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IoTやロボットと高い親和性機械学習との組み合わせも有効

プリスクリプティブ分析が改めて注目されるようになってきた1つの要因は、ITの発展にある。オペレーションズ・リサーチや経営工学的なアプローチでプリスクリプティブ分析をして、最適化した解を求めること自体は従来から行われてきた。しかし、従来の目的と手法では、分析した最適化の結果が適切だったかどうかを評価するプロセスに時間やコストがかかった。
医薬品の臨床試験では、認可を求める薬を与える人と、ニセ薬を与える人の結果を比較して「効果」を確認する。薬を与えるかどうかという打ち手の違いで、「効果がある」という目的関数がどのように変化するかを分析するプリスクリプティブ分析の一例だ。しかし、臨床試験では被験者を多く集める必要があり、結果が出るまでに時間がかかる。
Webサイトのバナー広告の評価をする際に使われる「A/Bテスト」もプリスクリプティブ分析の一つである。WebサイトのA/Bテストとは、複数のデザインという打ち手に対して、クリック率などの効果を分析するものだ。こちらは、1秒間に何回も試行することが可能で、分析結果のフィードバックを短時間で得られる。そのため試行錯誤的に最適化を進めることができる。
こうしたメリットは、ネットワーク上のサイバー空間だけのものではない。「IoT化が進んだ世界では、プリスクリプティブ分析による最適化とビッグデータ分析を組み合わせると、リアルな世界でもどのような結果が得られたかが短時間で判明します」(丸山教授)。
プリスクリプティブ分析が有効に使える例として丸山教授は、ロボットの二足歩行や自動車の自動運転の機械学習を挙げる。ロボットならば、複数ある関節をどのように動かすかという打ち手に対して、「前に移動すれば報酬を与え、倒れたときはペナルティを与える」という目的関数を設定する。丸山教授は「シミュレーションでは、最初はもがくようにしていたロボットが、20世代まで試行を繰り返したらスムーズに歩けるようになりました。二足歩行という目的に対する最適化が、プログラミングするよりも容易に実現できるのです」と語る。
自動運転のプログラムでも同様の最適化がシミュレーションで確認されている(図3)。アクセルやハンドル操作といった複数の打ち手に対して、前に進むと報酬が得られるといった目的関数を設定する。機械学習を繰り返すことで、最終的に自動車がスムーズに道路を走るようになった。

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ある目的があった場合に、プリスクリプティブ分析による最適化の解の提示と、その実行のフィードバックを繰り返すことができれば、目的に対する最適化が自動的に行われることになる。「機械学習とプリスクリプティブ分析を組み合わせることで、機械が自動的に最適解を導き出す世界が実現する可能性があります」(丸山教授)。プリスクリプティブ分析の結果は、機械が自動的に目的に対しての最適な答えを見つけることもできるわけだ。IoTや機械学習の発達とともにプリスクリプティブ分析が注目されてきた要因は、こうした新しい活用の可能性が高まったことにありそうだ。
一方で、プリスクリプティブ分析には限界もある。プリスクリプティブ分析をするには、パラメーターとなる打ち手の範囲がはっきりしていることと、何を最適化したいかという目的関数が決まっている必要があるためだ。
「新しいイノベーションを生み出したい、未知の打ち手を発見したい――といったデータ分析にはプリスクリプティブ分析は向きません。そうした目的には、説明的データ分析の結果から人間がイマジネーションを働かせて、読み解くといった作業が必要です。説明的データ分析を『発見的データ分析』と呼ぶことがあるのは、こうした理由からです」と丸山教授は語る。
ビッグデータを分析して、企業活動や社会活動をより良くしていくために、プリスクリプティブ分析は効率的な最適化の実現という可能性の道を開く。ただし、その道を歩むだけではすべての目的を達成することはできない。説明的データ分析や予測的データ分析、さらには人間の洞察力などと組み合わせて適材に応用することで、新しい価値を生み出していくことになる。

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