既存スポーツの「コンピューターによる再現」ではない。eスポーツのさまざまなジャンル
それでは、どのようなゲームがeスポーツとして実施されているのでしょうか。ここで注意しておきたいのは、「プロ野球の試合をリアルに再現して楽しめるコンピューターゲーム」のように、「既存のスポーツをコンピューターで再現したもの」が、eスポーツと呼ばれているのではないということ。eスポーツのジャンルには、日本ではあまり一般的でないものも多くありますので、代表的なタイトルとともに紹介します。
シューティングゲーム
銃などの武器で撃ち合うゲームの総称。一人称視点のFPS(First Person Shooter)と三人称視点のTPS(Third Person Shooter)に分けられます。eスポーツのルールではチーム戦が多く採用されています。
格闘ゲーム
プレーヤー同士が格闘するゲームです。eスポーツとして世界的に親しまれている日本のゲームは、この格闘ゲームに多く、「ストリートファイター」などが代表例です。
スポーツゲーム
サッカー、バスケット、アメフットなど実在のプロスポーツを題材にしたゲーム。中には実在しない、架空のスポーツもあります。代表的なタイトルに「FIFA」「ウイニングイレブン」などがあります。
MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)
プレーヤーが見下ろす「マップ」の中で繰り広げられる、チームによる対戦型の競技です。1プレーヤーは1キャラクターのみ操作します。
CCG(Collectible Card Game)
日本ではトレーディングカードゲーム(TCG)という名称のほうがなじみがあるかもしれません。eスポーツの代表タイトルには「Hearthstone」があります。
このように、eスポーツのジャンルは幅広いのですが、いずれも、そのベースには、「プレーヤーの集中力や戦略性によって勝ち負けを競う」というコンセプトがあります。
ハードウェアの進化、通信環境の高速化など、ICTの進化がeスポーツの発展を支える
ゲームのエンターテインメント性が高まるにつれ、画像や音声の処理能力が求められるようになり、ゲーム用のコンシューマー機、いわゆる「ゲーム機」は独自の発展を遂げました。一方で、ゲーム機を使用せずにパソコンでゲームを楽しむユーザーも多くいます。映像や音声など大容量の情報を瞬時に扱うeスポーツがここまで発展してきた背景には、コンピューターの処理能力、グラフィック能力が高まり、ストレージが大容量化するなど、コンシューマー向けのパソコンの高機能化が要因の1つとして挙げられます。
合わせて、インターネット回線のスピードが飛躍的に速くなったため、遠いところにいるプレーヤー同士が対戦したり、チームを組んでゲームに参加したりというゲームシステムが受け入れられやすくなったこともeスポーツ発展の大きな要因です。
ゲームの提供方法も多様化しています。長年、ソフトをパッケージとして販売する形態が主流でしたが、現在ではネット経由のダウンロード販売はもちろん、メディアにダウンロード&インストールすらせずに、配信という形でプレーできるゲームも現れています。また、スマートフォンアプリのゲームからも「クラッシュ・ロワイヤル」など、eスポーツと認められるタイトルが現れています。
図2:eスポーツが発展する背景

VR技術の投入が切り開く、新たな可能性。eスポーツならではのダイナミックな視聴スタイル
eスポーツでは、さまざまな視点から映像を楽しめるのも特長の1つです。これまで、スポーツといえば、スタジアムに足を運ばない限り、テレビカメラの映像を観戦するのが一般的でした。しかしeスポーツでは、特定のプレーヤーの視点に切り替えるのも自由自在。卓越した技術を持つ「プレーヤーの視点」で見れば、よりゲームに入り込むことができるでしょう。ドローンカメラのように競技が繰り広げられている中を自由に移動して戦況を観戦したり、実況したりすることも可能になるのです。これは、テクノロジーの進化がもたらした新しい観戦スタイルといえるでしょう。
さらに、eスポーツとVR(Virtual Reality:仮想現実)技術が融合すれば、新たな世界が広がります。プレーヤーが「リアル」を感じるのはもちろんのこと、観客も同じ体験ができるからです。例えば、アリーナやスタジアムで繰り広げられるeスポーツの対戦を、観客がVR体験できるようにするなど、時間と空間を超えてエンターテインメントビジネスを展開することも可能になるかもしれません。実際、すでにVRゲームを対象としたeスポーツリーグも立ち上がっています。
最新のICTと競技スキルの融合。そこにeスポーツの面白さがある
ICT業界の中でも、「面白いこと」や「刺激的なこと」に特化して成長してきたのがeスポーツの業界といえます。グラフィックやサウンド、傾きや加速度のセンサー、今後はAI(人工知能)や、さらに高速なコンピューティング・テクノロジーなど、最先端の技術を積極的に活用して、さらに進化していくと考えられています。それは言い換えると、BtoCでプレーヤーが使う技術、それを支える基盤としてのBtoBの領域でも新たなビジネスチャンスが生まれているとも考えられます。
eスポーツは、そこに取り入れられた最新のテクノロジーを、プレーヤーが駆使して競い合うところに面白さがあるといえます。テクノロジーだけでも、人間の身体能力や競技スキルだけでもなく、急激に進化するテクノロジーとそれに適応する人間のテクニックの融合が不可欠なのです。
ICTの世界では、どんなに技術が進化しても、それを使うのは人間であるということがよくいわれます。eスポーツはそのことを明確に伝えてくれる新たな競技だからこそ、多くの人からの関心を集めているのかもしれません。
【 制作/コンテンツブレイン 】
2018/07/19
- ※「Twitch」はトゥウィッチ・インタラクティブ・インコーポレイテッドの登録商標です。
- ※「NBA 2Kシリーズ」はテイクツー インタラクティブ ソフトウェア インクの登録商標です。
- ※「ストリートファイター」は株式会社カプコンの登録商標です。
- ※「FIFA」はフェデェレイション・インターナショナル・デ・フットボール・アソシエーションの登録商標です。
- ※「ウイニングイレブン」は株式会社コナミデジタルエンタテインメントの登録商標です。
- ※「Hearthstone」はブリザード エンターテイメント インコーポレイテッドの登録商標です。
- ※「クラッシュ・ロワイヤル」はスーパーセル オーワイの登録商標です。
- ※その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。