に自信があると胸を張って言える人は、どれほどいるだろうか。ビジネス、恋愛、友人関係など、言葉のやり取りで苦い思いをした経験は誰にでもあるはずだ。
 コミュニケーションの大きな要素である「上手な伝え方」にはセンスや才能が必要だと思いがちだが、法則を知れば誰でも「伝えるスキル」を磨けるという。

 今回は、ベストセラーとなった『伝え方が9割』の著者で、株式会社ウゴカスの代表でもあるコピーライターの佐々木圭一さんに「伝え方の技術」についてお話を伺った。

 飲み会やSNSで気の利いた発言をして盛り上げたい。取引先へのプレゼンで印象に残るフレーズを残したい。魅力的な言葉を生み出すには、どうしたらいいのだろう?
 「相手に届く言葉を生むのはセンスではなく、技術です」と佐々木さんは話す。コピーライターとして数多くの広告を手掛けてきた佐々木さんの著書『伝え方が9割』はシリーズ累計131万部を突破したベストセラーだ。コピーライティングのメソッドを一般向けに体系化してまとめた本書では、今すぐ使えるコミュニケーション術を学ぶことができる。

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 「このような本を書くと、もともと伝え方が上手かった人と思われますが逆なんです。子どもの頃から人と話すのが苦手で伝え下手でした」。
 少年の頃の佐々木さんは引っ越しが多く、転校先では「周りと違うアクセント」のために、いつも好奇の目で見られていたという。次第に人と話すことが苦手になり、「言葉よりも数字のほうが楽」と大学では機械工学を学んだ。そうした青春時代を過ごしながら、心の奥には「人と話せるようになりたい、うまく伝えられるようになりたい」という強い思いがあった。

 「人にもっと上手に伝えられるようになりたいという思いから広告代理店に入社したのですが、いきなりコピーライターとして配属されてしまった。仕事が始まると、文章があまりにも下手で上司や周囲を驚かせてしまいました」。
 コピーをどれだけ書いても採用されない無力な自分に悩み、ストレスから過食に。それでも名作コピーや名文とされる書籍を読みあさり、書き写して研究を続けていると、伝え方には法則がありそうだと気がついた。

 例えば、映画『燃えよドラゴン』のセリフ「考えるな、感じろ」は、正反対の言葉を組み合わせることで、「感じろ」を際立たせている。ノートにびっしりと書き出した言葉たちを見返すと、他にも法則が見つかりそうだと分かり興奮した。これをきっかけに佐々木さんは国内外で数多くの広告賞を受賞するようになり、作詞の仕事も舞い込むなど、言葉のプロフェッショナルとして活躍するようになったのだ。

伝える相手の文脈で話すと、世の中が動き出す

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 昼食もとれないほど忙しいある日、佐々木さんは手早く何か食べようとファストフード店に入った。オーダーして会計しようとしたら「できたてをご用意しますので4分ほどお待ち下さい」と店員さんに言われたそうだ。本当は4分でも惜しいほど急いでいたのだが、「できたてをご用意しますので」というお客様=相手のことを考えて添えられた言葉に「それなら待ってもいいかな」と思ったのだという。
 「『4分ほどお待ち下さい』とだけ言われたら、店を出ていたでしょう。一言添えられたことで、私の心は動きお金を支払ったんです。たった500円ほどですが、もう一人『待ってもいいかな』と思う人がいれば1,000円の売り上げになる。アルバイト20人が同じ伝え方をしたら1日で2万円、3000店舗で同じことが起これば6000万円の売り上げです」。
 特別なサービスを受けたわけでもなく、伝え方ひとつで売り上げが上がったことに「すごい!」と感動した佐々木さんは、「“伝え方”には大きな可能性があるかもしれない」と考え、自分が苦労の末に見出してきた「伝え方の法則」を著書の『伝え方が9割』にまとめた。

 「日本人のコミュニケーションの弱点は、訓練をしていないこと。トレーニングをほとんどしない野球選手が、いきなりバッターボックスに立っても打てません。同じように、伝え方や話し方のトレーニングをしたことがないのに、ある日突然、上手にはならないのです。日本では、伝え方が上手な人は生まれ持ったセンスが違うと考える人が多いのですが、そんなことはなく、伝え方の法則を学んで訓練すれば、上達するんです」

 佐々木さんが見つけた法則の一つは「相手の目線で考える」こと。例えば、異性をデートに誘いたいとき「デートしよう」ではなく「すごくおいしい担々麺のお店があるんだけど、今度一緒に行ってみない?」と声をかける。相手が興味を持ちそうな企画を提示することで、「行ってみようかな…」と思ってもらえる確率がぐんと上がるのだ。
 「先ほどのファストフード店での例もそうですが、伝え方の技術を知っていれば、NOだったものをYESに変えることもできるんです。相手の文脈で伝えると、お互い気持ちよくコミュニケーションできますよね。以前に比べて、最近はそういった伝え方が増えてきていると感じます」。

 宅配便で届くダンボールの側面に「大切に運んでいただき、ありがとうございます」と印刷されているのを見かけるようになった。「大切に運んで下さい」に一言添えると、相手の文脈の言葉になり、その思いが配達員の心に届けば、より大切に運んでもらえるだろう。コミュニケーションとは「気持ちのキャッチボール」なのだから、相手の文脈で考えることは本来、当然であろう。今まで大多数の人が「自分の伝えたいこと」に注目しすぎていたのかもしれない。
 「SNSの普及によって、誰もが自分から発信する時代になりました。自分の発言が文字として残り、いいね!などで発言に対する反響も見えるようになった。それでみんなが“伝え方”に興味を持ち始めたのだと思います。少し表現を変えるだけで、人の心が動くという実感が、世の中に広がりつつあるのではないでしょうか」。

普遍的な「伝え方の法則」と進化する「伝え方」が、つくり手とあなたをより強くつなげる

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 SNSやスマートフォンアプリの普及によって広告の手法も変化してきた。佐々木さんも、それらの手法を使った伝え方を手掛けている。
 今や新大阪駅で最も売れているお土産と言われる「たこパティエ」のPRの一環で『つながれ!おみやげリレー』と題した動画コンテンツを、YouTubeのたこパティエ公式チャンネルで公開している。有名人をつないでいくリレー対談で、ゲストにお土産の「たこパティエ」を手渡し、バトンのように次のゲストに届けていくのだが、対談内容がユニークでおもしろい。
 第1回は佐々木さんが堀江貴文さんを訪ねて、堀江さんが出資したインターステラテクノロジズ株式会社のロケット打ち上げ場を案内してもらった。第2回の堀江さんがお笑い芸人の厚切りジェイソンさんを訪ねた対談は、ビジネスパーソンとしての顔も持つ厚切りジェイソンさんのオフィスや仕事ぶりなどを見ることができ、動画サイトならではの内容だ。

 「商品を広く認知してもらうにはどうしたらよいか、ということを追求した企画で、ゲストがみんな友達ということもあり、コンテンツをつくるのが楽しかったです。つくる側が楽しんでいる印象から『なんかおもしろそうだな』と興味を持ってもらえる事も、伝え方においては大切だと思っています」

 10年前のCMと同じやり方をしていたら、人の心には届かない。現在は広告の手法もどんどん変化しており、人の心を動かす「想像力」と「創造性」が重要なのだという。佐々木さんが広告コピーをつくる時に大切にしているのは、「伝える相手を想像する」ことと「つくった人の話=ストーリーを徹底的に聞く」こと。
 「機械工学を勉強していたので、元々ものづくりに興味があるんです。仕事上、プロダクト開発の方とお話しする機会が多いのですが、そのプロダクトに活用された技術とか、つくった人のこだわりや努力に、自然と関心が向きます。そうやってプロダクトの背景を深く理解する、ストーリーを意識できることも自分の強みといえるでしょう。日本には素晴らしい技術者や腕のいい職人さんがたくさんいますが、伝えることが上手ではない方も少なくありません。そこで、僕の技術を生かせればと考えています」。

 SNSで個人が発信し、パーソナルアシスタントを使いこなす時代である今、広告は「商品を知ってもらう手段」というだけでなく、「より個人にフィットした提案」にも変化している。さらにこの先の未来には、現在インフラとして確立しているものが、新しいテクノロジーやツールに置き換わるかもしれない。

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 「時代が変わり、使うツールが変化したとしても、僕らはその時に最適な方法を選んで伝えていくだけです。変わらないのは“伝え方の法則”。僕もまだまだ勉強中ですが、コミュニケーションの充実が世の中をよい方向に変えていくと思っているので、よりよい社会のために、伝え方の技術をもっと広めていくのが夢であり目標です」

 伝え方の法則そのものは、これからも変わることはない。学び、訓練を積み重ねていれば、たとえ新たな伝え方の手段が最新のICTで生まれてきたとしても、それらを自由自在に、かつ効果的に使いこなす事ができるはずだ。あなたは将来、何を使って思いを伝えているだろうか? その未来は無限大に広がっている。

プロフィール

佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師/株式会社ウゴカス代表取締役。上智大学大学院を卒業後、1997年博報堂に入社、コピーライターとして配属され、国内外の広告賞を受賞。2014年に株式会社ウゴカスを設立。著書『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)はシリーズ累計131万部を達成したベストセラー。「伝え方」のメソッドを広めるため講演や企業研修を精力的に展開、日本のコミュニケーション能力をベースアップさせることがライフワークである。

2019/2/8

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