- 【失敗例1】オンプレ型は性能と価格のバランスが……
- 中堅商事会社のA社では、常に「人材が財産」と公言しており、働き方改革にもいち早く取り組んできました。たとえば営業担当者にはノートPCを持たせ、空き時間にメールを確認したり、出先で営業報告書を入力したりすることで、直行直帰も認めていました。さらに同社では、施行が本格化する「働き方改革関連法」に向けて、ノートPCにデータが残らずセキュリティを強化できる「仮想デスクトップ」の導入をトップダウンで決定しました。
そして、3カ月のトライアルを経て、営業担当者数十人が仮想デスクトップの利用をスタート。しかし、「動きがのろい」「アクセスに時間がかかる」と不満の声が一斉にあがってきました……。
これをベンダーに告げると「性能は十分なはずですが……。それではサーバーを強化しましょう」と出された見積りが、想定をはるかに超える金額でした。これにもベンダーは「性能を上げるにはサーバー強化しかありません。これは当然のことです。」と開き直ります。トップは頭を抱えてしまいました。
- 【教訓1】オンプレ型は高価!「時間」と「コスト」と「技術力」が必要!
- 低コストでオンプレ型の仮想デスクトップを導入しようとしたり、既存のサーバー環境そのままで快適なクライアント性能を求めるのは現実的ではありません。また、たとえサーバーに余力があっても、簡単には見直しができません。見直しにはコストはもちろん技術力も必要となります。社内に技術力がないと外部のベンダーに協力を依頼することになり、ここにもコストがかかります。多くの効果が期待できる仮想デスクトップですが、コストと技術力を甘く見てはいけません。
- 【失敗例2】 即戦力に期待してクラウド型(DaaS)に挑戦したが……
- 老舗の製造業B社は国内トップクラスの技術力を持つ有名企業です。そんなB社ですが、「人材難」が大きな課題となり、人集めに苦労するようになりました。残っている優秀な人材も高齢化が進み、社内改革が迫られていました。
そんな同社が取り組んだことのひとつが、技術者へのスマートデバイスの提供。外部に出ることの多い技術者にタブレットPCを持たせ、外出先で製造システムにアクセスしたり、チェックシートに入力したりできるようにしました。在宅勤務も含めたスマートなワークスタイルで、若者の離職を防ごうという狙いです。
もうひとつはコアコンピタンス領域への人材投入。間接部門の人間を営業や製造分野に回すことで、当面の人材難をクリアしました。
このため、システム管理者はついに1人に……。いわゆる「ひとり情シス」となってしまったのです。ここでB社のとった対策が、クラウド型仮想デスクトップ(DaaS)の採用です。仮想デスクトップですから、スマートデバイスでも活用できます。加えてクラウド型ですから、システム管理者の運用を大幅に削減でき、システム管理者の稼働を極小化した導入・運用を期待できます。確かに、運用開始は短期間でできますし、初期コストもリーズナブルでした。ところが、性能が全く確保できません。ここでやっとシステム管理者に連絡が入りました。
「当社の製造システムの仕組みにDaaSは重い。仮想デスクトップの性能は慎重に検討する必要があるのに……。」と情シス担当者は驚きました。自力はとてもカバーできませんからベンダーに相談しましたが、運用の面倒まで見ようとは考えていないようです。コミュニケーションも満足にとれません。「スマートではない……。」製造部門は大いに反省しました。
- 【教訓2】 クラウド型ではサポートが充実したベンダーを選ぶこと!
- クラウド型において、一貫して必要なのはベンダーのていねいなサポートです。導入前には利用用途に適した仮想デスクトップの導入が可能であるかの検討が十分に必要です。きちんと導入後の利用イメージを描けることを確認してから、スモールスタートで運用を開始します。その際の横展開もベンダーと相談の上、検証を重ねながら実施することが必要です。
サポートを期待できないベンダーも確実にいますが、それが悪いことではありません。そのようなベンダーの姿勢は、価格に反映され、確実に低価格になっています。必要なのは自社の要件に応じてコストとサポートを見極め、コストよりも性能を重視する場合には、仮想デスクトップ導入をしっかりサポートしてくれるベンダーを選ぶことです。
- まとめ ベンダー選びは慎重に!
- オンプレ型は高コストです。時間も技術力も必要です。これを解決するものとして開発されたのがクラウド型ですが、コストだけではなく、ベンダーのサポートをしっかりと確認することがオススメです。アセスメントは十分にしてくれるのか、導入支援はていねいか、運用後のサポートは万全か、を確認しましょう。
仮想デスクトップは働き方改革を推進していくために有効なツールです。働き方改革を実現し、従業員に利便性の高いPC環境を提供していくためには、ベンダー選びを慎重に行いましょう。