グローバル化とは、夢を抱けるようになること

― 近年は企業もグローバル化が求められていますが、日本と世界の壁はまだ厚いということでしょうか。

英語ができるとか、グローバル・コンプライアンスがどうとかいう前に、日本社会の考え方を変えないと、本当の意味でグローバル化はできない気がします。アメリカで成功した話をすると自慢と受け取られてしまうのも、日本ではほとんどの人が実現できない非現実的な話に聞こえるからだと思うんです。ですが、子どもの頃から受験戦争を勝ち抜いて、会社に入ったら日々の仕事を地道にがんばっているのに、大きな夢が描けないというのは、残念です。
　グローバル化というなら、まずビジネスパーソンにも夢が抱けるように、野心を持って仕事に取り組めるような仕組みづくりから始めたほうがいい。業績を上げたらきちんと評価されて、努力した分だけの報酬や待遇を得ることができればモチベーションも上がると思うんです。そのためには、経営のトップにもそれだけのスケール感が求められます。
　私から見て、アメリカと日本で企業力にそれほど差があるとは思えません。日本にも立派な業績を上げている企業がたくさんありますから、社員に夢を与えることもできるはずなんです。前例が1つできれば、目標が身近になって仕事にも身が入る。日本人は皆同じであることを好みますが、平均を目指していては、グローバル化はできないのですよ。一人ひとりがもっと高い目標や大きな夢を目指せるようになるといいですね。そうやって改革していけば、おのずと日本人のマインドも変わっていくのではないでしょうか。

ゴルフ界を盛り上げるため、自分にできることをコツコツと続けたい

― 2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、ゴルフ日本代表のヘッドコーチを務めました。今や日本の選手を率いる立場になられましたが、日本のゴルフ界をどのようにしていきたいとお考えですか？

今回のオリンピックでゴルフは個人競技でしたから、ヘッドコーチといってもアドバイスすることなどできません。それぞれの選手には個人コーチがいますからね。だから、私の役目は、会場で選手を引率して、「ナイスバーディ！」と声援を送ったり、いいショットだったら拍手をしたり。場を盛り上げるのに徹することでした（笑）。

― そうだったんですね！　では、ヘッドコーチに抜擢されたのはその明るいお人柄のせいでしょうか？

海外経験があったことと、ベテラン選手と若手選手の中継役として適任だったのでしょう。ゴルファーは気難しいところがあって、選手同士で馬が合う合わないが意外とはっきりしているんです。でも私はそこまで苦手な人がいないし、誰とでもストレスなく接することができるので、ナーバスになっている選手たちを中和できるのは丸山だろうと見込まれたのだと思います。

― そういうお人柄が、人気の秘密ですね。

どうでしょう（笑）。まあ、私は年下の選手が生意気なことを言ったり失礼な態度を取ったりしても、それほど腹が立たないということはあります。無知なだけということもあるじゃないですか。「それはよくない」と注意すれば、だいたいの子は直ります。「まるちゃん」というあだ名も親しみやすくていいのかもしれませんね。

― 国内では若者のゴルフ離れと言われていますが、いかがでしょうか？

そういう傾向はあるかもしれませんが、それでもゴルフをやる子は必ずいますから、そういう若者にゴルフの楽しさや、やりがいのある世界だということを伝えていくことが大事だと思っています。松山英樹選手のようなスーパースターが現れたことで、ゴルフがイメージアップしたのではないでしょうか。
　我々にできるのは、今ゴルフをしている人たちを大事にして、その中からできるだけ多くのスーパースターをつくりあげていくことです。今までの歴史から見ても、そう簡単にスーパースターは出てきませんから、コツコツと啓発を続けてゴルフのおもしろさを伝えていくつもりです。
　それに、ゴルフは個人スポーツですから、一緒にラウンドを回る人と、真剣勝負の絆が生まれるんです。もちろん団体のスポーツでもそういう場面はあるかもしれませんが、実際、企業のトップにゴルフをするという方は少なくありませんね。であれば、ゴルフによって場を共にする機会もできるでしょう。そればかりを意識していては〝真剣勝負〟はできませんが、結果として、僕はゴルフによって多くの人脈を得て、今があると思っています。今は、私が始めた頃に比べて、かかる費用は数分の一です。ぐっと親しみやすく、皆さんが楽しめるスポーツだと思います。