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不要不急―静かに待つ潔さが俳優の仕事

写真:光石研さん

紺色が好きで、ファッションでもその都度で印象を変えたくないと話す光石さん、取材時も紺のジャケットに黒い眼鏡をカッコよく自然体でコーディネートしていた。

―コロナ禍で俳優の仕事はどのように変わりましたか。

光石:俳優の仕事は不要不急な事柄だと思いました。例えば、飛行機で「お医者様はいますか」というアナウンスを聞くことがありますが、「俳優さんはいらっしゃいますか」ということはないですよね。舞台の俳優さんなら、一人舞台をやって励ますこともできます。
しかし、僕のように映像の俳優の場合、照明をあてて、カメラで撮って、声を拾ってもらわないと成り立たない。スタッフもそうですが、みんなでエンターテインメントを作っています。励ますことはできても、個人の力は微力で何の役にも立てないと、つくづく感じました。

実際に、仕事は2か月間ピタッと止まり、撮影中のドラマも中断、中止や延期になったものも多くあります。この2か月間は久しぶりに仕事をせずに過ごしていました。でもデスクに置いてある台本が気になって、ただ、撮影までの期間が見えないので、読むのが早すぎても身につかないとも思い、いつ読み込めばいいのかという判断がしづらかったですね。

―現在、撮影は再開していますか。

光石:はい、手指消毒、検温は毎回行い、新しくフェイスシールドをした状態でリハーサルを行っています。演技の仕方も変わりました。フェイスシールドをした状態だと声が聴きづらく、表情も読み取りにくいので、共演者とのかけあいの肌感がつかみにくい。まだ手探り状態ですね。こういう時は静かに、落ち着くのを待つほうが潔いと思いました。

何事もなかったかのように再開、
プロフェッショナルとしての”かっこいい”を感じる現場の働き方

写真:光石研さん

―再開されたドラマ撮影の現場を見てどう思いましたか

光石:あらためてプロフェッショナルとして撮影現場が”かっこいい”と感じました。中断していたドラマ『コールドケース3』の撮影が再開されたとき、2か月ほど中断していたにもかかわらず、スタッフは空白期間がなかったように、一喜一憂せず、段取りをして、すぐに撮影を開始できたんです。僕らの仕事は何事もないから続けられる、やらせてもらっている。それはスタッフも同じことを思っていたはずです。それを分かったうえで、誰もがすぐに普段通りの働き方で動いていました。プロってこういうことなんだろうなと。

―新しいドラマ制作の場合、スタッフも共演者も幅広く集まると思いますが、世代を超えて一緒に仕事をする楽しさはありますか。

光石:そうですね、若い人との仕事はとても刺激になります。今の若い世代は演技がうまいですし、若い監督はとてもクレバーです。みんな発想が豊か、クリエイティブなことに年齢は関係ないと思っているので、新しい価値観を教わるいい機会ですね。とにかく楽しい。ただし、そんな彼らにも60歳の役はできない。それをやるのはこちらに任せてと。

―『バイプレイヤーズ』の松居大悟監督も若く、30代ですね。一緒にお仕事をされていて驚かれたことなどありますか。

光石:発想がすごいと思うことがあります。たとえば、「頭の上にミカンを載せてください」といきなり言うんですよね。みんな一瞬「?」が頭に浮かんで0.5秒は考えるんですけど、すぐにこの人になら任せた方がきっといい、わかったOKとなる。これは、僕も含めて俳優側の勘所でもあります。この人にのると面白いことが起こるという勘所。信頼感があるんです。バイプレイヤーズのシリーズを通してそれを実感してきたから、クリエイティブですごい人だと思います。今回の撮影もいろいろなことがありました。でもそれができることがお互いに”かっこいい”と思います。

“昔、60歳の役者が面白いことをやっていた”を伝えて撮影現場の
バトンをつなぎたい

―バイプレイヤーというポジションは、光石さんにとってどんなものですか。

光石:どんな現場でも自然体でいける俳優。演技というものは自分の肉体と精神でしか表現できないので、NHK大河ドラマで明智光秀を演じた時も、監督と相談してナチュラルにやらせていただきました。

―俳優として働くうえで欠かせないポリシーはなんでしょう。

光石:最近よく見るテレビ番組に、料理雑誌の男性編集長が、街のレストランのシェフに料理を教わる番組があります。編集長は最初はうまくできても、次には失敗する。しかし、シェフは毎回同じ味、形のオムレツを作るんです。僕もそうありたいと思います。

つまり、要求されることにぶれない、きちんとした演技を提供する。クオリティーを保ってオーダーにこたえることができる俳優になりたいですね。それができたらかっこいいと思います。
あとは、現場ごとの色、雰囲気の違いがすぐに分かるのがベテランなのかな、とは思いますね。

―光石さんが目指す俳優は?

光石:職人志向です。アーティストではなく、同じクオリティーの演技を提供できる職人ですね。今回『バイプレイヤーズ』に出ている若い俳優たちが60歳になった時に、次の若い世代に、昔60歳のおじさんたちの役者がいて、こんなわちゃわちゃと映画の撮影現場をやっていたんだよと伝えてもらえればうれしいですね。

光石研さん

取材後記

光石さんはとても自然体で接してくれました。受け答えも飾らず、素顔を出してくれる。役者という仕事が心から好きで、撮影現場という仕事場への深い愛情を持っているのだなと感じました。バイプレイヤーとして知られていますが、それはそれだけ演技の幅が豊かで、自然体で演じられるプロだから、求められるのだろうと思います。光石さんが子供の頃に描いていた還暦の男性像、早い時間から蕎麦屋で文庫本を読みながら晩酌、就寝前にバーボンをいただいて眠りにつき、休日には神保町の古本屋でのんびり本を探すという男性、60歳では早いかもしれませんが、きっといつかは実行してくれそうな気がしました。そしてその様子をどこかで映像でそっと見られたら幸せな気持ちになるのではないかと思える方でした。

プロフィール

光石研さん
俳優
1961年、福岡県生まれ。高校2年生の時に映画『博多っ子純情』(1978年)の主役に抜擢されデビュー。高校卒業と同時に上京し、事務所に所属。名バイプレイヤーとして数多くの映画、ドラマ作品に出演。主な出演作品に『アウトレイジ最終章』『ヒミズ』『シン・ゴジラ』、ドラマ『バイプレイヤーズ』『デザイナー渋井直人の休日』など。2021年4月9日から『バイプレイヤーズ ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』が公開される。愛車は1963年式のメルセデス・ベンツ190。ファッションやインテリアにも造詣が深い。

2021/04/05

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