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話を掘り下げたら、バラエティ番組にしない、引き際の見極め方が大切。

写真:吉田豪さん

吉田豪さんお馴染みのポーズ

―吉田さんは、なかなか話がつながらない人、コミュニケーションをとるカギがつかめない相手に対してはカウンセラーの立場で臨むとよく話されていますが、具体的にはどのように話をつなげていきますか。

吉田:アイドルにその可能性が高いですね。バラエティ番組のように追い込んだり、突っ込んだりする必要はなく、笑いを取る必要もないので、ひたすら受け止めて、心をときほぐして、じっくり時間があるので焦らなくても大丈夫ですと、対応します。

―どこまで聞いていいのだろうという見極めはどのようにしていますか。

吉田:まずは表情を見て、聞かれたくないのか、実は話したいのかを探りながら、少しずつ踏み込んでいきます。僕は人の悩みを聞くのが大好きなんです。以前に、シンガーソングライターの大森靖子さんに、「豪さんは引き際の見極め方がうまい」と言われたことがありますね。これは新鮮でした。

―引き際の見極め方とは?

吉田:大森さん自身いろいろな人の悩みを聞く立場の人でありながら、ご自身も悩みを持っているんですが、もっと踏み込んで聞いてしまうらしいんです。僕は深入りしないので、「豪さんはここで止まるんだな」と思ったらしいです。僕は聞くことは好きですが、深入りはしません。

―仕事だけではなく、周りの友人の悩みなどを聞くことも多いのですか。

吉田:友人の離婚危機を何回止めたことか(笑)。両方の話を聞きます。友人が謝罪の文章をLINEで送ろうとしたときに、代わりに書き直したこともありますね。謝るときは余計な事は言わないでちゃんとしないとダメですよね。

―相手を不快にさせてしまったとき、悩んでいるときは、吉田さんならどのようにコミュニケーションをとりますか。

吉田信頼関係があるから踏み込んで話を進めることができるというのが基本にあります。まずは関係性をしっかり作っていくこと。僕は、“敵じゃないアピール”を盛んにします。仕事の場合は、相手に関するグッズを持って行ったり、相手のことを知っていますから大丈夫ですよ、楽しく話をしていきましょうとアピールしていきます。

わかったフリは厳禁、「わかります」の共感を効果的に使う

―「相手に同化することも話を引き出すコツのひとつ」と著書で書かれていますが、どのようなことですか。

吉田「わかります」という言葉をどう効果的に使うかです。嘘をついてはダメです。考えが近いなと思う瞬間に打ち出す言葉が「わかります」という一言です。共感できると話が進みやすいので、いろいろ話をして共感する部分を探します。話がガチッとかみ合った瞬間は楽しいですよね。

―かみ合った瞬間は盛り上がりますよね。

吉田:そうなんです。でもそれだけではなく、突き放すパターンもあります。「ぜんぜんわかりません」と言ってしまいます。そのほうが展開は面白くなる。わかったフリをしないことが重要です。

―嘘は絶対につかないということですね。

吉田:嘘をついてもいいことは何もありません。嘘をつき続けることがどれだけ面倒なことかは若い頃に経験しているので、なるべく嘘のない人生にしようと思っています。特に仕事では嘘は絶対にありえないですね。

年齢を問わず、適度に軽く見られて話を聞くニーズに対応する「現状維持」がモットー

写真:吉田豪さん

―吉田さんのモットーは「死ぬまで現状維持」とうかがっています。プロのインタビュアーとしてずっとやっていくということでしょうか。

吉田:ポジションとしての意味も含めてですね。以前、テレビ番組で林家ぺーさんが、他の出演者は野心を持ってギラギラガツガツしている中で、「死ぬまでこの位置」と言ったんですね。それがすごくいいなと思いました。ありがたいことに今僕の仕事は少しずつ上昇していますが。

―仕事が上昇しつつも、野心を出し過ぎないということでしょうか。

吉田:向いている仕事、楽しい仕事、刺激的なことしかしたくないのが本音です。話を聞く仕事は、どんな出版不況も乗り越えられるものだと思います。話を聞くニーズはどこにでもありますから。あとは紙、ネット、イベントなど出し方の違いに対応していくだけです。

―現状維持とは、話を聞くニーズに対応していくということなのですね。

吉田:そうです。そのためには、適度に軽く見られながら、年下の人でも普通に話を聞くことが成立できるようにやっていく。えらくなってしまうとやりづらくなる部分があるので、そういう意味でも現状維持がいいですね。

―年下の人と年上の人では話すときに気をつけるポイントは違いますか。

吉田:そんなに変わらないと思います。大先輩は、情報が多いし、自分のことに興味を持ってくれる年下の人が好きですから、大先輩のほうが話やすいですね。いろいろな人生の中のこの部分に興味があるから聞きに来ましたと踏み込めばいいんです。

―“興味があるから聞く”ことが大切なんですね。

吉田:もちろんです。コロナ禍でリモートでの配信も多くなりました。インタビューはやっぱり対面できるのが一番ではありますが、無観客でも、配信の先の観客に喜んでもらえることを聞いていく。疑問に思った部分を突破口にして踏み込む。とにかく人の話を聞くのは面白いですよ。

取材後記

吉田豪さんのネット配信、猫舌SHOWROOM『豪の部屋』(https://www.showroom-live.com/nekojita)は、出演したいという逆オファーが多いのだそうです。その理由は、今回お会いして話をしていくなかで(リモートでしたが)、納得しました。初対面でも壁を作らず、話のなかで絶妙なタイミングに相槌を打ってくれるので、安心感が大きいんです。そして一つ一つのエピソードが面白い。もっと話を聞きたいと前のめりになってしまいます。経験値がすごいことはもちろんなのですが、データ主義というだけあり、考え方の引き出しが幅広いのだと思いました。今回は吉田さんが実践しているコミュニケーションに必要なポイントを聞きましたが、嘘はつかない、深入りしすぎない、相手が話したい話題を探る、時には緊張感のある話題をふるなどは、プライベートにも、仕事にも生かせるポイントです。リアクションも忘れずに、もっとコミュニケーションを楽しんでいきたいと思いました。

プロフィール

吉田豪さん
プロインタビュアー/プロ書評家
1970年、東京都出身。東京デザイナー学院、編集デザイン科卒業。編集プロダクション、プロレス・格闘技の専門雑誌『紙のプロレス』編集部を経てフリーランスに。徹底した下調べをもとにしたインタビューに定評があり、インタビュー相手についての知識は本人以上ともいわれるほど。インタビューを受けないとされる有名人も吉田豪さんならと受ける人が多い。著書に『男気万字固め』(エンターブレイン)、『人間コク宝』(コアマガジン)、『元アイドル!』(ワニマガジン社)、『豪さんのポッド 吉田豪のサブカル交遊録』 (白夜書房)』『聞き出す力(日本文芸社)』など多数。テレビやラジオ出演、イベントでも活躍中。

2022/04/05

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