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「SDGs」成功のポイントは、社員を巻き込み
リアリティを持ってフィードバックをきちんと行うこと

―今ビジネスの世界で注目されている言葉に「SDGs(持続可能な開発目標)」があります。銅冶さんの経験から、企業の中に「SDGs」をうまく取り入れて働くにはどのような方法が良いと思われますか。

写真:銅冶勇人さん

銅冶:企業としてはSDGsを行っていかなければいけない時代ですよね。でも、ただ行っているだけで、そのことを社員は遠くから静観しているだけのように見えるのです。要するに、社員を巻き込んでいない。持続可能にするには一人ひとりがいかにやりたいと思える活動にできるかが大切なのに、本来の意味から離れてしまっているんです。

 「CLOUDY」では、さまざまな企業やブランド、学校とのコラボレーションをやらせていただいています。コラボを始める前に、「どれくらいの社員が関わってくださるのですか」とうかがいます。お金を出すだけのコラボならばやりたくない。一人でも多くの人に知ってもらうことが、「持続可能な開発」につながる。だから、「社内で多くの人に共有できる仕組みを作ってください」というのが、僕たちからの条件なんです。例えば、年に4回、女子高でデザインアイデアを募り、その中から2作品をアフリカの工場で作り、実際に商品化して販売しています。これは、その女子高の生徒全員が関わる仕組みの課題として行われています。毎回商品化するとすぐに完売してしまうヒット商品になっています。

 「CLOUDY」とコラボレーションしたことが、その会社の社員や学校の生徒にとって「大したことなかった」と思われてしまったら、それはこちらの力不足です。しかし、一人でも、こういうアクションは楽しい、会社や学校は面白いことをやっているなと感じてもらえたら、それが次のステップにつながるのだと思うのです。

 ビジネスとして、SDGsを取り入れる場合は、数字を明確にすることが大切だと思います。会社の利益に直結していることがもちろんベストです。

 あるいは、また行っていること自体に、リアリティを感じられることが大切です。アフリカのどこどこの団体に企業が寄付しましたと、写真1枚をWEB上に公開して終わってしまったら、リアリティはありません。それよりも、「社員の○○さんがアフリカに行ってきました」「結果はこうでした」「利益につながったのでもう一度やりましょう」と行動が分かったほうが伝わります。企業が社員をどこかへ出向させるのは、帰ってきたときに利益をもたらすからですよね。それと同じことなんです。リアリティを持ってきちんとフィードバックするというところまで行わないと、1回限りのイベントで終わってしまいます。

海外のビジネスでは「理解する根気」より
「許す根気」が大切

―アフリカなど、海外でビジネス関係を継続していく上で必要なことはなんだと思われますか。

銅冶:最も大事なのは、「根気」です。とてつもなく根気が必要なのが、海外でのビジネスだと思います。相手を理解していく根気が必要ですが、それ以上に許す根気が大切なのだと思います。アフリカでは、正しいことを言い続けていても分かってもらえることはありません。だから、ずっと言い続けて、目をつぶらずに向き合って解決していくことが大切。そこにはとてつもない根気が必要になってくるのです。

 アフリカに進出している企業は少なくはないと思いますが、ビジネスを確立できているかというとどうでしょう。背景には、日本人の感覚でビジネスを成り立たせようとしている姿勢があるでしょう。1~2年で何かを作ろうとするのではなく、4~5年かけて積み重ねていくことをしないと確立することはできないと思います。

―「CLOUDY」は、アフリカでのビジネス展開を基礎に、企業とのコラボレーションなど、多様性のある働き方を実践されていると思いますが、銅冶さんにとって、多様性とはどのようなことだと思いますか。

銅冶:多様性は言葉の通り、多くのモノが共存していくなかで、受け入れて行くことだと思うのです。世の中には、これはダメ、あれはダメという制限がたくさんありますが、そこから「×(ダメ)」をなくす、つまり、可能性や選択肢を多くしていくことなのではないかなと思います。僕は小さい頃から、両親に「やってもやらなくてもよいことなら、やる」と教えられて育ってきました。その行動が多様性につながるのではないかと思っています。

銅冶勇人さん

リサイクルをテーマに新たな挑戦へ。
選択肢が増えていく

―今後の「CLOUDY」、「Doooooooo」の展開は?

銅冶:ゴミ問題に対するプロジェクトを現在進行しています。ゴミをリサイクルしてシャツが作れないだろうかと。実は、コットンを育ててTシャツ1枚作るまでには、2800リットルもの水が必要となります。日本の一般的なバスタブで約160~200リットルなので、それが14回分以上にもなるんですね。バスタブの水は使いすぎ、もったいないなどと言われていますが、Tシャツ1枚作るためのほうが水を大量に使っているんです。これを減らしたい。そのために、あふれているゴミやいらなくなった洋服をリサイクルして、コットンの量を減らした新たなシャツを作れないだろうかと。そうすれば、ゴミ問題や水の使いすぎ問題を解決するひとつの選択肢になるかもしれない。

写真:銅冶勇人さん

 また、プラスチックゴミを増やさないために、「CLOUDY」のハンガーは紙製にしています。リサイクルペーパーや、FSC森林認証紙のみを使用して、紙の専門商社、株式会社山櫻との共同プロジェクトで開発しました。このハンガーの製作コストは普通のハンガーよりも高額ですが、やらなければいけないこと思って取り組んでいます。

 こうした選択肢を増やすアクションをこれからも続けていきたいと思っています。ビジネスの観点でも、すでにあるビジネスモデルと同じことをしても限界が見えています。違うことをやりながら、違うシナジーを呼び、違う可能性を広げることに意義があります。

 例えば、プロジェクトを進めた後に、自分がどういう選択肢を得られているか、選択肢が増えているかは、一番のキャリアを示すバロメーターだと思います。

取材後記

大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券へ就職した銅冶さん。その経歴から、英語も堪能なのだろうと思っていたが、意外にも就職が決まったときは英語はまるでできなかったのだそうだ。「英検4級、TOEICは300点くらいしかなかった」と笑う。質問をしても、飾ることなく、自身の経験を話してくれる。気さくで笑顔が絶えないジェントルマンという印象だ。アフリカでのビジネスについても、相当のご苦労がうかがえるのだが、「現地の人はミシンをかけながら歌ったり、時には踊ったりしてとても楽しそうなのだ」と話す。ビジネスが成り立つまで何度も話し合い、相手を受け入れて共有できる“ものさし”を真剣に模索してきたからこそ、笑顔で振り返ることができるのかもしれない。そして、心からアフリカが好きなのだろうと思った。銅冶さんの頭の中にはまだまだやりたいことがありそうだ。それが形になって発表されるのが楽しみになった。

プロフィール

銅冶勇人(どうや・ゆうと)
東京生まれ、慶應義塾大学経済学部卒業。2008年、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。2010年に特定非営利活動法人「Doooooooo(ドゥ)」を創立。2014年に同証券会社を退職。2015年株式会社DOYA創立。同年9月にアパレルブランド「CLOUDY」を創立。日本各地の百貨店などにポップアップショップを出店するとともに、現在は、定期的に学校でアフリカについての講義を行うなど、啓蒙活動も続けている。

2019/12/3

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