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ニッポン・ロングセラー考
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日本初の「チューブ入り香辛料」を発売

チューブ入り香辛料の発売前は、缶入り粉末が一般的だった

どこの家の冷蔵庫のポケットにも必ずと言っていいほど入っているのが、わさびやからしなどのチューブ入り香辛料。現在、日本のスパイスの市場規模は年間約550億円だが、驚くことに、チューブ入り香辛料がその4割強を占めるという。これは日本特有の現象であり、その端緒を開いたのがエスビー食品株式会社なのだ。

国産初のカレー粉を開発・発売したエスビー食品は、戦後、家庭用瓶詰めコショーや洋風スパイスの分野に進出。1970(昭和45)年に日本初のチューブ入り香辛料「洋風ねりからし」を、その2年後には「ねりわさび」を発売した。それまで、わさびやからしと言えば、粉末が一般的。湯飲みなどに粉末を入れてぬるま湯で溶き、逆さに伏せておく光景を覚えている人も多いのではないだろうか。しかし、使うたびに溶くのは手間がかかり、いかにも面倒。当時、レトルトなどインスタント食品が次々に発売されおり、時代はすぐに使える商品を求めていた。

日本初のチューブ入り香辛料「洋風ねりからし」を皮切りに、次々に新商品を発売

わさびやからしをペースト状にし商品化するのは、もちろん容易ではなかった。そもそも、わさびやからしはなぜ辛いのか?それは、辛味の母体成分シニグリンに水分を加えると、細胞にあるミロシナーゼという酵素の働きで加水分解され、アリール芥子(からし)油という辛味成分が生成されるからだ。これが生成されて初めて、あの特有の辛味を生じる。
しかし、アリール芥子油は揮発性なので、時間がたつと抜けてしまう。また、加水分解が進み過ぎると、ニンニク臭やタマネギ臭が発生するという。酵素の働きをいかにコントロールするか、それが最大の難関だった。エスビー食品は、試行錯誤の結果、「油脂」などを加えることで辛味成分を包み込み、水を遮断しつつ、おろしたてやひきたてのフレッシュさを長期間保持する技術の開発に成功した。

当時はアルミ製のチューブに入っていた

粉末が35gで65円だったのに対し、チューブ入りは100円。若干価格は高いものの、いつでもすぐ使えるという利便性が受け、ベストセラーとなった。中でも「ねりわさび」の評価が高かったという。生の本わさびは高価で手が出ないという人々が、簡便かつ手頃な価格の「ねりわさび」に飛び付いたのも無理はない。ちなみに、当時のわさび原料は、比較的安価な西洋わさび(ホースラディッシュ)が中心だった。
1974(昭和49)年には、ハウス食品株式会社もねりわさびを発売するなど、この分野への新規参入が相次ぐが、チューブ入り香辛料という新しい市場はライバル同士が切磋琢磨(せっさたくま)する中で、その規模を順調に拡大していった。

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