試合観戦記Vol.02 ビーチバレー 長谷川暁子

長谷川暁子選手/二見梓選手ペア
「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2019 ファイナル グランフロント大阪大会」マッチレポート

text by 熊崎敬/photo by 竹見脩吾

長谷川暁子 “自然体”の境地で挑んだジャパンツアー最終戦

10月13日、ビーチバレージャパンツアーのファイナル、グランフロント大阪大会が開催された。

この大会は、今季ジャパンツアーで好成績を収めた8組だけが出場できる特別な舞台。二見梓とペアを組む長谷川暁子は、今季優勝1回、準優勝2回と、出場した3つの大会全てで好成績を収めてきたが、今回は残念ながら1回戦負けに終わった。

ちなみにこの大会は台風19号の接近にともない、スケジュールが大幅に変更されての開催となった。

本来2日間にわたる大会が1日に短縮。試合数を減らすためにプール戦が廃止され、一発勝負のトーナメント制に。試合自体も、強風が吹く中で行なわれた。

悪条件下でのプレーを余儀なくされた長谷川だが、焦りや戸惑いはなかった。

「インドアからビーチに転向したばかりのころは、こうした変更に戸惑いましたが、いまでは“こういうこともある”と割り切れるようになりました。台風で中止になることもあるし、風や雨に見舞われることもある。そうした環境でプレーするのが、ビーチでは当たり前。相手も条件は同じですからね」

グランフロント大阪うめきた広場内
特設コートで開催された試合

相手選手のサーブをレシーブ

4連覇を狙う王者と対戦した長谷川・二見組は、第1セットで追いつ追われつの大熱戦を繰り広げたが、0-2と敗北。準決勝、決勝に駒を進めることはできなかった。

結果とは裏腹に、試合後の長谷川は晴れ晴れとした表情を浮かべていた。それは今季のパフォーマンスに、たしかな手応えを感じているからだ。

「ペアを組んで3年目になる私たちは、波が大きいという弱点がありました。調子がいいときは強いのですが、ちょっと悪くなると大崩れしてしまう。でも、今季はその波が小さくなった」

格下のチームに取りこぼす悪癖は影をひそめ、勝つべきチームにしっかりと勝つ。その成長が9月下旬のジャパンツアー第6戦、都城大会優勝という結果にもつながる。

課題を克服できたのは、なぜか。

長谷川は相互理解が深まったからだと考えている。

「ふたりで長く一緒に過ごすことで、言葉を交わさなくても互いがなにを考えているのか、どんな状態でいるのかがわかるようになりました。例えばパートナーがサーブキャッチでミスをしたとき、相手が緊張しやすい性格だとわかっていれば、“もうミスはできない、と追い込まれているだろうな”などと想像できるので、“いまのはサーブが良かったから。さあ、次行こう”と切り替えの声をかけることができる。相手を深く知ることで、いい準備や対応ができますからね」

グランフロント大阪大会の直前には、東京2020ビーチバレーボール日本代表チーム決定戦の開催日と会場が発表された。

2020年5月23、24日、女子はJR高輪ゲートウェイ駅前特設会場で、男子はグランフロント大阪特設会場で開催される。

左:二見梓選手(東レエンジニアリング)
右:長谷川暁子選手(NTTコムウェア)

ポイントが相手選手に渡り感情をあらわにした

目指す大会が具体的に見えたいま、長谷川が意識する言葉がある。「自然体」だ。

「大事な試合に勝つには気合いを入れた方がいい、という考え方もあると思います。でも私は、自然体で臨むのがいちばんいいと思う」

こう考えるようになったのも、2020年を過剰に意識するあまり、勝てなくなってしまった時期を経験しているからだ。

「1年くらい前は、“オリンピックに人生のすべてを懸ける”くらいの覚悟で競技に打ち込んでいました。でも、逆効果でした。パートナーやコーチにきつく当たりすぎて、チームを追い込んでしまって……。当然、成績は落ち込みました。人間、余裕がなくなると周りが見えなくなってしまう。観察力が問われるビーチバレーで、それは逆効果にしかなりません。そういうことを思い知らされて、自分を変えることにしました。そこからです、チームが勝てるようになってきたのは」

来年5月の大勝負を見据えて、彼女は言う。

「半年前に比べて、私たちは確実に強くなりました。日本代表決定戦に向けて、まだ半年以上あります。ということは、もっともっと強くなれるはずです。自然体でビーチバレーを楽しみながら、必死に取り組む。そんなポジティブな姿勢で、その日を迎えたいと思います」

迷い、苦しみを乗り越えて、たくましくなった長谷川が、夢の舞台に向かって突き進む。

■マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2019
 ファイナル グランフロント大阪大会

1回戦

長谷川暁子(NTTコムウェア)/二見梓(東レエンジニアリング)組 対 石井美樹(荒井商事/湘南ベルマーレ)/村上めぐみ(オーイング)

1台風の影響で2日開催の予定が1日に短縮された大阪大会。白砂を敷き詰められたJR大阪駅前、グランフロント広場の特設コートには、朝から大観衆が詰めかけた。

14連覇を狙う石井/村上ペアと1回戦で対戦した長谷川/二見ペアは、第1セット序盤から1、2点差のまま推移する見応えのある攻防を繰り広げる。チームの武器のひとつである、高さを生かしたダイナミックなアタックが決まり、一時は11-10とリードする。その後、14-16と逆転されるが、ここでもタイムアウトを利用して追いつくなど存分に粘りを見せた。しかし、強風の影響から勝負どころでミスが出て、最後は19-21と押し切られてしまう。続く第2セットは、序盤からサーブで揺さぶられる苦しい展開に。結局、自分たちのリズムに持ち込むことができないまま、ストレート負けを喫した。

□結果 長谷川/二見 0(19-21,8-21)2 石井/村上

■前夜祭

10月11日には前夜祭が行われ、長谷川/二見ペアはフォーマルな衣装に身を包んでレセプションパーティーに出席。コート上とは違う一面を見せた。またエキシビジョンマッチには、MBSバレーボールアンバサダーを3年連続で務める俳優の大谷亮平さんが特別参戦。金曜の夜は大いに盛り上がった。