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「孤聴化」という多様化の中でも変わらない、魅力のアーカイブ

―亀田さんが音楽業界に入られた頃から30年の間に、音楽を取り巻く環境は大きく変わりました。フェス形式のライブイベントが定着し、AKB48のようなアイドルが登場し、そして音楽の聴き方もCDからダウンロード購入や定額ストリーミングに移行してきましたが、そのような変化をどう受け止めておられますか。

写真:日比谷音楽祭ロゴ

亀田 :悪い方向への変化は何も起きていないと感じているし、このように変化していくことを僕はごく自然に受け止めています。子供の頃、我が家にカセットテープレコーダーがやってきた時は、なんて楽しいものがあるんだろうと喜びましたし、アナログレコードからCDになった時も、いい音になったと感動して、500枚ほど持っていたレコードを全部処分したくらいです。

 そんな僕でも今はもうCDを買わなくなって、SpotifyやApple Musicなどの定額ストリーミングで音楽を聴くようになりました。定額料金を徴収して音楽ストリーミングを提供するというサブスクリプションモデルを素晴らしいとも思っています。なぜならロングテールだから、古い音楽から新しい音楽まで、膨大なライブラリーをいつでもどこでも体験できるようになります。

 ただ、個人のスマホアプリでヘッドフォンで聴くスタイルになってから、みんなで音を聴くという習慣は圧倒的に減ったと思います。僕は「孤聴化」と呼んでいるんですが、それも音楽への入り口や聴き方が多様化しただけと考えれば、悲観するような変化ではないと思います。

 ただ、こうして聴き方が変わる中で「誰もが自由に音楽を楽しめる場をつくりたい」、例えばニューヨークのセントラルパークでは、夏の間ずっと無料コンサートが楽しめますが、日本でもそうした親子孫3世代でさまざまな音楽を聴いて楽しめる文化を根付かせたいという思いから、東京の中心・日比谷で入場無料の『日比谷音楽祭』を開催することになりました。異なる世代がボーダーレスに音楽と触れ合い、音楽を応援する人が増えていってほしい、新しい音楽の入り口になってほしい、そんな願いも込めて企業からの協賛金、行政からの助成金、一般のサポーターからのクラウドファンディングで開催する、みんなで作る音楽祭です。

―音楽の聴き方が変わることで、作り方も変わりましたか?

亀田 :僕は変えていません。曲作りで意識しているのは、ミュージシャンがどれだけいい音でいい演奏をしているか、その一点だけです。ただ、聴き方が変わることでミリオンヒットが生まれにくくなり、流通量の減少によって音楽業界で動くお金の規模は10年前に比べてもかなり縮小しています。その影響で制作費が削られ、スタジオを使わずにコンピューターでレコーディングする方法が世界中で主流になっていると思います。

 誰もがコンピューターを使い、コンピューターに搭載された音を使って曲作りをして、制作過程が似てきているので、肌触りが似た音楽が増えてきましたね。

―亀田さんはプロデューサーとして、どのようにアーティストや楽曲の魅力を引き出すのでしょうか。

亀田 :まず、自分自身が魅力的なアーカイブをたくさん持っていないと、他人の魅力は引き出せません。僕は本当に幼少の頃から音楽が大好きで、ヒットチャートを欠かさずチェックし、そこから関連するアーティストや楽曲をさらに掘り起こしていく作業も楽しんでやっていましたから、とにかく自分の中にたくさんの音楽的アーカイブがあるんです。ポップス、ロック、クラシックもジャズも、ジャンルを問わずに膨大な蓄積があるからこそ、アーティストや楽曲の魅力を見逃さずに「これ、いいね」と言えると思うんです。

 もう一つ、魅力を引き出すためにはアーティストの話をよく聞くこと。プロデューサーの仕事の半分はヒアリングです。

―アーティストやミュージシャンの方は、どちらかというと言葉よりも感性を重視するイメージがありますが、言葉の行き違いが生じることはありませんか。

亀田 :本人が言っていることをよく聞いていると、おもしろいことに、自分がこの人と何をやりたいのか分かってくるんです。まず相手からパスを受け取って、それを大きくスルーパスしようか、それとも小刻みにパスをつないでいくほうがいいか、みたいなことが話を聞くことでだんだんと見えてくる。だから、じっくり話を聞くことが楽しくて仕方ないですね。

チームワークを向上させる秘策は、認め合ってチームの熱量を上げること

―音楽制作の現場ではチームワークも重要だと思いますが、よりよいチームワークで作品作りをするために工夫されていることはありますか。

写真:亀田誠治さん

亀田 :組みたいチームを自分から作ること。そこは妥協しません。参加してほしいミュージシャンは第一候補だけに声をかけます。その人のスケジュールが合うまでやらない。高飛車に聞こえるかもしれませんが、こちらがそれだけの情熱を持って依頼すると先方もスケジュールをなんとか合わせてくれるんです。エンジニアやコンサートスタッフでも同じです。「あなたとやりたい」ということを、情熱を持って表明します。チームワークを良くするためには、信頼できるチームづくりが必要なので、妥協しない布陣を敷くことが大事なんです。

 あとは、チームの新陳代謝を止めないように、若い世代や初めて組むメンバーのことも、きちんと認めること。本当に合わない場合は、いずれ自然と離れることになりますから、その時は深追いをしません。

 チームとして動き出したら、良いアウトプットを出している人に対して、必ず「いいね!」というメッセージを発信するよう意識しています。そうすることで組織の熱量が上がるんですよ。一般的に組織で動こうとすると、みんな「これがダメ、あれがダメ」と文句ばかり言い合うんですよね。僕もダメ出しはしますが、同時に代案を出します。「何か違う」という言い方をすると、改善を要する点が正確に伝わらないので避けるようにしています。

―チームワークの他に、働き方において大事にされていることはありますか。

亀田 :僕の仕事は大きく分けて2つ。ライブ演奏も含め音楽制作の「現場」に立つことと、プロデューサーとしてさまざまな立場の人と会って話すこと。歳を重ねるごとに組織をコントロールする立場になったり、テレビやラジオの番組を持ったりしたことで後者の時間も増えてきました。ただでさえ1日の現場が2本立て、3本立てといった具合なので、宿題は持ち越さないよう朝のうちに済ませてしまいます。

 例えばメールのチェックと返信や、その日の仕事の下準備などは早起きして片付けてしまいます。「あれをやっておかないといけない」というタスクは終わらせているので、現場で余計なことを考えずに集中できるんです。僕はレコーディング中に、自分のPCやスマホを開くことはしません。アーティストが真剣勝負をしているのだから、僕もその時間は相手との仕事に集中する。宿題を済ませているからこそできるんですね。

 だからといって無理をしているわけではありません。徹夜はしないようにして、体内時計が狂わないように朝は決まった時間(5時〜7時)に起きるようにしています。職業柄、体内時計を壊してしまい心身ともに疲弊した人をたくさん見てきているので、自分なりに考え出した生活スタイルです。夜遅くまで頑張るより朝早く起きたほうが、体内時計をもとに戻すのも楽なんですよ。

―若い世代のスタッフやミュージシャンとも幅広くお仕事をされていますが、仕事をする上で伝えたいこと、アドバイスなどはありますか。

亀田 :心と体が壊れない程度に、ゆるやかに頑張ることですね。やるべき時には頑張って休むべき時には休む、メリハリのある働き方が今の時代は大事だと思います。無理のない範囲で本業以外に興味のあることに取り組んだり、ダブルワークもいいんじゃないですか。さまざまな角度から社会や物事を見る機会を持つことで、本業にも良いフィードバックが期待できると思います。同時に、社会人として常に信用される人であること。挨拶から始まり、失敗したら素直に「ごめんなさい」と謝罪してリカバリーに注力するとか、時間や締切を守るなど、社会人としての常識は身につけておく必要はあります。

 それから、仕事がうまくいかなかったり失敗した時に、上司や周囲から厳しい言葉をかけられることもあると思いますが、あくまでも仕事上での失敗を指摘されているのであって、自分自身が否定されているのではないことを忘れないでください。僕はいつも「ミスを憎んで人を憎まず」と言っているんです。バンドをやっていたら、ミスや失敗なんてしょっちゅうありますからね。

―最近ではアイナ・ジ・エンドやヤバイTシャツ屋さんといった、若いアーティストとのコラボレーションを全力で楽しんでいらっしゃるようにお見受けします。

亀田 :よく「若い者にはまだまだ負けない」なんて言う人がいますが、「若い世代には常に負けている」というのが僕の持論です(笑)。やっぱり新しいものを生み出すのは若い世代であり、最後に勝つのは若者だと思うんです。僕は自分が持っている知識や技術を全て次世代に渡していきたいとも考えているので、若い世代とも積極的に向き合っています。

 音楽ストリーミングサービスや配信サイトの登場で、個人のアマチュアでも楽曲を世界に向けて配信できるようになり、今や音楽コンテンツ産業は全世界と地続きです。新しいプラットフォームを活用して彼らが世界に羽ばたいていくのは間近だと思うし、流入してくるコンテンツの多様性を受け入れるのも彼らは早い。僕たちベテラン世代も、そういう柔軟性は見習いたいですね。

プロフィール

亀田誠治(かめだ・せいじ)
1964年ニューヨーク生まれ。早稲田大学卒業。音楽プロデューサー/作曲家/編曲家/ベーシスト。2007年第49回、2015年第57回日本レコード大賞・編曲賞を受賞。ミリオンディスク4作品、プラチナディスク44作品、ゴールドディスク66作品がそれぞれ認定されている。
今年新たに開催するフリーイベント「日比谷音楽祭」https://hibiyamusicfes.jp(2019年6月1,2日)では実行委員長として全体プロデュースを行う。クラウドファンディングで支援者募集中!(2019年6月2日迄/一部5月15日迄 終了済)
https://www.securite.jp/project/hibiya

2019/4/22

  • ※ 記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

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