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「おもしろいことを思いつく」―。自分の得意技を作品に生かす

―つまらないと感じるアイデアでも小さな改良を重ねていくことで、いい結果へとつながっていく、というのはどんな仕事にも通じることだと思います。今はご自身の作品に満足していらっしゃいますか?

古沢:いいえ、全く満足していません。いつもうまくいかなくて、書き終えた直後はだいたい落ち込んでいますよ。やり始める時は、すごくおもしろいものができるという自負があるんですが、自分なりに目指したものに届かず終わってしまう。では、どうすればよかったのか、次はこうしてみようと、毎回リベンジのつもりで次回作を書いているような感じですね。

―多くのヒット作を生み出し、演じる俳優の新しい魅力も引き出す脚本家の言葉にしては意外です。

写真:古沢良太さん

古沢:時が経てば、あれはあれで良かったのかなと思うこともありますけど、そもそも自分は脚本家に向いていないかもしれないと思ったりもするんですよ。僕の得意技は「おもしろいことを思いつく」ことで、それが一番自分らしいと気づいたので、それを生業にできないものかと模索中です。脚本を書く時も、「こんなドラマがあったらみんな楽しめるんじゃないかな」と考えて、なるべく制約をつくらずに、おもしろそうなことを自由に発想して楽しみながら書くことを心がけています。脚本がおもしろければ、俳優さんがその役の魅力を十分に引き出してくれるし、撮影現場も楽しい雰囲気になりますから。

―俳優陣が古沢さんの想像を超えた演技をされることもあるのでしょうか?

古沢:それはよくあることです。生身の俳優さんにはやはり抗いがたい魅力があるので、登場人物が当初想定していたキャラクターとは別人のようになってしまうこともあります。そうやって、いろんな人のセンスが混ざり合って出来上がっていくからドラマや映画はおもしろくなると思うんです。作品を評価するのは見る人ですし、制作サイドはどうしたらおもしろくなるかを本気で考えているわけですから、自分の脚本が変えられることに抵抗はありません。

―映画、ドラマの他に舞台や小説など多方面で執筆されていますが、これまでにない新しいジャンルへの挑戦はお考えですか?

古沢:そうですね、既存の脚本の形式にとらわれない、漫画に近く小説にも近い形の表現方法を生み出したくて模索中です。今の時代は個人でもネットを通して発信や発表がしやすくなりましたから、脚本という手段以外に、もっと効率よく自分のやりたいことを実現できる表現方法があるんじゃないかと思っているんです。すごく漠然としていますが、僕が持っている「おもしろいことを思いつく」力を100%出し切れるような「何か」をずっと求めている感じですね。

―個人でも手軽にライブ配信ができたり、IoTやAIの発展によって幅広い領域でサービスの連携が進みつつある時代ですから、今までになかった新しいマーケットでの表現方法が実現するかもしれません。

古沢:手段や経路がいくらでもあって、今の若い人たちがうらやましいです(笑)。僕が10代の頃にこういう環境だったら、もっといろんなことをやっていたでしょうね。脚本家も昔はプロに弟子入りするところからのスタートだったと思いますが、今はネットで作品を発表することができるし、内容がおもしろければ共同作業者を募って映像化もできます。やりたいことに情熱を注ぎ、それが利益につながれば一番いいですよね。今はアイデアさえあれば、自分からチャンスをつかめる時代だと思いますよ。

取材後記

例えば「ここをもっとこうやった方がおもしろくなる」と監督から脚本の直しが入った時、古沢さんはこう考える。「おもしろいと感じたのはあくまで僕の感覚=センスなので、それを無理に通したところで、監督がそのおもしろさを表現(演出)するのは難しい。結果として、そのおもしろさは見る人に伝わらない。だったら、自分が書いたものにこだわらず、監督に任せた方が絶対にいい。監督が心からおもしろいと思って演出すれば、見る人に伝わるから」。物語をつくる人、キャスティングする人、演出する人、演じる人…と立場は違えど、それぞれがプロ。だから、任せるところは任せる。自分の得意技を作品にストレートに生かすためにも、自分の役割を理解し、相手の仕事に敬意を払い、尊重する。ドラマや映画の製作現場だけでなく、チームワークでものづくりをする人間が忘れてはいけない大切なことを再確認した。

プロフィール

古沢良太(こさわ・りょうた)
1973年神奈川県生まれ。東海大学卒業。第2回テレビ朝日新人シナリオ大賞を受賞して2002年脚本家デビュー。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。テレビドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』など人気作品多数。舞台作品や小説も手がける。2019年5月17日から映画『コンフィデンスマンJP』公開予定。

2019/3/7

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