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TOPソリューション・プロダクトコラム少人数体制でも成立するゼロトラストとは ―運用責任で整理する3つの選択肢―
2026.03.23

少人数体制でも成立するゼロトラストとは ―運用責任で整理する3つの選択肢―

少人数体制でも成立するゼロトラストとは ―運用責任で整理する3つの選択肢―

前回のコラムでは、既存の境界型セキュリティ環境から無理なくゼロトラストへ移行するための、段階的な導入手順を整理しました。導入の順序が見えてくると、多くの企業で次に生まれるのは、「導入後の運用を自社で回し続けられるのか」という現実的な不安です。 

ゼロトラストは、製品を導入した時点で完成する仕組みではありません。日々の監視、判断、設定変更、インシデント対応といった継続的な運用によって、はじめて効果が維持されます。そのため、導入の難しさ以上に、どのような体制で運用するのかが成否を左右します。 

本コラムでは、ゼロトラストを「機能」ではなく運用責任の所在という観点から整理し、少人数体制でも現実的に成立する選択の考え方を解説します。 

01 導入後に差が出るのは「機能」ではなく「運用体制」

ツール比較ではなく運用体制の違いがゼロトラスト運用の負荷を左右することを示したイメージ

ゼロトラスト関連の製品やサービスは数多く存在しますが、機能面だけを比較しても、導入後の現実的な負担までは見えてきません。 

実際には、同じゼロトラストという言葉で語られる仕組みでも、誰が運用責任を担うのかによって、日々の業務負荷やリスクの大きさは大きく変わります。 

この違いを理解するために、本コラムではゼロトラストを次の三つの提供形態に分けて整理します。 

  • 製品提供型 
  • プラットフォーム型 
  • マネージド型 

ここでいう三つの提供形態は、機能の違いではなく、導入後の運用を誰が担うのかという観点で整理したものです。 


製品提供型は、必要な機能をツールとして提供し、設計や運用は主に利用企業側が担います。 

プラットフォーム型は、複数機能が統合され、基本的な設計や設定の整理は提供側で行われる一方、日常運用の主体は利用企業に残ります。 

マネージド型は、監視や分析、初動対応などの運用領域まで含めて提供側と責任を分担する点に特徴があります。 

この違いは、導入時の作業量よりも、導入後に継続的に発生する運用負荷に大きく影響します。

ゼロトラストの提供形態を製品提供型、プラットフォーム型、マネージド型の3つで比較したイメージ

製品提供型:柔軟だが運用負荷は自社に集中する

ZTNAやID管理、端末対策などの個別製品を組み合わせて構成する形態では、 設計の自由度が高く、自社環境に合わせた柔軟な構築が可能です。 

一方で、 

  • 初期設定の妥当性の判断 
  • アラートの監視と分析 
  • 夜間・休日の対応 
  • 設定変更や例外管理 

といった運用の多くを、自社の情報システム部門が担う必要があります。 

特に少人数体制では、可視化が進むほど運用負荷が増大するという課題に直面しやすく、結果として十分に活用されないまま形骸化してしまうケースも見られます。 

プラットフォーム型:機能統合により負荷は一定程度軽減される

複数のセキュリティ機能を一体的に提供するプラットフォーム型では、製品間連携の設計や基本設定の整理があらかじめ行われているため、個別製品を組み合わせる場合と比べて運用の複雑さは軽減されます。 

ただし、 

  • 監視や分析の主体 
  • インシデント判断 
  • 継続的なチューニング 

といった領域は、依然として自社側の役割として残ることが一般的です。 

そのため、運用負荷が完全になくなるわけではなく、 体制の制約によって効果に差が生まれる可能性があります。 

マネージド型:運用責任を分担することで継続性を担保する

監視や分析、初動対応などを含めて提供されるマネージド型では、ゼロトラスト運用の一部を外部の専門体制と分担する設計になります。 

例えば、 

  • SOCによる常時監視 
  • インシデント初動対応 
  • 推奨設定を前提とした初期構成 
  • 継続的な運用チューニング 

といった仕組みにより、自社の情報システム部門だけでは担いきれない領域を補完できます。 

ここで重要なのは、 単に作業を外部委託するというよりも、 運用責任の持ち方そのものを再設計する点にあります。 

02 初期設計の質が、その後の運用負荷を大きく左右する

製品提供型、プラットフォーム型、マネージド型で異なる運用負荷の推移を比較したグラフ

ゼロトラスト導入において見落とされがちなのが、初期設計の違いが長期的な運用負荷を決定づけるという点です。 

個別にカスタマイズされた設計は柔軟性が高い反面、 

  • 設定のばらつき 
  • 判断基準の属人化 
  • 例外運用の増加 

を招きやすく、時間の経過とともに統制が弱まる可能性があります。 

一方で、推奨設定や標準設計を前提とした導入では、安全性を担保した状態から運用を開始できるため、長期的には安定した運用につながりやすいという特徴があります。 

ゼロトラストの成否は、導入後の努力量だけでなく、導入時点でどこまで設計が整理されているかによっても大きく変わります。

03 運用コストは「人件費」だけでは測れない

運用体制を検討する際、 費用面では自社運用の方が低コストに見えることがあります。 

しかし実際には、 

  • 担当者の工数増大 
  • インシデント対応の遅れ 
  • 業務停止による損失 
  • セキュリティ要件未達による取引影響 

といった目に見えにくいコストも存在します。 

そのため、ゼロトラストの運用は単なるITコストではなく、 事業継続や経営リスクに関わるテーマとして捉える必要があります。 

ここまで、ゼロトラストを運用責任の観点から整理してきました。 では実際に、導入が停滞したり期待した効果を得られなかったりする企業では、 どのような問題が起きているのでしょうか。

次回は、ゼロトラスト導入がうまく進まない企業に共通する具体的な失敗要因と構造を整理します。