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自分の未来を、ベスト・ワースト・ニュートラルに分けてシナリオを作る

写真:原 夏代さん

―前職は銀行員だったとおうかがいしていますが、キャリアチェンジして、一から公認会計士の勉強をされたきっかけはなんだったのでしょうか。

:学生時代はバブル全盛期で、キャリアをまじめに考えずに就職活動を始めました。始めてからようやく社会では男性と女性でキャリアの積み方や職種が違う、差があるんだと気づいたんです。最初から可能性を狭められるのは嫌だと思っていたので、総合職がある銀行を選びました。入行してから、「あれ?私の性格に合っていないかも」と思い始め、2年目に海外研修の応募があり、英国へ留学しました。英国では投資顧問会社に預かってもらう研修で、そこでファンドマネージャーのチームに入ったのです。そこがターニングポイントでした。

 ファンドマネージャーにいろいろと話をしていくうちに、「君はそんな働き方でいいのか」と言われ、「人生のシナリオを考えなさい」と。当時、研修として、株に投資するときのベスト、ニュートラル、ワーストパターンのシナリオを考えるという課題があったのです。

 4か月の研修が終わり帰国したのち、改めて自分のシナリオを考え、ワークライフバランスをとるために手に職をつけようと考え直しました。総合職の同期で、先に退職して公認会計士になった方から、「ならば公認会計士の資格取得の勉強をしてみては」と助言されて、ゼロから勉強しなおしたんです。

―公認会計士になるというシナリオは原さんにとってベストシナリオだったんですね。

:当時のシナリオではベストです。しかし、当時は転職することは大変リスクの高いことで勇気のいることではありました。

写真:原 夏代さん

―これから必要なワークライフバランスはどのようなことだと思われますか。

:ベストセラーになった『ライフ・シフト』※という本に、人生100年時代になるにあたって、今までのロールモデルのように、教育を受けて、就職して、定年を迎えて隠居するという3ステージではなくなると。もっと長いステージでモノを考える必要があると読んで、共感しました。

 人生を長く生きる中で、みんなが一斉に就職してキャリアを築いていくことは変わってくるだろうと思います。さまざまなバックグランドを持った人たちとうまくコラボレーションして、それを自分の強みに変えて、いろいろなステージで働く期間もいろいろあっていいと思います。私のように一度仕事を辞めて勉強しなおす期間があってもそれはマイナスにはならないように。

 これからは、年齢は関係なく、個人個人で違うキャリアを築いていくでしょう。人事制度もニーズに応じた形になっていき、長い目でいろいろなステージを見る必要があると思います。子供がいるなら、どうやって育てるかという話を自由な発想でできるようにしたいですね。

 私と同世代の女性の娘さんがご結婚されたのですが、その女性は、娘さんの子供、つまり孫を育てるために育児休暇が欲しいと言っていました。なるほどと。私も母、つまり娘のおばあさんに育児をサポートしてもらいました。母は専業主婦でしたが、いまは、おばあさんもまだ現役で働く方が多い。私同様、おばあさんにサポートをしてもらいながら働く女性も多いと思います。そうなれば、もしかしたら、キャリアを積み上げているおばあさん世代のほうが育児休暇は取りやすいかもしれません。

 今までのやり方は通じなくなって、新しいことを考えないといけない。その変化もめまぐるしくなっていくと思います。

※『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著 池村 千秋訳 東洋経済新報社

―原さんの今後のステージはどのようなシナリオがありますか。

:以前は、子供が大学へ行くころに、私も会計学や監査を専門的に学びたいと思っていたのですが、現在は、大学時代に専攻していた心理学をあらためて学びなおしたいと思っています。行動心理学や組織心理学、カウンセリングについてなどを学べば、今の仕事にも活かせるなと。

 セカンドライフでは、人に貢献する活動もできるようになりたいですね。自分の経験を若い人に伝えられるようなことができるといいなと思います。

D&Iの未来は、あって当たり前に。女性がリーダーでなくてもいい

―D&Iは現在世界で盛んに叫ばれていますが、最終的なゴールはどのようになっていると思われますか。

:最終的な着地点は、多様性を力に変えてプロフェッショナルとして切磋琢磨していける未来です。D&Iが実現されて普通のことになれば、私の役割は要らなくなります。それが理想です。そうはいっても、新たな解決すべき課題は出てくると思います。今は、D&Iのリーダーは女性が多いのですが、男性だったり、インターナショナルメンバーだったりが自然とD&Iリーダーになっているのも良い形ですよね。

 一人ひとりがD&Iを自身の強みとして確立しているリーダーになって、日々意識して行動できれば、その時々で重要な課題も分かると思います。個人の多様性を歓迎し、受け入れ、互いに尊重し、一人ひとりが成長を実感し、活躍できる環境をゆるぎないものとするために、常に新たな課題にチャレンジしていくだけです。

原 夏代さん

取材後記

世界規模のグループの中でリーダーを担っている人はどんな人だろうとインタビューに臨んだが、部屋に入ってきた女性は、とてもやわらかい印象だった。穏やかな雰囲気でインタビューは始まった。就職活動を始めるまで、職種や待遇に男女差があることに気がつかなかったなど、自然体で話してくれるところが安心感があり、相談しやすい頼れる上司という印象を受けた。英国に留学していた時、仕事も人生も両方を目いっぱい楽しむ、人にはあまり干渉しないという英国の人々の生活を目の当たりにして、驚きと発見がたくさんあったのだという。留学時代の気づきがたくさんあったから、今意識して大きなミッションに取り組めるのかもしれない。D&Iを推進する部署がなくなる未来に向けてのチャレンジを応援していきたい。

参考:デロイトトーマツグループのダイバーシティ&インクルージョン

プロフィール

原 夏代(はら・なつよ)
上智大学卒業。銀行勤務時代に英国研修がターニングポイントとなり、退職して会計士を志す。1995年に監査法人トーマツ入社。2018年からデロイト トーマツ合同会社及び、有限責任監査法人トーマツのボード議長室長を務め、グループと監査法人のガバナンスの向上に貢献。同年11月よりデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社 Corporate Management Co-Divisionリーダーを兼務。2019年6月からデロイト トーマツ グループのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)リーダーを兼務。11月より専任としてグループのD&Iの施策を推進している。

2020/03/30

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