2021.09.21

テレワークにおけるコミュニケーション不足の課題と解決方法

働き方改革の実現に向けて最も効果的なアプローチと考えられている「テレワーク」。すでに多くの企業がその導入により、業務効率向上や残業時間の削減に成功しています。その一方で、コミュニケーションがうまく行かず、生産性が低下してしまった企業もあります。ここでは、コミュニケーションのとりづらさ・コミュニケーション不全を解決する一助となるツールをご紹介します。

テレワークを実施して良かった点、悪かった点

テレワークに関するアンケート調査では最大規模を誇る、国土交通省による「令和2年度テレワーク人口実態調査(※1)」があります(サンプル数/調査規模4万人、2020年11~12月に実施)。

※1 国土交通省「テレワーク人口実態調査」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001391381.pdf

テレワークを実施して良かった点、悪かった点を調査しているので具体的に見てみましょう。

良かった点としては、「通勤が不要、または、通勤の負担が軽減された」の約74%が最も多く、次いで「時間の融通が利くので、時間を有効に使えた」の約59%、「新型コロナウイルスに感染する可能性がある中で出勤しなくても業務を行えた」の約43%、ここから数値が大幅に下がり「業務の効率があがった」の約16.7%、「災害や事故発生時でも出勤せずに業務が行えた」の約9.3%と続きました。

逆に悪かった点としては、「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」が約47%と最も高く、「仕事をする部屋や机・椅子、インターネット環境や、プリンター・コピー機などの環境が十分でなく不便だった」の約35%が続いています。ここから数値が大幅に下がり、「職場にいないため、疎外感・孤独感・不安を感じた」の約17.9%、「会社としてテレワークをするための機器(社内LANへのリモートアクセスサーバー、Web会議用のソフトウェアなど)が十分備わっておらず、不便だった」の17.5%です。

テレワークを実施して良かった点にある「業務の効率があがった」の16.7%と、悪かった点の「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」の約47%は、いずれもテレワーク導入による業務効率向上・生産性に関する内容です。効率が上がった場合もあれば、逆に下がったケースもあるようです。割合をみると業務効率が改善するよりは悪化したケースが多いようですが、なぜこのような結果になったのでしょうか。はたしてテレワークは労働効率・生産性を高めるのでしょうか。それとも、下げるものなのでしょうか。

2020年4月7日に初めて東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の都府県を対象に緊急事態が宣言されました。「令和2年度テレワーク人口実態調査※1」によると、その前後、2020年3月以前のテレワーク導入率は、全国で8.9%、首都圏で13.5%、近畿圏で8.9%、中京圏で8.8%、地方都市圏で6.3%でした。緊急事態宣言中の4-5月時点では、全国で13.5%、首都圏で31.4%、近畿圏で21%、中京圏で16.7%、地方都市圏で13.6%です。人口が多く人口密度が高い地域の方がテレワーク導入率が高い傾向にあります。また、地域に関係なく緊急事態宣言に合わせる形でテレワークが導入されていった状況がうかがえます。と同時に、「仕事をする部屋や机・椅子、インターネット環境や、プリンター・コピー機などの環境が十分でなく不便だった」や「会社としてテレワークをするための機器(社内LANへのリモートアクセスサーバー、Web会議用のソフトウェアなど)が十分備わっておらず、不便だった」といった声が示す通り、テレワークを効果的に実施するための準備が十分に整わないないまま、緊急事態宣言発令とともにテレワークを進めていった実態も伝わってきます。そして緊急事態宣言終了直後の6-7月時点では、全国で16.9%、首都圏で28.2%、近畿圏で16.9%、中京圏で13.3%、地方都市圏で9.9%となっています。緊急事態宣言中の4-5月時点と比較し、すべての地域で低下していることがわかります。また、8-10月時点では、全国で16.4%、首都圏で27.2%、近畿圏で16%、中京圏で13.7%、地方都市圏で9.4%と、6-7月時点と比較して若干低下は見られるものの、ほぼ横ばい傾向にあります。

繰り返しになりますが、これまで見てきた調査において、テレワークを導入して悪かった点で最も多かったのは、業務効率・生産性が低下したケースでした。緊急事態宣言と共にテレワークを導入したものの、こういったハードルにぶつかった企業は少なからずあり、それらが緊急事態宣言終了とともにテレワークをやめたとしても不思議はないでしょう。

ビフォー・コロナ、アフター・コロナのテレワーク比較

新型コロナウイルス感染症流行前の2016年、厚労省が策定・公表した「テレワークではじめる働き方改革(厚生労働省 2016年)(※2)」には、テレワークを実施した効果に関する調査結果があります。

※2 厚生労働省
テレワークではじめる働き方改革(テレワークの導入・運用ガイドブック)
http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/14.pdf

セキュリティ

まず、企業の雇用面への効果に対する調査結果として、「家庭で育児を担う人材の離職抑制、就労継続支援」が42.7%と最も高く、次いで「働き方の変革による生産性向上」の37.6%、「従業員のワーク・ライフ・バランスの向上」の29.1%、「その他やむを得ない家庭の事情を抱える人材の離職抑制、就労継続支援」の28.2%、「家庭で介護を担う人材の離職抑制、就労継続支援」の17.9%、「職場におけるコミュニケーションの活性化」の9.4%と続きます。

つぎに従業員にとっての効果に対する調査結果として、「電話や話し声に邪魔されず、業務に集中できる」が42.7%と最も高く、次に「タイムマネジメントを意識するようになった」の57.5%、「育児との両立が可能になった」の49.6%、「生産性・創造性が向上している」と「自律・自己管理的な働き方ができるようになった」の46%、「計画通りに業務を遂行できる」の35.4%、「労働時間が減少した」の20.4%、「仕事全体の満足度が上がった」と「伴侶の生活時間帯と合わせることが可能になった」の19.5%、「仕事に対するモチベーション(意欲)が高まった」の18.6%、「会社に対する信頼感が高まった」の17.7%、「テレワーク導入前よりもコミュニケーションが良くなった」の10.6%と続いていきます。

この調査結果を通じて、テレワーク導入の効果は多岐にわたっていることが分かります。また、労働効率・生産性の観点では、企業にとっての効果として、「働き方の変革による生産性向上」の37.6%、従業員にとっての効果として、「生産性・創造性が向上している」の46%となっています。コロナ拡大後に実施された「令和2年度テレワーク人口実態調査※1」において、テレワークを実施して良かった点について「業務の効率があがった」は16.7%となっていたのに比べると、これを大きく上回っています。逆に、実施して悪かった点を見てみましょう。「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」が約47%で最も高く、その原因の1つとしてコミュニケーションのとりづらさ、コミュニケーション不全が挙げられています。

アフターコロナのテレワーク課題とコミュニケーション

コロナウイルス感染症の流行前後で、テレワークを導入する目的の傾向が変わりました。流行以前は、「働き方改革」や「生産性の向上」「人材の確保・育成」「事業継続(BCP)」「コストダウン」などと、多岐にわたっていましたが、流行以後は、パンデミック・感染症対策としての「事業継続(BCP)」に集中しています。緊急事態宣言前後、東京都が独自に、2020年3月と4月に実施した緊急調査(※3)の結果によると、3月時点の導入率は24%だったのに対し、4月時点では62.7%と40%近くも急激に上昇しています。

※3 東京都『テレワーク「導入率」緊急調査』
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/12/documents/10.pdf

ちょうどその頃はコロナ対策として、テレワーク導入が喫緊の課題でした。テレワークは手段であり、それを通じて何をするかということが問題なわけですが、人流を減らすなどの措置が求められた結果、その導入自体が目的化していたと言えるかもしれません。一方、コロナ流行前では、テレワークの導入を検討する期間、トライアル導入する期間をしっかりととることができていました。品質(Quality)とコスト(Cost)と納期(Delivery、今回の文脈では「導入期間」が解釈として近い)はそれぞれトレードオフの関係にあります。これを頭文字を取ってQCD問題と言います。緊急事態宣言などのタイミングでは、「事業継続(BCP)」に導入の目的をしぼり、品質や(目的の範囲を絞ることでコスト圧縮したという意味で)コストよりも導入期間の圧縮を最優先させて、テレワークを導入しているケースがほとんどでしょう。その場合、テレワークの品質が高いとは言えず、テレワークが持つ効能が十分に生かしきれないのも否定できません。実際には、「テレワークではじめる働き方改革(厚生労働省 2016年)(※2)」に挙がっている各効果が発揮できるポテンシャルがあると見るべきです。

コミュニケーションのとりづらさ、コミュニケーション不全は、導入期間の圧縮を優先させた代償として発生した可能性があります。これに対し、コミュニケーション・ツールの導入や見直し・最適化を図ることで、課題の解消・緩和をすることが可能になるはずです。

テレワークを実現するためのICT環境とコミュニケーション・ツール

コミュニケーションのとりづらさ、コミュニケーション不全の解消・緩和の手段としてまず挙げられるのが、コミュニケーション・ツールの導入と最適化です。そこでまずはテレワークを実現するために必要なICT環境とコミュニケーション・ツールの位置づけについてみていきます。

「テレワークではじめる働き方改革(厚生労働省 2016年)※2」によると、テレワーク導入にあたり、「マネジメント」、「セキュリティの確保」、「コミュニケーション」、という3つのICT環境を整備する必要があります。

「マネジメント」に関するICT環境の整備では、勤怠管理、プレゼンス管理(在席管理)、 業務管理(進捗状況確認) などの見える化を行います。

「セキュリティの確保」に関するICT環境の整備では、利用するデバイスやシステム方式など、 ICT環境におけるセキュリティの確保や情報を社外に持ち出さずに業務を遂行できる環境の構築を行います。

テレワークでも所属オフィスで勤務している場合と同等の「セキュリティの確保」を実施できることが望ましいです。たとえば、仮想デスクトップのクラウドサービスなどを活用することで、テレワークによるセキュリティ・リスクを低減することが可能です。

「コミュニケーション」に関するICT環境の整備では、文字、音声、映像などコミュニケーション手段の確保と、情報を共有するコミュニケーション基盤の構築を行います。

コミュニケーション・ツールは、「コミュニケーション」に関するICT環境のツールに位置づけされます。また広義では、上司と部下のコミュニケーションという観点で、「マネジメント」の一部のプレゼンス管理(在席管理)、 業務管理(進捗状況確認)も含まれるでしょう。

コミュニケーション・ツールの種類と概要

ここではICT環境におけるコミュニケーション・ツールの種類と概要をご紹介します。

Eメール

概要

社内・社外を含めた業務コミュニケーションの中核ツールです。現在利用中のメールサーバのシステムが、外部からの接続が難しい状態になっている場合等、テレワークへの対応が難しい場合には、他のメールサービスへの転送や、新たなメールサービスの導入を検討する必要があります。

チャット

概要

会話のように、単文のやりとりを行うソフトウェアです。3名以上のグループでやりとりする場合もあります。なお、社外へのデータ流出が起こらないよう、セキュリティ管理のしっかりしているビジネスチャットあるいはweb会議等付属のチャット利用が望ましいとされています。

製品例

chatwork/chatwork(株)
LINE WORKS/Works Mobile Japan(株)
slack/Slack Japan(株)
WowTalk/ワウトーク(株)
InCircle/AI CROSS(株)
TopicRoom/NTTテクノクロス(株)

会議システム

概要

会議システムを導入することで、対面コミュニケーションに近い状態での会議や打合せを気軽に実施することが可能になります。移動にかかる交通費と時間の削減にも繋がります。いずれかの製品の導入を検討するとよいでしょう。

製品例

Zoom/Zoom Video Communications, Inc.
Teams/日本マイクロソフト(株)
Meet/グーグル合同会社
V-CUBEミーティング/(株)ブイキューブ
WebEx Meeting Center/シスコシステムズ合同会社
LiveOn/ジャパンメディアシステム(株)

情報共有ツール(データ共有)

概要

インターネット上にファイルを保存できる 「オンラインストレージサービス」を使用することで、大容量ファイルの円滑なやり取りが可能になります。なお、社外へのデータ流出が起こらないよう、利用する場合は運用方針を定めることが望ましいです。

製品例

Dropbox
Googleドライブ(G Suite)
OneDrive(Microsoft365)
BOX

※多くのサービスがあり、一定容量まではいずれのサービスでも無料での利用が可能です。
グループウェア製品にもオンラインストレージサービスが含まれていることがあります。

詳しくは下記のURLの内容をご確認ください。

日本テレワーク協会「テレワーク関連ツール」
https://japan-telework.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/07/Tools-V6.0s-20210531.pdf

まとめ

業務効率化・生産性の低下につながるコミュニケーションのとりづらさ・コミュニケーション不全に関するテレワークの課題は、コミュニケーション・ツールの導入や見直し・最適化を図ることで解消・緩和されるかもしれません。コロナ感染症対策として早急にテレワークを導入した企業はとくに、コミュニケーション・ツールの導入や見直し・最適化の余地があると想定され、検討をお勧めします。

その1例をあげると、NTTコムウェアが運営するレタリアは、「日本の会議を考え抜いた」と謳うだけあって、スムーズでストレスフリーなウェブ会議にコミットしたウェブコミュニケーション・ツールとなっています。インストール不要なのでウェブ・ブラウザで対応可能、ツールは使い勝手がよく、特段の技術習得は必要なくすぐに自然とコミュニケーションをスタートできます。加えて、オンライン商談や研修セミナー、遠隔サポート窓口などウェブ会議以外にも活用できる点もメリットとなるでしょう。

レタリア(NTTコムウェア)
https://www.nttcom.co.jp/dscb/letaria/index.html