COMWARE PLUS プラス・サムシングを大切なお客さまへ

メールマガジンのご登録
賢いはたらき方のススメ
賢いはたらき方のススメ
ポスト
        
        

この記事のPDFをダウンロードする

「宇宙ビジネスは先人の失敗を徹底的に学ぶことで成功につながる」と、宇宙エバンジェリスト(伝道師)の青木英剛さんは話す。宇宙ビジネスは、放送通信やGPS(位置情報)、惑星探査、観測衛星(地球観測 ビッグデータ)、宇宙旅行など大きく分けて4つの市場が注目されており、現在65兆円規模(2021年)で、2040年には100兆円を超えると見込まれている。
技術者として宇宙船の開発に携わり、MBA(経営学修士)を取得してエバンジェリストとして活動する青木さんに宇宙ビジネスの可能性と、宇宙ビジネスでチャンスをつかむ方法についてお話を伺った。

技術者からマネジメントのプロへ。
「宇宙」ビジネスの可能性を広める伝道師

写真:青木英剛さん

―宇宙を舞台にした仕事に就こうと思ったきっかけを教えてください。

青木:中学1年生の時に、宇宙飛行士の毛利衛さんがスペースシャトル「エンデバー号」に乗り込み、宇宙で活躍する様子をテレビで見て、宇宙飛行士になろうと思ったのがきっかけです。しかし、職業として宇宙業界に入るのは競争率が極めて高い狭き門だったんです。どうしたら宇宙の仕事に就けるのかをリサーチし、宇宙ビジネスの本場、アメリカの大学に進学し、大学と大学院で宇宙工学を学びました。

―その後、日本に帰国して、技術者として宇宙ステーション補給機「こうのとり」の開発に携わることになったのですね。

青木:人工衛星の開発を手掛けていた三菱電機に就職しました。学生時代にNASA(アメリカ航空宇宙局)と共同研究をするなどの経験をしていたこともあり、入社後すぐに、「こうのとり」の設計を担当し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の種子島宇宙センターでの打ち上げにも関わりました。そして、2009年に「こうのとり」1号機の打ち上げに成功しました。打ち上げ後の運用も担当したので、設計、製造、試験、打ち上げ、運用までのすべてに携わることができたのが、私の最初の成功体験です。恵まれた環境で、多くを学ぶことができました。

  • 宇宙ステーション補給機「こうのとり」:宇宙飛行士の水や食料、実験装置などさまざまな物資を国際宇宙ステーション(ISS)まで運ぶ無人の宇宙船。三菱電機は頭脳である電気モジュールの開発を担当し、2020年まで合計9機が打ち上げられた。

―その後、技術者からベンチャーキャピタルやコンサルタントへと進む道を変えたのはどうしてですか。

青木:「こうのとり」の開発でもマネジメントで学んだことがたくさんありましたが、当時、国内の大手電機メーカーは大変な赤字を抱えていました。世界での競争で追い抜かれる事態になっていたんです。日本の経営は弱いのではないかと考えるようになり、どうにかしないといけないと思いました。
でも私は技術者で経営の心得はありません。どうすれば飛び級のように経営に関わることができるのかを考えたら、2つ方法がありました。1つは自ら会社を興し社長になること。もう1つは、MBA(経営学修士)を取得して経営のスキルを身に付けて業界に戻ること。2つ目の方法は、階段を何段も飛び越してジャンプするような活躍をする人がたまにいるといわれ、この方法は自分にフィットすると考えたんです。技術者を辞め、2年間学んでMBAを取得しました。これは、私にとって正解でした。丸裸の戦士が突然、剣と盾を手に入れる形になったのです。

―MBA取得後はどのようなステップアップをされたのですか。

青木:戦略コンサルティングファーム、ドリームインキュベータに就職し、そこで、さまざまな技術系の企業の経営者の方にアドバイスしたり、宇宙ベンチャーの支援を進めていきました。

人と人をつなぎ、宇宙へのハードルを下げる。今が大きなチャンス

―宇宙ビジネスのコンサルタントを始めた当時は、国内での宇宙ビジネスはどのような状態でしたか。

青木:宇宙ビジネスの「ビ」の字もない状態でした。国内で宇宙といえば、ロケットの打ち上げをメディアが報じ、JAXA主体で開発を行うことが中心。そこで、宇宙ビジネス先進国のアメリカでの現状をメディアの方々に伝え続け、宇宙は商売のツールとして使える、大きなチャンスなんだということをしつこく啓蒙活動していきました。

写真:青木英剛さん

―世間の反応が変わってきたのはいつごろからでしょうか。

青木:2014年に、アメリカのGoogleが、当時宇宙ビジネスの最先端を走っていたベンチャー企業を買収しました。「IT企業のGoogleが宇宙ビジネスに参入した」と話題になったんです。Googleの地図アプリは、人工衛星の画像を使っています。そのデータはさまざまなビジネスに活かせると想定した買収でした。このことをきっかけに、「今宇宙で何が起こっているんだ」と国内でもざわつき始め、さまざまな企業から、「何が起きているのか」「興味があるので教えてほしい」など、問い合わせや相談が急増しました。

―国内での宇宙ビジネスが動き出したんですね。

青木:当時、宇宙の技術とビジネスの両方を理解してアドバイスできるのは私だけでした。さまざまな業界の方が会いに来てくれたんです。このことを、「エバンジェリスト的な活動だね」といわれ、“宇宙エバンジェリスト”と名乗り、商標登録して活動をしていこうと決めました。

―宇宙エバンジェリストとして具体的にどのような活動をされていますか。

青木:宇宙ビジネスの可能性をさまざまな人に伝えて広めていくことを使命としています。何かやりたい、宇宙ビジネスに参入したいと思っていても何から始めていいかわからない人の後押しができる応援団という立場が必要だと思っています。私の場合は、企業のトップをはじめ、ベンチャー企業の支援、そして、幼稚園児からおじいちゃん、おばあちゃんまで、さまざまな世代や業界、立場の方にお伝えしていくことが重要だと思って活動しています。学校での授業や企業での講演、教育に関しても携わってきました。

―活動範囲が大変広いですね。

青木:ポリシーの1つとして、本気の人には本気で向き合います。本気で起業したいとなれば、いくらでも相談にのります。納得のいくまでサポートし、マッチングも行います。仲人のようなものですね(笑)。おじいちゃん、おばあちゃんに宇宙の魅力を伝えることも大切だと思っています。お住いの地域に将来ロケットの港ができるかもしれない。地域が活性化するように応援してほしいので。

―宇宙エバンジェリストとして活動をスタートして8年経ちますが、環境は変化しましたか。

青木:スタート当初は、うさん臭いと思われていました。エバンジェリストといってもすぐに活動内容がわからないですよね。当時、宇宙ビジネスはアメリカのイーロン・マスク氏が立ち上げたスペースXほどの大規模にしないと無理だろうと思われていたんです。ですからお話をしても「夢のようなこと」と思われるのが普通でした。現在は、国内に宇宙ベンチャーも増え、海外から発注を受ける企業もあり、宇宙ビジネスが認知されてきたおかげで、いろいろな方が調べてアプローチしてくださるようになりました。

次ページ 宇宙ビジネスは現代の生活に欠かせないツール。参入しない手はない

ポスト

事例紹介

スマートフォン用リンク

エバンジェリストが語るICTの未来

スマートフォン用リンク

ページトップへ

トップへ