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ロボットが自律的な思考力を備えることへの違和感

一方、外見や動作だけではなく、人間と同じように考えることができること、つまり、思考力においても、不気味の谷が顔をのぞかせることが考えられています。確かに、コンピューターが単に与えられた命令を実行するだけではなく、知性を持って自律的に考えることができるようになることを想像すると、多くの人はそこに違和感を覚えたり、恐怖心を感じたりするかもしれません。

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ロボットの外観が人間にそっくりなとき、また、自律的な思考力を備えたときなどに、不気味の谷を感じると考えられている

そんなこともあってか、コンピューターが知的かどうかを確認するテストは、コンピューター黎明期の、まだ「人工知能」という言葉すらない時代からありました。最も知られているのが1950年に英国のアラン・チューリングが考案した「チューリングテスト」です。これは、「人間とコンピューターに同じ質問を出し、回答内容からどちらがコンピューターかを判定する」というものです。

長きにわたって、多くのコンピューターが「人間ではない」=「知的ではない」と判定されていたことは、「機械は機械、人間には遠く及ばない」と、多くの人たちにとっての安心感になっていたのかもせん。しかし、2014年にロシアのスーパーコンピューターが質問者の30%以上から「人間」と判定され、初めて「合格」と認定されました。質問に回答するといった行為に限定すれば、コンピューターは人間と同じように考えることができるということ。そこに不気味の谷を感じるかどうかは、意見がわかれるところかもしれません。

コンピューターが知性的かどうかを判定するテストとして、近年、注目されているのが、2010年にアップルの共同創始者として知られるスティーブ・ウォズニアックが提案した「ウォズニアックテスト」です。「ロボットが知らない家に上がって、コーヒーメーカーやコーヒー豆、食器などを探し出し、コーヒーを淹れることができるか」という内容から「コーヒーテスト」とも呼ばれます。

人間なら小学生でも「玄関を開けて、キッチンに入り、コーヒー豆を探し、コーヒーメーカーにセットし、ボタンを操作してコーヒーを淹れ、カップに注ぐ」ことは簡単にできますが、ロボットにとっては至難の業で、玄関を入ることすら方法がわからないかも知れません。従ってこのコーヒーテストをパスすることができれば、そのロボットは自律的な思考力を持った「汎用的なAI(人工知能)」とされるのです。

現在のAIは、30カ国語で会話したり、超大型ダンプカーを操縦したり、囲碁や将棋でチャンピオンを破ったり、1時間で1万枚の手書き伝票を処理したりすることができます。しかし、いずれもその分野でしか能力を発揮できない「特化型AI」であり、コーヒーテストをクリアできるようなAIを備えたロボットはまだ登場していません。思考力に関する限り、ロボットは不気味の谷のかなり手前にいるようです。

汎用的な「思考力」のロボットが不気味の谷を飛び越える期待

ロボットの進化は今後も続きます。現在のAIは汎用的な思考力を持っていませんが、そもそもAIの研究開発は1950年代に始まり、80年代には人間の脳構造をモデル化した「ニューロコンピューティング」の概念も生まれていました。それがディープラーニングとして結実するまで約30年かかったのは、コンピューターの処理能力の向上と、学習のための膨大な情報を収集する環境整備にそれだけの時間が必要だったとも考えられます。

しかし、ここにきて自立学習能力を持つディープラーニングをベースに、「汎用AI(AGI:Artificial General Intelligence)」を開発しようという動きが始まっています。複数の分野に対応する「汎用AI(AGI)」の登場にはそれほど時間はかからないでしょう。コンピューターが、日常生活の様々なシーンに柔軟に対応できる、汎用的な思考力を持つ日がやってくるのも、そう遠い将来ではないとされています。

一方、ディープラーニングの精度が向上するにつれて、どういう学習をして結論を導き出したのかがわからない「ブラックボックス化」が問題視されるようになってきました。コーヒーテストなら、ロボットがキッチンでコーヒーを淹れているところを見られなくてもあまり問題はありませんが、例えば「ロボットの医者」が患者に診断結果だけを伝え、詳しい説明をしてくれなければ、信頼することはできないでしょう。この問題が解消されなければ新たな不気味の谷となるかも知れません。

ハードウェア面では、人間を模した顔と体を持ち、二足歩行可能なロボットが求められる現場はそれほど多くないかも知れません。しかし、介護や教育の現場では高齢者や幼児が自然に接することができる人間型ロボットが受け入れられやすいでしょう。そこでロボットが相手をする対象は、一般人より肉体的に脆弱でロボットの知識に乏しく、衝動的な行動を取ることさえあります。ロボットの関節(アクチュエーター)や感覚器官(センサー)も、より一層の高機能化や小型化が求められるでしょう。そうして「不気味の谷」をクリアしたロボットがコーヒーを持ってきてくれる日はいつになるのか。意外と目の前に来ているのかも知れません。

【 制作/コンテンツブレイン 】

2018/09/18

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