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本気でやりたいことは何? 文字で書くことができないと実現しない

写真:光山英明さん

―『わ』をオープンした当時から、事業を拡大していく計画は立てていましたか。

光山:計画表のようなものは作っていました。店を始めるにあたって、自分の考えをまとめるために、「吉祥寺で2~3店舗行う」「東京で赤身肉を提供する店をやる」など。根拠があるわけではなく、書くことによってしっかり自覚したのかもしれません。ただ見返すと、驚くことに計画表の事柄はすべて実現しているんです。

―書いていたことがすべて実現しているのはすごいですね。

光山:そうですね。きちんと紙に書いて残せると、具体的に考えられるのだと学びました。ざっくりとした考えでは紙に書けません。店に立っていると、「僕もマスターのように店をやりたい」といわれることがあります。でも、話しているだけではいつまでたっても夢のまま。夢を語っている人の中でも、具体的にいつまでに、こういうことをやりたいといえる、特にそれを短期間で見据えている人はきちんと実現しています。

広告もPCもなくても大丈夫、SNSをフル活用。
投げかけ投稿で成功の感触をつかむ

―店の成功とともに、フランチャイズやプロデュース、資金協力などの相談を受けるようになったとうかがっています。プロデュースした店はすべてが人気店になっていますね。どのような経営指針があるのでしょうか。

光山:お客さんとどれだけコミュニケーションをとれるかが大切だと思います。それは、なれ合いになって一緒に楽しむ、常連になってもらうということではありません。来てくれるお客さんを平等にサービスする。むしろ、僕にとって常連客は店側の人間だと思っています。もし店が込み合ってきたら、すっと早めに帰るとか。店の空気をわかってくれる人。距離感を大切にしたいですね。

なので、僕は”うちの常連さんです”とは絶対に言いません。そうやって他のお客さんに紹介すると距離感がおかしくなっていくと思っています。

飲食店は、店に来れば食べていくということ。つまりお客さんから必ず目の前でお金が入る業種です。目の前で毎日達成感があるというか、実感できます。そのためにはどうすればお客さんに喜んでもらえるかを考えれば人気が出ていくのだと思います。

―お客さんに喜んでもらうためのアイデアはどのように実現しているのですか。

光山:SNSを使います。アイデアが浮かんだら、Facebook(※光山英明Facebook)やTwitter(※@wa1115)などでフォロワーに投げかけて投稿します。そこで反応を見るのです。

例として4~5年前になりますが、店を閉めたいと知人にいわれ、閉めるなら大胆なリニューアルができるのではないかと思い、店員一人ででも切り盛りできる店にしてはどうかと考えました。店員一人で食事を提供するため、お酒は日本酒を冷蔵庫に用意する。1日1組の貸し切りにして、すべてセルフサービスにする。東京ではSNSを通じた中規模のイベントが多く、実は幹事をする人は常に場所を探しています。そういう人に場所と食事を提供しようと。それをSNSに投げかけたら多くの反応がありました。そうして出来たのが、千駄木の貸し切り専用焼肉店「肉と日本酒」です。

―『肉と日本酒』は、黒毛和牛の一頭買いにこだわっているダイゴインターナショナルのユンさんの店ですね。スタッフ不足のため閉めると相談を受けてプロデュースされたんですね。

光山:セルフサービススタイルで、1日1組限定※にすれば、スタッフ不足でも問題ありません。20~45名は入る広さでも成功しました。日本酒も、酒屋ごとに冷蔵庫を分けて自由に飲めるようにすることで、気になる酒屋のお酒を気軽に楽しめます。酒屋の名前も覚えてもらえるので、自分で日本酒を買う時にも便利。貸し切りというところも大きな魅力になったと思います。

1日1組の貸し切りスタイルは、参加者の中の(潜在的に複数人いるはずの)未来の幹事さんにもつながります。ここは使えると実感してもらえれば、予約は順調に入っていくんです。

  • 通常土日は昼夜各1組で営業。現在は他店舗で違うスタイルでのサービスも提供中。

―SNSを使うことで店の宣伝費も削減できますね。

光山:僕は広告にお金を使ったことがないんです。これは誇りにしています。SNSを活用することでリサーチもできるし、口コミで広がる。興味がある人にきちんと届きます。広告経費は、使うほどお客さんに提供するサービスに乗っかってきます。アルバイト募集もそうです。ですから結果的にリーズナブルにサービスを提供できるんです。

実は今もPC持ってないんですよ。昔もガラケー1つでした。それでもちゃんと届きます。もちろん、スタート時は「いいね」が10もありませんでした。届けたい情報はシェアせず自分で書きます。約9年間そう考えてやってきた積み重ねです。

光山英明さん

日本橋の肉料理店のステーキ食べ飲み放題についての投稿
https://twitter.com/wa1115/status/1362940776183861248

いつでも店を閉める覚悟で。延命はしない。独立しなくてもいい。

写真:光山英明さん

吉祥寺で長く愛されている『わ』

―飲食店を立ち上げたい、独立したいと考えている人は多いと思います。光山さんにとって応援したいと思えるのはどういう人でしょうか。

光山:どのような店にしたいかという熱意と、いつでも店を閉める覚悟がある人ですね。「こういう店をやりたい。けれど、資金が足りないので協力してほしい」「この部分の知識がないので教えてほしい」と具体的に、取り繕うことなく正直に話してくれる人は熱意もあり、覚悟もあると思います。そういう人はもし失敗してもやり直しができます。

―応援してきた店にはルールなどを設けているのでしょうか。

光山:直営店のほかに資金協力している店は4件ありますが、相談を持ち掛けられて会っても断ることが多いのが実情です。しかし協力すると決めたらリスクをあまり考えません。

アドバイスなどはしますが、原価計算は自分でやってもらいます。返済はしてもらいますが、オーナーとしての利益はほとんどないです。その人が返済のほかにオーナーの顔色をうかがうようになると、店の質が下がります。そうなるとお客さんが離れていき、店は1年でつぶれてしまうこともあります。それでは困ります。息長く続いてほしい。また世の中にいい店を1軒出せたなと喜べるのが一番いい。あしながおじさんのようなかかわり方ですね。

店の宣伝面では、最初はSNSなどで僕の名前を出して宣伝してもらっていい。ただし、期間を決めて僕の名前を引き上げてもらうようにしています。そのほうが店にとっても良いし、店の名前だけで評判が広がるようになれば、勝ちです。

店を始めるからには、何かあったら潔く閉める覚悟も必要だと思います。冴えない店で延命していくよりも、一度たたんで、反省してやり直したほうがいい。

働く以上、結果は出したいです。でも、忙しくなるとサービスが悪くなる店がけっこうあります。僕はどうしてだろうって思うんです。店が忙しいのは結果が出ているということだから嬉しいはずです。僕は満席になっていると自然とニコニコしちゃいますね。お客さんに「こんなに忙しそうなのになぜニコニコしているの」といわれたことがあります。「めっちゃうれしいから」と言ったらぽかんとされました。

―飲食店で働くなら独立を目指したいと思う人は多いのでしょうか。

光山:飲食店は独立したほうがかっこいいと思われがちですが、それは違うなと思います。よく誤解されるのですが、僕は必ずしも独立を勧めているわけではないのです。大きなチェーン店や、大きな店の役職でもその人に合っていれば素敵なことです。僕はどちらに進んでも応援します。

ウイズコロナ時代もいつでも走れるように。基本に戻る

―今は飲食店にとって厳しい状況ですね。飲食店はこれからどのように必要とされていくと思いますか。

光山:コロナ禍でみんな厳しい状況にあります、店のタイプにもよるとはいえ、給付金などである程度自治体から守られていますが、コロナが終息した後、またはウイズコロナの新しい時代に入ったら、どうなるのか。一番不安に思うのは、みんなの生活時間が変わっていること。行動も生活パターンも大きく変化しました。この生活習慣が、会社に出社して仕事の後に同僚と飲みに行くといった以前のような形に戻るのかどうかは誰にもわかりません。だからこそ、いつでも全力で行けるように体力を整えていく必要があります。元のようにスタッフがサービスを提供できるように、心が折れないように、いつでも走れるようにしていかなければならない。
最終的には、守られている今の状況が終わった後は、基本に戻ると思います。

―基本とはどのようなことでしょう。

光山:甘えず、準備段取りをしっかりして、礼儀礼節を忘れずに一つずつやっていくことです。今までにも増して、なれ合いでは持続できなくなると思います。いざ走り出す時に、全力を出せるかどうかが勝負かもしれません。

光山英明さん

取材後記

光山さんは、「体育会系経営者」といわれることがあります。それは、まっすぐに生きている、自分の信念を曲げずに進んでいるからだと思います。お話を聞いていて思ったのは、基本をとても大事にされているということ。誰でも基本を当たり前と思いつつも、なかなか実行できないものですが、光山さんは店を立ち上げた時から今でも、驕らず、人としての基本姿勢を忘れずに持っているのだと思いました。お話をしているとそれが伝わってくるから、人がたくさん集まってくる。そして光山さんのいる店ならいつでもおいしいものが食べられそうとも思いました。

プロフィール

光山英明さん
株式会社個人商店 代表取締役
1970年、大阪市生まれ。3人兄弟の末っ子で、兄ふたり(次兄は元近鉄バッファローズキャッチャー)と共に小学生のころから硬式野球を始める。野球の名門校上宮高校に入学。野球部主将をつとめ、甲子園出場。ベスト8の成績を収める。その後中央大学に入学。野球部で学生時代は吉祥寺で寮生活。卒業後に大阪で卸酒屋に就職するも、2002年に退職し、東京に上京。2002年11月15日にホルモン酒場 焼酎家「わ」を開店。2012年には赤身肉をメインにしたコースメニューのみの店「肉山」を開店。予約1年待ちの人気店に育てる。フランチャイズ展開、プロデュースを手掛けた店が56店舗。ほかに出資するなど、すべてを黒字経営の人気店に育てた。

2021/02/26

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