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地域医療連携を実現するクラウドへの期待

冒頭で述べたように、これら先進医療システムの課題は、相互連携や標準化・オープン化による利活用の拡大にあります。その鍵を握るとされているのがクラウド技術です。

政府および厚生労働省は「日本再興戦略 改訂2015」において、医療等分野におけるIT化を目標の一つに掲げました。その中で次の3項目を「重点目標」としています。

  • 1. 医療保険のオンライン確認・医療ID制度の確立
  • 2. 医療データのデジタル化とネットワーク化
  • 3. 医療ビッグデータ活用のための基盤整備

「1.」については、マイナンバーカードの個人認証機能と連動させ、保険証の確認を効率化し、病院・薬局・その他事業者との情報連携を行えるようにする計画が進んでいます。

一方、「2.」では、特に地域医療での情報共有・連携を促進させる取り組みに力を入れています。病床の機能分化、かかりつけ医と総合病院の連携強化、急患の受け入れ体制を強化し、医療の質を高め、病院経営の効率化・安定化にもつなげようとしています。

また「3.」では、全国の電子カルテや病院の情報を集約することで、疫学データの強化、インフルエンザ等感染症対策、医薬品の開発コスト削減、薬害・医療過誤防止、早期発見や予防対策利用による医療費の削減といった、国や社会レベルでの効果が期待されています。

これら3つの目標は、どれも密接に関係しています。どれか一つだけ進めるのは現実的ではありません。地域医療をネットワーク化するには、患者の共通IDや電子カルテは必須です。病院データや施設データを管理するデータベースは、医療ビッグデータの基盤を構成する要素となります。そして、これらを有機的に統合管理・運用するためには、さまざまなシステムやネットワークをカバーするクラウド基盤の存在が欠かせません。

ただし、忘れてはならないのは「セキュリティー」です。クラウドやビッグデータ活用においてセキュリティー対策を切り離して議論することはできません。氏名や住所といった基本情報に加え、病歴、既往症、遺伝子情報などプライバシー、人権にかかわる個人情報を扱うだけに、情報の粒度やレベルによって適正な匿名化、統計データ化、データの本当の所有者である患者(国民)の制御権限の担保など、関連法や各種ガイドラインに準じた機能の実装を同時に考えておかなければなりません。

医療分野のIT化の今後の方向性

イメージ:医療分野のIT化の今後の方向性

医療分野でのIT化促進の現状を踏まえて、病院関係者、医療業界、IT業界は、どのような取り組みが求められており、今後どのようなビジネスの可能性が広がっているのでしょうか。

厚生労働省「医療等分野におけるICT化の徹底について」(平成28年3月23日)によると、電子カルテ導入は、400床以上の病院において、2017年度には80%を達成する見込みで、2020年までには90%と予想されています。病院ごとで独自フォーマットを利用しているという課題は残りますが、電子カルテの普及はまずまずといったところです。

クリニック単位でも、ベンダーアプリやサービスを利用しているところも含めれば、関連するシステム(医事会計、オーダリングシステム他)をクラウド連携させる基盤はそろいつつあるといえます。電子カルテシステムは、今後オープン化やクラウドサービスとの連携機能が重要視されることでしょう。

それぞれのシステムが個々に独立するような「サイロ型」に乱立した電子カルテや医療情報システムを連携させるには、標準化やオープン化がポイントとなります。一つは、現状のシステムを標準的なものにリプレースするアプローチ。クラウド化とともにレガシーシステムの交替を進める取り組みが考えられます。

その一方で、既存システムをクラウド連携させる場合には、病院側のゲートウェイやクラウド上でデータ変換(つなぎ込み)を行うシステムのニーズも予測されます。

地域医療では、かかりつけ医と総合病院のデータ連携だけでなく、介護施設ともクラウド連携して、日々のケアに役立てる取り組みが活発です。例えば新潟県では、地域の医療機関や訪問看護・介護施設等の医師や看護師、介護士がタブレット端末を活用してクラウド上で情報共有する在宅医療・介護連携推進事業が進められています。また、長崎県でも地域の医療機関や薬局等が連携して、検査、診断、治療内容、説明内容等を正確に共有することで地域医療の質の向上を図る取り組みが始められています。

このように、2015年の時点ですでに約200を超える地域医療ネットワークが稼働しています。地域医療では、カルテデータや病院情報に加え、PACSのような画像情報の共有基盤も欠かせません。高齢者介護とも関連する場合、往診や遠隔診察をサポートするネットワークインフラ、テレビ会議システムやカメラシステム、各種遠隔制御技術も必要とされています。

さらに、心電計、活動量計・バイタルメーター、診断機器などのリアルタイム監視やログ収集を行う場合、IoT技術の応用が期待されています。センサー技術に加え、テレメトリーシステムも医療現場では欠かせない技術です。例えば、Bluetoothに対応した聴診器。心音や脈拍データなどをタブレットやパソコンに送って保存・管理し、医療データとして活用するといったことが広がっていくと予想されます。

いずれにせよ、今後の医療ITは、クラウドやIoTプラットフォームをベースとした、相互接続性の有無が問われることになります。この部分は既存の医療機器、医療システムベンダーの市場と必ずしも競合するわけではありません。既存のシステムや機器をいかに相互連携させるかが機能の要となるため、他業種やベンチャーが参入する新たな市場が誕生する可能性も秘めています。

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