
- BYODとは何か
- BYODのメリットとデメリットを知りたい
- BYODを導入する時のポイントを整理したい
昨今技術が進化し、高性能のモバイル端末やクラウドの利用が一般的になってきました。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、テレワークの普及も進みました。これらを背景に、BYODを導入する会社が増えています。
本記事では、BYODの意味、メリットとデメリット、さらには導入する時のポイントを紹介します。
BYODとは
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BYOD(Bring Your Own Device)とは、従業員が個人で所有する端末を業務で利用することを意味します。
BYODが普及している背景は2つあります。
1つ目は、高性能のモバイル端末が普及したことです。手軽に持ち運べて、かつ業務にも利用できるだけの機能を有するモバイル端末を個人で所有することも珍しくありません。
総務省の報告によると、2019年における世帯の情報通信機器の保有状況において、モバイル端末の保有割合は、96.1%にものぼります。
参考:令和2年度 情報通信白書 2020 総務省
2つ目は、端末の種類を問わず利用できるクラウドサービスが普及したことです。これにより、業務に必要な情報にアクセスすることが容易になりました。
」ただ、日本は諸外国と比べてBYODが普及しているとは言えません。2018年に総務省が発表した報告書によると、BYODを導入している企業の割合は2018年時点で以下のとおりで、諸外国の半分以下です。
- 日本10.5%
- アメリカ23.3%
- イギリス27.8%
- ドイツ27.9%
参考:ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究 2018 総務省
BYODのメリット
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ここでは、BYODのメリットを以下の順に紹介します。
- 生産性向上
- コスト削減
- シャドーIT抑制
生産性向上
BYODのメリットの1つ目は、生産性向上です。
従業員のパフォーマンス向上を考えると、従業員1人1人の要望に答えて各従業員にとって最適な端末を用意することが理想ではあります。しかし、現実的にはそれは困難です。
その点、BYODでは、従業員が個人で所有する端末を利用します。従業員が使い慣れた端末を利用できるので、従業員が行う業務の生産性向上や、ヘルプデスクへの問合せ減少が期待されます。
コスト削減
BYODのメリットの2つ目は、コスト削減です。
BYODでは、従業員が個人で所有する端末を業務に利用します。そのため、業務専用端末の購入費や通信費などを会社が全額負担する必要がないため、会社にとってはコスト削減になります。特に、従業員が多い会社であればこれらのコストも大きくなるので、一層大きなメリットになります。
また、非常時に急遽テレワークを行う必要が出てきた時に、BYODが可能であればスムーズにテレワークを開始できることや、業務用と個人用の複数の端末をもたなくて良いこともメリットです。
ただ、従業員が利用する端末が故障した時には、BYODによる業務を停止しなければならないことには留意しなければなりません。その時にどのような対応をするかについては、あらかじめ社内でルールを設定しておきましょう。
シャドーIT抑制<
BYODのメリットの3つ目は、シャドーIT抑制です。
シャドーITとは、BYODが許可されていないのに業務で個人の端末を利用することです。シャドーITで利用する端末は会社の管理外となるため、セキュリティリスクが大きなものになります。
例えば、個人の端末を紛失した時に、悪意ある第三者にその端末を拾われるとそこから情報漏えいが起こる恐れがあります。また、私用時にウイルスに感染したことに気づかず、その端末を業務で利用すると、それがきっかけでウイルスの攻撃を受ける恐れもあります。
しかし、本来は業務で使うはずのない端末であるため、会社が対策を行うことは困難です。
そこで、個人の端末を業務で利用するBYODを制度化することで、可視化できないセキュリティリスクを軽減できます。
BYODのデメリット
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ここでは、BYODのデメリットを以下の順に紹介します。
- セキュリティリスクの増大
- 運用ルールの策定と徹底が必要
- 労務管理の複雑化
セキュリティリスクの増大
BYODのデメリットの1つ目は、セキュリティリスクの増大です。
BYODでは個人の端末を利用します。そのため、端末を私用で使っている時に、会社が想定していない場所やネットワークで端末を利用することもあり得ます。この時、端末が不正アクセスを受けることも十分想定されます。
また、端末を持ち運んでいる時に、紛失や盗難のリスクもあります。これにより悪意ある第三者の手に端末が渡ることで、情報漏えいが発生することも想定されます。そのため、BYODのセキュリティリスクは決して低くないと考えるべきでしょう。
運用ルールの策定と徹底が必要
BYODのデメリットの2つ目は、運用ルールの策定と徹底が必要であることです。
前述のとおり、BYODのセキュリティリスクは決して低くありません。そのため、新たにBYODを導入する時には、少しでもセキュリティリスクを軽減させるために新たな運用ルールを策定する必要があるでしょう。
また、運用ルールを策定しただけでは意味がありません。運用ルールを従業員に遵守させるため、従業員に対して教育を行う必要性も出てきます。
運用ルールの策定やそれに伴う教育コストが必要になることは、BYODのデメリットの1つと言えます。
労務管理の複雑化
BYODのデメリットの3つ目は、労務管理の複雑化です。
BYODでは、従業員は個人の端末を利用して業務を行います。そのため、公私の線引きがあいまいになることや、上司が従業員の労働状況を把握しにくくなることには注意が必要です。それらの要因により、長時間労働や業務時間外の労働などが起こる可能性があります。
長時間労働や業務時間外の労働などが原因のトラブルが発生すると、労務管理の問題にもなりかねません。また、従業員のプライバシー保護のためにも、公私の線引きを明確に行うことが求められます。
BYODを導入する時のポイント
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ここでは、BYODを導入する時のポイントを以下の順に紹介します。
- セキュリティ対策
- 制度設計
- 従業員教育・管理
セキュリティ対策
BYODを導入する時のポイントの1つ目は、セキュリティ対策です。
BYODで有効なセキュリティ対策はいくつか存在しますが、以下にそのうち2つを紹介します。
VDI(デスクトップ仮想化) ・クラウド上の仮想的な端末への接続
・アプリケーションや情報はクラウド上で管理
・端末にはキーボード操作と画面表示のみ許可
・端末にデータが保存されないため、端末を紛失しても第三者に情報漏えいするリスクを軽減MDM(モバイル端末管理) ・端末をリモート操作で管理
・端末の紛失や盗難が発生しても、リモートで端末所在地の確認や端末のロック、データ削除が可能
・リスクの高いアプリ利用に制限をかけるなどの機能を有する製品もある関連コラム:仮想デスクトップ(VDI)の基本的な仕組みとメリット・デメリット
制度設計
BYODを導入する時のポイントの2つ目は、制度設計です。
VDIやMDMなどのセキュリティ対策も必要ですが、私用端末を利用する従業員が原因の人為的なセキュリティリスクは残ります。それを防ぐには、制度設計が必要です。
企業ポリシーに沿ったガイドラインを作成して、利用する端末の範囲や用途、保護する情報の範囲などを明文化しましょう。運用方針を明確にしてそれを徹底することで、BYODの導入に成功する可能性が高まります。
ただし、過度にBYODの利用ルールを厳しくして、従業員の利便性を損ねてもいけません。なるべくわかりやすくシンプルで、実際の運用が円滑に回るルールを設定しましょう。
BYODを利用する従業員に余計なストレスを与えず、自然とルールを守れる仕組みを作りましょう。
従業員教育・管理
BYODを導入する時のポイントの3つ目は、従業員教育・管理です。
BYODでは、セキュリティ意識の向上が一層重要になります。セキュリティリスクを従業員自身が強く意識し、会社のセキュリティポリシーを十分理解して日々の業務で徹底できるよう従業員への教育を行っていく必要があります。
また、前述のとおり公私の線引きがあいまいになることから、労務管理が複雑化しがちです。BYODでテレワークを行う時の残業時間管理や申請、個人の端末を利用する時の費用負担など、BYODについて就業規則に反映させる必要もあるかもしれません。
さらに、グローバル企業は様々な国に進出しているため、国ごとの対応が必要です。国ごとの法律を事前に把握し、その国でBYODを導入すべきか個別に判断しましょう。
まとめ
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本記事ではBYODの意味、メリットとデメリット、さらには導入する時のポイントを紹介しました。
BYODには、生産性向上などのメリットがあります。一方、セキュリティリスクの増大などがデメリットです。
また、BYODを導入する時にはガイドラインの制定や従業員教育などを行う必要がありますが、それにより従業員への負担を増やしすぎては意味がないことには注意が必要です。
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