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SFA新時代:事例に学ぶ 顧客価値を創造することで、高収益企業へと生まれ変わったA社(後編)
SFA新時代:事例に学ぶ 顧客価値を創造することで、高収益企業へと生まれ変わったA社(後編)
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市場競争の激化に伴い、競合他社に顧客を奪われるかたちで売上高・利益を低下させてきたA社は、経営悪化の原因が顧客対応業務プロセスの不備にあると分析、副社長をリーダーとして、全社的な業務改革プロジェクトを立ち上げた。同プロジェクトでは、「顧客価値の創造を重視した組織的な営業アプローチの実現」という方針の下、業務プロセスの抜本的な見直しを行うとともに、新しい業務プロセスの骨格となるSFA/CRMの再構築が図られた。前編では、その業務改革プロジェクトの要点を7つのポイントに絞って紹介したが(前編を確認なさりたい方は、こちらをご覧ください)、後編では、それぞれの改革ポイントにおいて、どのようにSFA/CRMを整備していったかを具体的に紹介していく。

業務改革の「7つのポイント」に、
いかにSFA/CRMを適用するか

A社が置かれているような厳しい事業環境下で競合他社に打ち勝ち収益力を向上させるには、自社が顧客企業にとって欠かせない事業パートナーであることを相手に認知してもらう必要がある。そのためには、重要顧客との間に緊密なリレーションを構築し、顧客企業の事業上・業務上の課題に対して自社の商品やサービスをどう役立ててもらうかという「解決策(ソリューション)」を提供し続けることが求められる。

こうしたあるべき姿の実現に向けて、A社の業務改革プロジェクトでは、前編で述べたような7つのポイントに沿って改革に取り組むこととなった。以下では、同社がそれぞれのポイントにいかにSFA/CRMを適用していったかを、従来システムとの比較を交えながら明らかにしたい。

<7つの改革ポイント>
①顧客セグメンテーションを通じた営業リソース配分の最適化
②アカウントプランをベースにした重要顧客の攻略・深耕
③商談マネジメントの強化を通じた受注確度の向上
④事業目標と商談状況の双方を踏まえた受注・売上目標管理の精度向上
⑤コミュニケーション/コラボレーションの強化を通した組織能力の強化
⑥営業間接業務の効率化による顧客訪問時間の創出
⑦顧客情報管理の一元化を通じた顧客への理解・対応の向上

システム化の方向性①「営業リソース配分」の最適化 ~顧客セグメント分析機能~

前編の振り返り

A社では、「顧客セグメンテーションのルール」を統一し、今後の成長戦略なども加味した営業リソースの最適配分を実現した。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

顧客セグメントの統一、営業リソースの割り当て

A社では、そもそも統一的な顧客セグメンテーションのルールそのものが社内に存在しておらず、顧客重要度に関する共通基準が確立されていなかった。また、現状の顧客マスタは、顧客を分類・整理をするために必要な切り口となる情報管理項目に過不足があるだけでなく、収集・蓄積されたデータ品質についても適切に維持管理されていなかった。この結果、顧客セグメンテーションを適確に行うことが極めて困難であった。

そこでA社ではまず、顧客を分類・可視化するために必要な顧客のプロファイル・属性に関する情報管理項目の整備から着手することとした。併せて、顧客情報の入力・蓄積ルールを明確化するとともに、定期的にデータ品質のチェックを行い、不具合が摘出された場合はデータの補正・追加を促す運用ルールとした。その上で、顧客のプロファイル・属性に基づいて、「取引規模」と「売上高成長率」の2つの指標値を算出し、顧客を「重要顧客」「注力顧客」「維持顧客」「なりゆき顧客」の4つのセグメントに分類する機能を実現した。

これにより、セグメントごとの重要度や特性に応じて営業リソースを配分することが可能になっただけでなく、営業活動方針、チャネル戦略、販促戦略といった営業戦略の立案もできるようになったのである。

また、見落としがちなのが、顧客セグメント(とそれに基づく戦略)と現場の営業活動との関連付けである。営業スタッフが知りたいのは、担当顧客が属するセグメントと採用すべき商談プロセスであり、それをシステム上ですぐに判断できる必要がある。特に、営業スタッフが理解可能なプロファイル・属性に基づいてセグメントを把握できることが重要となる。

そこで、顧客のプロファイル・属性だけでなく、それらに基づいて算出された値と分類されたセグメントを営業スタッフが容易に確認できる機能をシステムに作り込むことにした。

これにより、営業スタッフだけでなく関係者を含めて客観的に顧客のセグメントを把握できるだけでなく、営業スタッフの属人的な判断に頼ることなく、最適な商談プロセスを選択することができ、顧客セグメントに応じた最適な営業マネジメントを推進することが可能になった。

システム化の方向性②「重要顧客の攻略・深耕」の強化 ~アカウントプラン支援機能~

前編の振り返り

A社では、顧客ごとのアカウントプラン(顧客攻略計画)に基づいた組織横断の顧客対応体制を実現し、重要顧客への攻略・深耕を強化した。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

アカウントプランの策定・共有

「重要顧客」と位置づけられたアカウントの攻略・深耕を進める際には、まず営業スタッフがアカウントごとにアカウントプラン(顧客攻略計画)を作成し、マネージャーの承認を得た上で、そのプランをアカウントチームのメンバー間で共有することが求められる。そこで、A社では、アカウントプランの作成・実行を支援する機能をSFA/CRMで実現することとした。

具体的には、その顧客が重要顧客アカウントであるかどうかを顧客単位で識別できるようにし、そうであると認められた顧客に対してのみアカウントプランの作成を可能とした。また、アカウントごとにアカウントチームを定義し、そのチームに属するメンバーの役割に応じたアクセス権限でアカウントプランと活動予定・報告を共有することを可能とした。

さらに、アカウントプランの変更管理を適切に行うため、アカウントプランの新規作成時や変更時には、ワークフローで複数の承認者・合議先の承認を得なければならない仕組みとした。これにより、ワークフロー上における最終承認を経て初めてアカウントチームのメンバー間でのアカウントプランの共有が可能となったばかりでなく、変更前のアカウントプランが履歴として保存されることともなった。

この結果、従来は現場に任せきりで対応にバラつきが見られた重要顧客に対する営業活動を、アカウントプランに基づいて組織全体で体系的に進められるようになったのである。

システム化の方向性③「受注確度」の向上 ~商談ナビゲーション機能~

前編の振り返り

A社では、自社の営業プロセスを標準化。また営業マネージャーによる商談マネジメントをアウトプット管理からプロセス管理へ変革することによって、受注確度を大幅に向上させた。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

商談プロセス全体の品質と受注確度の向上

組織全体として営業スタッフの能力の底上げを図り、商談の受注確度を向上させる上では、商談を成功に導くために必要な行動を、個々の営業スタッフに漏れなく着実にとらせる必要がある。

そこでA社では、SFA/CRMを用いた「営業プロセスの標準化」に取り組むことにした。具体的には、商談プロセス全体を複数フェーズに分割した上で、フェーズごとに行うべきタスクとそのガイドラインを提示し、顧客に対して訴求力・競争力のある提案をなすために確認すべき項目を営業スタッフに収集・入力させることで、商談プロセスを効果的にナビゲートする機能を実現することとした。そうすれば、これまで優秀な営業スタッフだけの暗黙知にとどまっていた営業ノウハウを、組織全体で標準化・共有化することが可能になるわけだ。

だが、もちろん、ガイドラインや入力項目を定めて営業スタッフに提示しただけで、商談を進めるために必要な情報の収集・入力がスムーズに行われるようになるわけではない。情報の収集・入力を実行させるためには、営業スタッフ向けのトレーニングを定期的に開催したり、日々マネージャーが商談の進捗状況をチェックして指導・助言を行ったりといった、マネジメントを徹底する必要があるのだ。

そうした問題を解決するために、A社では、営業スタッフが滞りなくアカウントにアプローチできているかどうかを素早く確認することが可能なダッシュボード・リポート機能を実現することとした。例えば、「フェーズがダウンしてしまった商談は?」「進行中の商談で過去30日間活動がないものは?」「3回以上スリップしている商談は?」といった現状の課題を、マネージャー向けダッシュボードやリポートによって確認し、フォローできるようにしたのである。その結果、商談が長い間放置されたまま停滞しているといった問題もなくなった。

こうした機能を実現することによって、A社では、営業スタッフの活動量を組織全体として増大させるとともに、商談プロセス全体の品質向上を果たすこともできたのである。

システム化の方向性④「目標管理」の精度向上 ~高精度な受注・売上予測機能~

前編の振り返り

A社では、営業スタッフごとに個人差があった商談の進捗把握や受注確度の判定ルールなどを標準化し、販売目標や見込み値の精度を大幅に向上させた。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

受注・売上予測の精度向上

チャレンジングでしかも実際に達成可能な目標を設定し、その目標を確実に実現していくためには、何よりもまず精度の高い受注・売上予測を行った上で、目標達成状況を逐次追跡しながら、その状況に応じて商談プロセスを精密に調整する必要がある。そこでA社では、SFA/CRMを用いた「受注・売上予測の精度向上」に取り組むことにした。まず、進行中の商談および完了した商談の受注(見込み)金額・受注確度に基づいて、受注・売上予測を自動的に集計し、月別・四半期別の受注・売上予測リポートを組織階層ごとに表示する機能をシステムに作り込むことにした。

精度の高い受注・売上予測を実現する上では、実際の商談に基づいた受注・売上予測が欠かせないが、そこで必要となるのが、「商談フェーズ」と「受注確度」の対応付けである。そのため同社は、商談のフェーズを「初回訪問」(10%)、「初期提案」(30%)、「詳細提案/価格見積」(50%)、「契約交渉」(80%)、「商談成立」(100%)といったように段階に応じて定義し、それぞれのフェーズごとに丸カッコ内に示したようなパーセンテージで受注確度を数値化することによって、標準化を図った。また、目標と受注・売上予測の数値に関しては、社内組織ヒエラルキーの下から上へとそれぞれの部門長(マネージャー)の受注・売上予測を積み上げていくことによって組織内で階層的に管理できるようにした。これにより、それぞれの階層に位置するマネージャーは、直属の部下の受注・売上予測に対する責任と調整権限を明確化させることが可能となった。

実際の商談に基づいた受注・売上予測を行う上においては、さらに、営業スタッフが商談の開始時点で情報を漏れなく入力するとともに、それを商談の進捗状況に応じて正確かつタイムリーに更新していくことが重要となる。そのためA社では、商談の入力・更新運用ルールを策定し、営業スタッフ向けのトレーニングの場でそのルールの順守を徹底的に求めていくことにした。具体的には、商談情報を更新するタイミングを、営業スタッフは毎週水曜日に、マネージャーは毎週木曜日に、といった具合にルール化し、期日までに必ず更新するよう周知・徹底するとともに、月次会議においても受注・売上予測リポートを直接参照することを運用ルールとして定めたのである。

これにより、進捗状況と受注確度とが自発的かつタイムリーに更新されるようになり、精度の高い受注・売上予測が得られることとなった。

システム化の方向性⑤「営業におけるコミュニケーション・コラボレーション」の強化 
~SFAと社内SNSの連携~

前編の振り返り

A社では、ナレッジマネジメントのプロセス定義や専任のナレッジマネジメント推進チームの設置によって、属人的な知識・経験に依存した営業スタイルから脱却し組織能力を強化した。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

コミュニケーション・コラボレーションの強化

アカウントチームのコミュニケーション・コラボレーションを強化することをねらって、A社では、SFA/CRMと連動した社内SNSを導入することとした。社内SNS上でアカウントチームごとにコミュニケーショングループを作ることにより、営業や技術といった部門を超えたアカウントチームメンバー同士の情報共有や意見交換を効率的に行うことを可能にしたのである。

それまでは、顧客との折衝内容を担当の営業スタッフがアカウントチームメンバーにメールや会議で報告していたのだが、それをSFA/CRMと連動した社内SNSを使って報告するルールに変更したわけだ。これにより、顧客情報・商談情報が更新されるたびに自動的にアカウントチームのメンバーに通知されるようになったため、わざわざアカウントチームのメンバー全員が集まって会議を開かなくても、マネージャーや営業部門の同僚、他部門のメンバーは、更新された商談状況に応じて迅速に的確なコメントやアドバイスを担当の営業スタッフに示すことができるようになった。

もちろん、時間と場所とを共有する対面での会議がまったく不要になったわけではないが、会議を開く際にも、会議資料は社内SNS上で共有されており、会議に参加するメンバーは事前に資料に目を通すことができるため、会議時間の大幅な短縮化が図られることとなった。また、アカウントチームの会議で話し合われた内容や資料などのドキュメントもすべて社内SNS上に集約できるようになったことで、前回までの経緯を常に振り返ることができるほか、途中からアカウントチームのメンバーに加わった者も、それまでの経緯を簡単にキャッチアップすることが可能になったのである。

システム化の方向性⑥「顧客訪問時間」の創出 ~SFA/CRMと基幹システムの連携~

前編の振り返り

A社は、営業間接業務のバックオフィス集約などにより、営業スタッフの「顧客訪問時間」を約2倍に拡大した。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

基幹システムとの連携

A社ではこれまで、事業領域を拡大したり新商品・新サービスを開発したりするたびに、それに対応したシステムを個別に構築・運用してきた。その結果、システムのサイロ化(それぞれのシステムが他のシステムと連携せずに孤立してしまっている状態)が発生し、営業バックオフィスの事務処理やシステム運用作業が非効率で高コストなものとなってしまっていた。

具体的には、見積書の作成や契約の登録、請求書の発行などの事務処理がメールや紙ベースで行われており、顧客情報・商談情報を二重三重に入力する無駄や入力ミスによる手戻りが多発していた。また、メールや紙ベースでの事務処理は、情報漏洩やデータ紛失といったセキュリティーリスクもはらんでおり、可及的速やかな問題解決が求められていた。さらに、SFA/CRMで必要となる顧客マスタや商品マスタ、組織・社員マスタのメンテナンスも手作業で行っていたため、マスタの二重管理による運用負荷が発生していた。

そこで同社は、SFA/CRMと基幹システムを連携させ、SFA/CRMから入力された顧客情報や商談情報をしかるべき基幹システムに自動的に送り込むとともに、SFA/CRMで必要となる各種マスタを基幹システムから自動的に取り込む仕組みを構築することとした。これにより、SFA/CRMで入力された顧客情報・商談情報に基づいて見積書作成や契約登録、請求書発行などを円滑に行うことが可能となり、システムの利便性が飛躍的に高まるとともに、営業バックオフィスの事務処理の正確性・迅速性を向上させることができた。

システム化の方向性⑦「顧客への理解・応対」の向上 ~CRM情報基盤による顧客情報の統合~

前編の振り返り

A社は、商品ラインごとにバラバラに管理されていた顧客情報を名寄せ・統合し、顧客情報基盤を構築した。その過程で、SFA/CRMが果たした役割とは。

顧客情報の統合

上述したように、システムのサイロ化によって、A社では顧客情報がそれぞれのシステムでバラバラに管理されてしまっており、顧客対応をする際にも、そのたびに必要な情報を複数のシステムから収集して統合しなければならないという問題があった。そのため、顧客の全体像を把握するのにも多くの労力と長い時間を要していた。それは、コールセンターでの顧客応対などにも時間がかかるということを意味し、最終的には顧客サービスの劣化、顧客満足度の低下という問題にもつながっていた。

そこでA社は、各基幹システムで個別に管理していた顧客情報の名寄せ・統合を行い、それを顧客マスタとして一元管理するとともに、全社的なCRM情報基盤を構築することによって、SFA/CRMで顧客情報の照会を可能にする仕組みを構築することとした。

具体的には、まず、各基幹システムの顧客情報を特定のキーに基づいて名寄せし、統一的な顧客IDを付与した。次いで、企業情報、受発注情報、契約情報、請求情報、サポート/サービス情報などをその顧客IDによって結合することで、チャネルや業務部門において顧客の全体像をあらゆる視点から把握することを可能にした。

これにより、統一的な顧客理解に基づいた顧客対応が可能となり、カスタマーエクスペリエンスを向上させることができたのである。

前編、後編を通して述べてきたような全社的な業務改革とそれに伴うSFA/CRMの再構築によって、A社は業務改革プロジェクトの目標であった「顧客価値の創造」を実現した。そしてその結果、収益の改善を成し遂げ、事業構造を新たな成長分野に合ったかたちに転換させることにも成功したのである。

この事例が、A社と同様の経営環境に置かれて苦しんでおられる企業にとって、事業改革を成し遂げるためのヒントとなれば幸いである。

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