
- VPNと専用線の意味とは
- VPNと専用線の違いとは
- VPNと専用線の使い分け方とは
VPNと専用線は、どちらも企業間のネットワークを構築する仕組みです。いずれにおいても、普通のインターネット回線よりもセキュリティを強化できます。
しかし、VPNと専用線は全く違うものであり、ケースによって適切に使い分けなければなりません。
本記事では、VPNと専用線の意味やVPNと専用線の違い、また両者を比較し最後にVPNと専用線の使い分け方について紹介します。
VPNと専用線の意味
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ここではまず、VPNと専用線の意味を紹介します。
VPN
VPN(Virtual Private Network)とは、公衆回線上に仮想的なプライベートネットワークを設けることで、ある特定のユーザーしかアクセスできない仕組みのことです。
これにより、不特定多数が利用できる公衆回線においても、セキュリティを確保した上で利用することが可能となります。
VPNには、大きく分けてインターネットVPN・IP-VPN・SSL-VPNの3つの種類があります。
インターネットVPNは、既存の公衆回線を使った一般的なVPNです。IP-VPNは、通信事業者が提供する閉域網を利用したVPNであり、SSL-VPNは暗号化技術のSSLを活用したVPNです。
またVPNは、仮想トンネルでつなぐ「トンネリング」、そのトンネルを通る情報を梱包して守る「カプセル化」、カプセル内の情報の送信先に誤りがないか送り主に確認するし、受け取り側に同意を得る「認証」、情報を暗号に変換する「暗号化」といった技術によって成り立っています。
専用線
専用線とは、特定の企業や組織に対して専用の通信回線を用意して、安全性の高い通信を行う仕組みのことです。
拠点間を1本の専用ケーブルで接続していくイメージで、端末同士を1対1でつなぐ通信です。
バックアップ用に予備回線を用意すれば、災害などのリスクがあってもネットワークを利用し続けることが可能になります。
専用線であれば、VPNと違い物理的に不特定多数のユーザーが利用することはないので、セキュリティを高めることが可能です。
また、ネットワークの安定性も確保できます。そのため、動画など大容量データを安定して配信できます。
ただ、専用の通信回線を用意する分コストは割高です。また、今まで接続していなかった拠点間で通信を行いたい場合は、そのために新たな専用線を引く必要があります。
以前は大企業や公的機関・金融機関などに利用が限られてきましたが、最近では高い機密性が必要であれば、企業の規模を問わず導入するケースが増えています。
VPNと専用線の違いを比較
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ここでは、VPNと専用線の違いを比較します。以下の6項目ごとに表にまとめ、詳細は後ほど紹介します。
項目 VPN 専用線 コスト 安い 高い 通信品質 回線の影響大 安定している 管理 手軽に運用できるサービスも存在 専任者が必須 調達時間・手間 比較的容易 専門的知識が必要 セキュリティ 高い 非常に高い 可用性 高い 非常に高い コスト
コストについては、専用線よりVPNの方が比較的優れています。
これは、専用線ではユーザー専用のネットワークが構築する必要があるのに対し、VPNでは新たに回線を設置する必要はないからです。
セキュリティなどの観点からあまりおすすめできませんが、中には無料で使えるVPNサービスもあるぐらいです。
一方、専用線は導入コストはもちろん、運用にも専門知識のあるスタッフが必要になりますので、かなりのコストがかかります。
しかも、拠点間の距離が長くても、VPNの料金は変動しません。しかし、専用線では拠点間の距離が長いと料金が高額になります。
その点でも、コストについては、専用線よりVPNの方が圧倒的に優れています。
通信品質
通信品質については、VPNより専用線の方が優れているとされています。
これは、専用線ではユーザー専用のネットワークが構築されるため、大容量の通信を行う時でも、回線の混雑状況などに通信品質が影響を受けないからです。
一方VPNでは、物理的には他のユーザーと同じ回線を使用するため、専用線と比較すると回線の混雑状況などに通信品質が影響を受ける恐れがあります。
同じVPNでも、IP-VPNの方がインターネットVPNやSSL-VPNより通信品質が安定しやすいとされています。
IP-VPNでは通信事業者が設定した閉鎖域を利用します。
一方、インターネットVPNやSSL-VPNでは公衆回線を利用するため、どうしても回線の混雑状況に影響を受けます。
管理
管理については、専用線よりVPNの方が優れているとされています。
専用線の管理は、基本的にユーザー自身で行わなければなりません。そのため、社内に専門知識があるスタッフを置いて、ネットワーク管理・監視を行う必要があります。
その点、VPNでは基本的にサービス提供者の手でネットワーク管理・監視を行ってくれます。社内に専門知識があるスタッフを置く必要もありません。
そのため、トラブル対応などが充実しているVPNサービスを選べば、大きな手間をかけずとも管理できます。
調達時間・手間
調達時間・手間についても、専用線よりVPNの方が優れているとされています。
これは、専用線ではユーザー専用のネットワークが構築する必要があるため、その分調達時間・手間がかかるからです。
また、専用線の導入・運用も基本的にユーザー自身で行わなければなりません。社内に専門知識があるスタッフが必要になるので、その点でも調達時間・手間がかかります。
その点、VPNでは新たに回線を設置するわけではないので、早く楽に調達して利用を開始できます。
特に、インターネットVPNはルーターや専用ソフトなどを用意すれば使えるため、手軽に導入できます。
セキュリティ
セキュリティについては、VPNより専用線の方が優れているとされています。
これは、専用線ではユーザー専用のネットワークが構築されるため、そもそも社外からのアクセスが不可能だからです。
一方、VPNにも「トンネリング」、「カプセル化」、「認証」、「暗号化」とセキュリティを守る仕組みは存在します。
とは言え、物理的には他のユーザーと同じ回線を使用するため、専用線と比較するとセキュリティ面では不利です。
同じVPNでも、IP-VPNの方がインターネットVPNやSSL-VPNよりセキュリティ面で強いとされています。
ただ、どのようなVPNを利用するにしても、正しく設定・運用しないとセキュリティリスクは増大しがちであることには注意が必要です。
可用性
可用性とは、ネットワークが停止することなく使用し続けられる能力のことです。一般的に、可用性については専用線の方がVPNより優れている傾向にあります。
これは、専用線を設置する時に予備回線を設置することが多いからです。これにより、トラブルがあっても予備回線を用いてネットワークを運用し続けられます。
ただし、VPNの可用性は、インターネットVPN(SSL-VPN)とIP-VPNで異なります。
インターネットVPN(SSL-VPN)の可用性は、使用しているインターネット回線の可用性に依存します。
一方、一般的にIP-VPNの可用性はインターネットVPN(SSL-VPN)より優れているとされています。ただし、最終的にはVPNサービスの提供者によります。
VPNと専用線の使い分け方
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ここまで、VPNと専用線の違いを紹介してきました。最後に、VPNと専用線の使い分け方について紹介します。
VPNを使うべきケース
VPNを使うべきケースは、コストを抑えて手軽にセキュリティ対策を始めたいケースです。
専用線では、VPNとは比較にならないほど導入・運用コストがかかります。また、調達の時間や手間もかかるため、コストを抑えて手軽に始められる代物ではありません。
その点、VPNであれば無料サービスも存在します。有料であっても、安いものであれば月数百円から利用を開始できます。
ただし、特に無料VPNにはセキュリティやパフォーマンスに問題があるサービスが少なくありません。そのため、基本的には有料VPNを使うことが確実です。
また、VPNのセキュリティやパフォーマンスをある程度気にする場合は、インターネットVPNよりIP-VPNがおすすめです。
専用線を使うべきケース
専用線を使うべきケースは、コストよりセキュリティやパフォーマンスの安定性を重視したいケースです。
どれだけセキュリティやパフォーマンスの安定性を高めたVPNであっても、特定の企業や団体しか利用しない専用線と比較すると不利です。
そのため、セキュリティや速度が高いレベルで求められる場合には、コストをかけてでも専用線を使うことがおすすめです。
ただし、専用線には災害などで途切れるとネットワークの使用が完全に不可能になることが弱点です。
そのため、冗長構成を整備するなどトラブル発生時のバックアップ体制を取ることも必要です。
まとめ
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本記事では、VPNと専用線の意味やVPNと専用線の違い、また両者を比較し最後にVPNと専用線の使い分け方について紹介しました。
大切なことは、VPNと専用線の特徴を踏まえて使い分けることです。
機密性がそこまで求められず、コストもかけられない場合は、専用線を導入する意味はありません。VPNの導入が賢明です。機密性がそこまで求められず、コストもかけられない場合は、専用線を導入する意味はありません。VPNの導入が賢明です。
反対に、重要拠点間の通信など、コストをかけてでも機密性を保って確実にネットワークを使い続けたい場合には、専用線を使うことがおすすめです。
また、場合によってはVPNと専用線の併用も視野に入れる必要があります。
いずれにしても、VPNと専用線の特徴と用途を踏まえ、自社に合ったものを選択することが重要です。
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