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AI(人工知能)、ロボットは「不気味の谷」をどう越えていくのか?
AI(人工知能)、ロボットは「不気味の谷」をどう越えていくのか?
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ここ数年、しばしば耳にするようになった言葉に「不気味の谷」があります。不気味の谷とは、1970年に東京工業大学の森政弘教授(当時)が書いたエッセイのタイトル。大意は「人間は、ロボットの外見や動きが人間に近くなるほどロボットへの親愛度が高まるが、類似度があるレベルになると逆に不気味に感じる。しかし、類似度がさらに高まると親愛度は最大になる」というものです。半世紀近くも前の、ロボット工学先駆者の「直感」が、今、改めて注目されている背景には、実用段階に入った人間型ロボットやAI(人工知能)の進化があるようです。

急速に広がる様々なロボットたちの用途

「ロボット(robot)」という言葉は、1920年にチェコ人のカレル・チャペックが発表した戯曲「R.U.R」が初出とされています。チェコ語の「robota(強制労働の意)」に由来するロボットは、人間の代わりに働く「人造人間」を意味していました。

現在、私たちの身の回りにはロボットが数多く浸透しています。例えば、家庭ではロボット掃除機に続き、音声で情報検索やメディア再生、デジタル家電の操作などができるスマートスピーカーがポピュラーな存在になりつつあります。

ビジネスでは、伝票処理やデータ収集、カスタマーサポートなど、主に定型作業について、AI(人工知能)を応用したソフトウェアロボットで処理する「RPA(Robotic Process Automation)」の導入が進んでいます。産業用ロボットが実現してきた生産現場の効率化や低コスト化、品質向上が、オフィスではRPAというソフトウェアの形で広まっているのです。

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ハードウェアとしてのロボットも数多く実用化されています。例えば相手の質問をAIが理解して的確な回答を行う案内ロボットは、音声認識や自動翻訳の技術が向上して多言語に対応できるものが登場しており、東京オリンピックが開催される2020年には訪日外国人の案内役として期待されます。サービス業で使われるロボットとしては、巡回警護や監視を行う警護ロボット、床のワックスがけにも対応する業務用掃除ロボット、ホテルやショッピングセンターで客の荷物を運ぶポーターロボット、調理ロボットなども実用化されています。このようなサービスロボットが数多く働くことで話題を集めたホテルも、すでに全国で10店舗以上が開業しています。

サービスロボットの活躍が最も期待されている分野の一つが、慢性的な人手不足と、介助者の肉体/精神的負担の重さが大きな課題になっている介護分野です。介助者が装着して要介護者の移乗を介助するパワーアシストタイプや非装着型を含めた移乗介助、要介護者だけで使える移動支援、さらに排泄支援・入浴支援・見守り支援など様々なシーンで使うロボットが、国の支援のもと産学官連携で開発されており、介護施設や在宅介護の現場で使われています。

また、会話ができるコミュニケーションロボットやペットロボットは、介護現場のみならず、独居高齢者の見守りや認知症予防の観点でも効果があり、少子化が進む日本では知育ロボットとともに、子供のコミュニケーション力育成にも活用されていくことになるでしょう。

「人間にそっくり」が不気味の谷に

着実に社会に浸透してきたロボットですが、そうなると、近い将来には、不気味の谷が顔をのぞかせてくることも考えられます。ここ数年で、ロボットの動きや容姿はより人間に近くなり、従来の音声合成とは一線を画す自然な声で話すロボットも登場しました。

見た目や動作において、「人間そっくり」、「人間みたい」というレベルであれば、そういったロボットを見たときの好感度は通常、高くなっていきます。これはあたかも、人間の親がわが子に示すような愛情を、動物の親が子に示すと、「まるで人間のよう」と愛らしさを感じることに似ています。

ところが、あまりにも人間に似すぎてくるとどうなるでしょうか。例えば、人物を描いた写実的な絵画で、あまりにも写実の精度が高いために、そこに描かれた人間の表情を見て「なんか薄気味悪い」と感じた経験はありませんか。「人間に似ている」ことで急上昇した好感度が、「似すぎている」と判断された瞬間、まさに谷底に落ちるように急降下してしまう、それが不気味の谷です。

現在は外見的に、不気味の谷を感じるまで人間にそっくりなロボットは登場していないといえますが、近い将来には、外見的にも、動作的にもより人間に近くなっていくことは容易に想像できます。近い将来、不気味の谷が顔をのぞかせることもあると考えられます。

図:不気味の谷の概念図

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人間への類似度が高まるにつれ、好感度も上昇するが、「似すぎてしまう」と好感度が急降下する。しかし、人間とほぼ同じほどに類似度が高まると好感度は最大になるという

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