チャット形式でリアルタイムにカスタマーサポートを行い、ユーザーとの新たな接点としてチャットボットを活用するケースが増えてきました。今回は、企業の成長戦略としても期待できるチャットボットについて、注目される背景や実際の導入例をまじえて解説します。
チャットボットとは
チャットボットとは、会話を表す「チャット」と「ロボット」を組み合わせた造語です。チャット形式で、ユーザーが疑問や質問を文章で入力すると、自動的に回答するプログラムのことを示します。
有名なチャットボットとしては、米マイクロソフトが開発した女子高生AI「りんな」が人気を博しました。また、LINEやFacebook、SlackなどのSNSでもチャットボットを活用したサービスが提供されています。
ビジネスではカスタマーサポートでユーザーの疑問や質問にチャットボットが対応。話し相手やゲームの相手をするチャットボットまで登場しています。
さらに、企業や官公庁の内部でも、従業員や職員からの問い合わせへの対応にチャットボットが活用されるようになってきました。
チャットボットが注目されるようになった背景
このように幅広く活用されるようになったチャットボットですが、注目されるようになった背景には主に二つの要因があります。
一つめは、自然言語処理と機械学習技術の進歩です。
AIによる自然言語処理能力が高度になり、ディープラーニングと呼ばれる機械学習もAIの進歩にブレークスルーを起こしました。従来は決められた命令にしか対応できなかったコンピューターが、人の発する揺らぎのある言葉、さらには文章から意図を解釈し、適切な対応を行えるようになってきたことがチャットボットの機能を高めています。
二つめに、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を重視する企業が増えてきたことが挙げられます。
多くの企業が顧客からの問い合わせに対して、24時間リアルタイムで自然な会話スタイルで対応できるサービスを提供するようになりました。また、公式キャラクターが顧客との会話やゲームの相手を行うことを、顧客との新たなコミュニケーションチャネルとして捉える企業が増えています。
チャットボットは大きく2タイプある
一口にチャットボットと言っても、その仕組みは大きく二つのタイプに分かれます。
●シナリオ型(ルールベース型)
予め用意されたシナリオに沿って会話を進めるタイプで、AIは使われません。
設定された回答を選択して会話するタイプのため、会話の範囲は限定的で、FAQの代用として利用されます。
このシナリオ型には、辞書に登録されたテンプレートを元に会話を行うハッシュタイプや、「Yes」「No」の返事をしたり相槌を打ったりしながら、相手の言葉を要約して聞き返すことで会話を進めるEliza(イライザ)タイプがあります。
これらのタイプのメリットは、設定が容易で導入しやすく、ルール以外の回答がされる心配もなく、導入コストも低く抑えられます。
ただし、自然言語処理ができないため、ユーザーが望む会話での満足感を与えにくく、また、自動学習もできないため、人力でパターンを網羅していく改善を繰り返す必要があります。
●機械学習型(AI型)
膨大なデータをAIが繰り返し学習し、回答の精度を高めるタイプです。自然言語処理を行うため、ユーザーの通常の会話を聞き分けて、回答も自然な会話調で返すことができます。
このタイプのメリットの一つは、ユーザーごとに異なる言葉遣いの揺らぎに対応できるため、ユーザーに会話の満足感を与えやすいことです。もう一つのメリットは、AIによる自動学習で、利用されるほど回答の精度を上げていくことができることです。
一方、デメリットとして、学習を深めるための膨大なデータが必要で、実用に向け調整が必要になります。また、導入コストもシナリオ型よりは高くなります。
ただ、今後のチャットボットでは、より自然な会話とより多くの質問への対応が求められるため、この機械学習型が主流となっていくことが予想されます。