
- シンクライアントの意味と注目されている背景は何だろう
- シンクライアントのメリットとデメリットを整理したい
- シンクライアント環境の仕組みや端末の種類を知りたい
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、テレワークが急速に普及しました。
テレワークを実現する環境の1つがシンクライアントです。
本記事では、シンクライアントの意味と注目されている背景、メリット・デメリット、シンクライアント環境の仕組みや端末の種類を紹介します。
シンクライアントとは
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シンクライアントとは、端末にデータやアプリケーションソフトを置かず、それらの資源をサーバー側で一括して管理するシステムの総称です。
シンクライアントは、従業員の作業データをローカル端末に残さず、利用できる機能も制限されるため、セキュリティ強化対策として有効です。
シンクライアントは決して新しい考え方ではありません。ここからは、シンクライアントの歴史を簡単に紹介します。
汎用コンピューターの歴史は、1960年代から1980年代にメインフレーム全盛時代を迎えます。
メインフレームでは、強力な処理能力の汎用機に複数のユーザーが専用端末からアクセスする「中央集権型」の仕組みがとられていました。
この専用端末がシンクライアントの基礎と言えます。
また、1990年代にはWindows OSをマルチユーザーで使用するソフトウェアが登場しました。これは、PCを大量に使用する時にコスト削減や業務効率化に寄与しました。
さらに2000年代終盤になると、サーバー仮想化技術と物理的なハードウェアの進化により、シンクライアントは更なる進化を遂げ、様々な業務課題解決に寄与しています。
シンクライアントが注目されている背景
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シンクライアントが注目されている背景には、テレワークの普及があります。
テレワークには生産性の向上やコスト削減などのメリットがあり、新型コロナウイルス感染症対策で急速に普及しました。
このテレワークには、ユーザーの端末にデータやアプリケーションソフトを置かないシンクライアントが適しています。
なぜなら、テレワークではユーザー側の環境が様々だからです。シンクライアントを用いれば、従業員はどんな端末を用いても変わらない環境で業務ができるのです。
シンクライアントのメリット
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ここでは、シンクライアントの3つのメリットを以下の順に紹介します。
- テレワークに対応
- 端末からの情報漏えいリスク軽減
- サーバー管理・運用の負担軽減
テレワークに対応
シンクライアントのメリットの1つ目は、テレワークに対応できることです。
シンクライアントでは画面情報と入力情報を、ネットワーク経由で端末とメインサーバーからやりとりします。
そのため、PCだけでなくスマートフォンやタブレットを端末として利用でき、社外から社内ネットワークにアクセスすることが容易になります。
また、BYOD(私物端末を業務で利用すること)も可能です。これらの要因から、テレワークなど柔軟な働き方が可能になります。
端末からの情報漏えいリスク軽減
シンクライアントのメリットの2つ目は、端末からの情報漏えいリスクを軽減できることです。
端末の盗難、紛失やサイバー攻撃が発生すると、端末から情報漏えいが発生する恐れがあります。
しかし、シンクライアントでは、データやアプリケーションソフトをメインサーバーで一括管理するため、端末にデータが残りません。
また、顧客情報などの重要情報も、サーバーとの接続を断てば閲覧できなくなるため、シンクライアントにより情報漏えいのリスクを軽減できます。
サーバー管理・運用の負担軽減
シンクライアントのメリットの3つ目は、サーバー管理・運用の負担を軽減できることです。
シンクライアントでは、ユーザー端末にデータやアプリケーションソフトを置きません。
そのため、サーバー管理者はメインサーバーをメンテナンスするだけで良いので、管理の負担を軽減できます。
また、ソフトウェアのインストールやアップデートなどもメインサーバーで一元管理できることから、セキュリティ対策やトラブル回避が可能になります。
シンクライアントのデメリット
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ここでは、シンクライアントの3つのデメリットを以下の順に紹介します。
- メインサーバーに一定のスペックが必要
- メインサーバーの障害発生時に影響大
- ネットワーク接続ができない環境では利用できない
メインサーバーに一定のスペックが必要
シンクライアントのデメリットの1つ目は、メインサーバーに一定のスペックが必要なことです。
シンクライアントでは、端末にデータやアプリケーションソフトを置かず、それらの資源をサーバー側で一括して管理します。
そのため、ユーザー側の端末では負担が少ないことがメリットです。しかし、その分メインサーバーの負担が大きくなることはデメリットと言えます。
複数のユーザーが同時に共有をする時には、特にリソースの消費が大きくなります。
メインサーバーの障害発生時に影響大
シンクライアントのデメリットの2つ目は、メインサーバーの障害発生時に影響大であることです。
シンクライアントでは、メインサーバーで一括処理や管理を行うことが前提になります。
そのため、メインサーバーに障害が発生した場合、全ての端末が操作できなくなるリスクがあります。
全ての端末が操作できなくなると業務が停止するため、会社経営に大きな影響を与える恐れがあります。
ネットワーク接続ができない環境では利用できない
シンクライアントのデメリットの3つ目は、ネットワーク接続ができない環境では利用できないことです。
シンクライアントは、基本的にネットワークにおいてサーバーに接続することで初めて使うことができます。
また、シンクライアント端末だけでは作業できず、作業できるとしても、作業内容は非常に限定的です。
サーバーからの通信はネットワークを経由して行われるため、シンクライアントはネットワーク接続ができない環境では利用できません。
また、画面データを転送する関係上、比較的データ転送量が多くなりがちなので、特にモバイル端末ではデータ使用量にも注意する必要があります。
主なシンクライアント環境の仕組み
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ここでは、主なシンクライアント環境の仕組みを以下の順に紹介します。
- ネットワークブート型シンクライアント
- 画面転送型シンクライアント
ネットワークブート型シンクライアント
シンクライアント環境の仕組みの1つ目は、ネットワークブート型シンクライアントです。
ネットワークブート型シンクライアントでは、接続元端末でサーバー上のイメージファイルを読み込ませ、OSやアプリケーションなどをネットワーク経由で起動させます。
1度起動すれば通常オフィスで使用するPCと同じような操作感を実現できます。
ただし、クライアントの台数に応じた十分なネットワーク帯域とサーバー台数が必要になるため、大規模になると管理に手間がかかることには注意が必要です。
画面転送型シンクライアント
シンクライアント環境の仕組みの2つ目は、画面転送型シンクライアントです。
この方式では、OSやアプリケーションなどをサーバー側で起動します。端末に画面情報を転送し、入力情報は端末からサーバーに返します。
画面転送型シンクライアントの方式を以下の順に紹介します。
- ブレードPC方式
- SBC方式
- VDI方式
ブレードPC方式
画面転送型シンクライアントの方式の1つ目は、ブレードPC方式です。
ブレードPC方式では、クライアントごとにPCの機能を何枚もの板状の基盤に集約したブレードPCと呼ばれるハードウェアを用意する必要があります。これらは企業がまとめてマシンルームなどで管理するのが一般的です。
クライアント端末は、画面転送プロトコルを利用して、それぞれに紐づけられたブレードPCに接続します。このように、ブレードPCから手元端末へと画面転送する仕組みがブレード方式です。
こうすることで、通常オフィスで使用するPCと同じような操作感を実現できます。そのため高いグラフィック性能など、PCへの負荷が大きな用途に向いています。
ただし、ブレードPC1つの価格が高額なため、大規模な導入を考える場合はコストが高くなる可能性があります。
SBC方式
画面転送型シンクライアントの方式の2つ目は、SBC方式です。
SBC(Server Based Computing)方式では、アプリケーションの起動・処理はサーバー側で行います。一方、手元の端末では操作と画面表示だけを行います。
稼働させたアプリケーションは、複数のクライアント端末で共有することになります。
SBC方式は、コストパフォーマンスに優れている反面、アプリケーション側の対応や動作確認を企業側が行わなければならないため、注意が必要です。
VDI方式
画面転送型シンクライアントの方式の3つ目は、VDI方式です。
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とは、デスクトップ環境を仮想化させて、デスクトップ環境をサーバー上に集約させ稼働させる仕組みのことです。
具体的には、1台の高性能なサーバー上に複数台分の仮想デスクトップを集約させて、接続元の端末では操作と画面表示しか行わない方式です。
そのため、端末にはデータが残りません。こうすることで利便性と管理性を両立できます。
シンクライアント端末の種類
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ここでは、シンクライアント端末の種類を以下の順に紹介します。
- 専用端末型
- USB端末型
- ソフトウェアインストール型
専用端末型
シンクライアント端末の種類の1つ目は、専用端末型です。
シンクライアント端末として利用するための最小限の構成によるデスクトップPC型端末やノートPCなどの端末のことです。
利用者ごとに物理的なハードウェアを揃える必要があるため、初期費用が発生します。
USB端末型
シンクライアント端末の種類の2つ目は、USB端末型です。
既存の端末をシンクライアント端末として利用するためのUSBから専用OSを起動させるために端末に差し込むものです。
低コストで導入も容易ですが、暗号化や改ざん防止が不十分なUSBだとセキュリティリスクが増大することには注意が必要です。
ソフトウェアインストール型
シンクライアント端末の種類の3つ目は、ソフトウェアインストール型です。
既存の端末をシンクライアント端末としてシンクライアント専用OSを含んだソフトウェアをインストールするものです。
既存の端末を活用するため、設定の手間や機器調達コストを削減できます。
まとめ
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本記事では、シンクライアントの意味と注目されている背景、メリット・デメリット、シンクライアント環境の仕組みや端末の種類を紹介しました。
シンクライアントを活用することで、サーバーの運用・管理の負担を軽減することが期待されます。
特に、企業規模が大きい企業ではより効果を発揮するはずです。本記事を参考にして、シンクライアントの導入を検討してみてください。
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