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学ぶ機会は逃さない。得るものが多く、ムダはない

写真:小宮山悟さん

―プロ現役時代に早稲田大学大学院へも進学され、修士課程を修了されていますが、どのようなきっかけがあったのですか。

小宮山 :ニューヨーク・メッツを退団して帰国した2003年に、1年間、野球評論家として活動しました。この時はまだ現役を続けるつもりでしたが、球団からのオファーがなかったのです。いわば、就職浪人です。どうしようかと石井さんに相談にいったところ、「金銭的にも時間的にも余裕があるならもう一度学びなおせ」とアドバイスをいただきました。

 いつか指導者として野球にかかわる可能性も考えて、スポーツ科学を学びたいという思いもあったので、スポーツ科学部の研究室に研究生として籍を置き、学ぶ機会を得たのです。1年後、ボビー・バレンタイン監督が再び千葉ロッテマリーンズで監督を務めることになり、僕もまたユニフォームを着ることになりました。

―現役に復帰してからも研究室に通われていたのですか。

小宮山 :いろいろ学んだことがムダにならないように、研究室に籍を置いたまま、現役に復帰しました。定期的に通うのは難しいので、メールで頻繁にやり取りして3年間科目を履修して、その後、スポーツ科学研究科が新たに設けられたため、試験を受けて2006年から大学院生になりました。

 院生時代は、試合の移動日(月曜日)に、研究室がある所沢に行っていました。プロ野球選手としての活動がメインでしたから、移動日でも毎週通うことはできません。課題が出たときは、移動の新幹線のなかでメールのやり取りをするなど、野球選手としての生活のルーティンのひとつにはなっていました。とにかく得られるものがたくさんありました。そして、2008年に修士課程が修了。プロ野球選手を引退したのは、翌2009年です。

―プロ野球界屈指のJリーグ通、柏レイソルサポーターとしても知られ、引退後はJリーグ非常任理事も務めていらっしゃいますが、理事としての活動はいかがでしたか。

小宮山 :組織というのはこういうものだということを目の当たりにしました。日本サッカー協会の中でのJリーグの立ち位置、メディア対応、クラブの運営方法、リーグとしての考え方が末端まで浸透していること、理事会での質疑・議論の闘わせ方、そしてチェアマンのリーダーシップまで、現場で直接関われたのはとても大きなことでした。もちろん、競技が違うので異なる部分があるのは当然のことですが、野球界とは明らかに違う。大変勉強になりました。

自分の中で軸がぶれなければ、教えはすべてプラスになる

写真:小宮山悟さん

―プロから学生野球の監督に就任されました。監督として母校に戻ってきましたね。

小宮山 :OB会からオファーをいただいて受けたのは即決でした。4年間お世話になり、19年もの長い間プロ野球選手として携われたのも早稲田大学野球部のおかげという思いがありましたので、恩返しをしたかった。そして、僕の中で監督になる準備は出来ていました。

―現役時代に刺激になった、参考にしたい指導法などはありましたか。

小宮山 :ロッテ時代にお世話になったボビー・バレンタイン監督の指導法は、とにかく野球を楽しめということを前面に出したやり方でした。チームがどう戦うかの判断を下し、結果を受け入れて全責任を負うのが監督。その過程で絶対にぶれず、チームとして戦うことにこだわったのが、バレンタイン監督でした。

 僕も自分の中で軸がぶれないのが一番大切なことだと思います。軸さえぶれなければ、いろいろな要素を取り入れるのはプラスに働くものです。現役時代を振り返ると、僕が教えを受けた監督の指導の仕方はすべて自分の糧になっていますね。だから、各監督のいいとこどりをして、学生の指導に当たっています。

―現在の早稲田大学野球部は100名以上在籍しているとうかがいました。全体を見るのは大変なことですね。

小宮山 :グラウンドでの対応を見て指導法を判断します。パッと見た瞬間で、必死に練習をしているかどうかは一目瞭然です。そういう学生は、ある一定のレベルまで引き上げてあげるのが監督の仕事です。

 そもそも、ユニフォームを着て神宮球場の試合に出たいという思いを持っている人間しかいないと思っています。でも、自分がレギュラーになるのは難しいと思っている学生もいるでしょう。しかし、少しでもうまくなりたいと思っているなら、その思いは絶対に伝わります。必死にもがいていれば、こちらも真剣にそれに向かい、彼が思っている以上のレベルまで実力を付けられるように指導します。その学生が何を求めてどの方向にいこうとしているのかをしっかり理解することが大切だと思っています。

 学生には4年間を自らの信念をもって行動し、卒業した後に早稲田大学野球部でよかったと言ってもらえるように指導していきたいです。

壁の乗り越え方は人それぞれ。自分なりの方法に気づけば成功につながる

―指導をしていて難しい部分はありますか。

小宮山 :今は何から何まで手ほどきをするものが多いですよね。しかし、それが正しいかどうかは分かりません。卒業したら厳しい社会に身を置くわけですから、手ほどきをして、それができたつもりになってしまうのは危険。何か壁にぶつかったときに自分自身でいかに乗り越えるかが重要なことだと思います。誰かに言われて行っただけの成功体験は、本当の成功体験ではありません。

 壁の向こうに面白いことがあると思った時、いかにその壁を乗り越えるかは人それぞれ。正攻法で打ち破る人もいれば、卑怯な手を使う人も、隙間を探して横にいったり、地面を掘る人も。はしごを持ってくる人もいるかもしれません。それらはすべて個性です。ですから、壁の乗り越え方を指示することぐらい馬鹿らしいことはない。自分で気づくことが大切で、何とかしてやろうと思える人は成功します。その部分をいかに気づかせてあげられるかですね。

―コツをつかむということでしょうか。

小宮山 :自転車に乗れるようになったときの感覚で例えることができます。毎日努力を繰り返していてもなかなかバランスが取れなかったのに、ある時突然乗れるようになる。そのタイミングは人それぞれです。でも乗れるようになると、20年経っても忘れずに乗ることができます。それは、偶然できたことではなく、そうしようと思って努力を積み重ねてきたからできたこと。コツをつかんだのです。

―それはビジネスの現場でも日常であることですね。コツをつかむことは賢く働くことにもつながりますね。

小宮山 :僕は賢い働き方ができるタイプではないと思っています。ムダなことを省きたいのにムダだらけ。まわり道も良いものですが、それは、自分が得ようとしている以上のものも得ることができたから。今まで見られなかったものを見ることができて、視野が広がりました。

 人生は一度しかないので、最短でゴールにたどり着くのは良いかもしれませんが、最後に人生を振り返った時に、つまらない人生だったと思うよりは、いろいろなところに寄り道していろいろ経験したほうが豊かな人生だったと思えるのではないでしょうか。僕はいろいろな経験をさせてもらっているのでかなり幸せですね。

―寄り道した分、経験値が増えるということですね。ご自身で考える「働く」の基準はありますか。

小宮山 :好きなことで飯が食えるのは恵まれた人でしょう。ただ、そうでなくても、仕事に対して興味がないのはいけないと思います。仕事なのでつまらないこともある。けれども、つまらない・苦痛が49%あっても、残りの51%が楽しいと感じられれば大丈夫。ただし、苦痛でしかなく、面白い、楽しいという思いを持てないのであれば、今すぐ辞めて転職すべきだと思います。

 もちろん、簡単に辞めるのではなく、一度はとどまってちょっと頑張ろうという気持ちがないと何をやってもダメです。頑張って何か楽しいこと、面白いことを見つけられれば、その先にはいろいろな成功が待っていると思います。

小宮山悟さん

取材後記

小宮山さんは、「浪人時代には、悪魔ととても仲良くなってしまった」「つらいことが49%でも、楽しいこと、面白いことが51%あれば頑張れる」など、自身の経験を客観視している印象だ。常に自身を俯瞰して眺めながら、決して「隙を見せない」という姿勢は、体験談の要所要所にも感じられた。強い信念を持って行動しているからこそ今がある。まわり道をしても、経験を積んでいけばマイナスをプラスに変え、成功へ導くことができるのだということを、小宮山さんは体現している。

プロフィール

小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年生まれ。芝浦工業大学柏高等学校卒業後、2年間の予備校生生活を経て、早稲田大学に進学。1年生からレギュラーとして活躍し、4年生で主将を務める。六大学リーグ戦での通算成績は20勝10敗。ドラフト1位指名でロッテ・オリオンズ(現:千葉ロッテマリーンズ)に入団。1年目からローテーション入りし、97年最優秀防御率賞を獲得した。2000年から横浜ベイスターズへ移籍。2002年にFA宣言し、ニューヨーク・メッツと契約。2003年に帰国後、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学。「投球フォームに関するバイオメカニクス」を研究。同時期に野球評論家などを務めた後、2004年から再び千葉ロッテマリーンズと契約。2008年に早稲田大学大学院修士課程を修了。2009年に現役を引退。2014年にはJリーグの非常任理事を務める。2019年1月から、早稲田大学野球部監督に就任。

2019/6/14

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