2021.11.02

テレワーク導入がもたらすコミュニケーション不足、その原因と弊害、向き合い方・対策について徹底解説

働き方改革の実現に向けて最も効果的なアプローチと考えられている「テレワーク」。すでに多くの企業がその導入により、業務効率向上や残業時間の削減に成功しています。その一方で、コミュニケーションがうまく行かず、生産性が低下してしまった企業も少なくありません。そうならないためには、原因やリスクを把握し、対策を練って実施することが欠かせません。ここでは、テレワークに伴って発生しうるコミュニケーション不足とその原因、そしてそれらにどのように向き合って対応すべきかについてご紹介します。

letaria

テレワークに伴うコミュニケーション不足

インターネットが普及するまでは、リアルタイムで遠隔地の人たちとコミュニケーションを行うには、電話などによる音声通話に頼るしかありませんでしたが、その後、例えばシンクライアントや仮想デスクトップ、WEB会議システムなどのICT技術のめざましい発展のおかげで状況は一気に改善したといえるでしょう。

近年では自宅のパソコンに社内機密情報を保存させずに業務が可能なリモートデスクトップや仮想デスクトップ、Daas(Desktop as a Service)のサービスを活用することで、情報漏えい防止などのセキュリティ対策を万全にしつつ、在宅勤務やモバイル勤務が可能となりました。

また、リモートミーティングサービス「letaria(レタリア)(※1)」などのWEB会議ツールを活用することで、リアルタイムに音声だけでなく、手元のパソコンに保存されている資料やそれぞれのパソコンの画面を共有しながら、また、相手の表情をカメラの映像で確認しながら、遠隔地の相手と打ち合わせができるようになったのです。

※1 NTTコムウェア「日本の会議を考え抜いたWEB会議システム」
https://www.nttcom.co.jp/dscb/letaria/

電話に頼る時代と比較するまでもなく、飛躍的にテレワークの生産性は向上しています。それでもやはり、テレワーク環境下では、オフィスに出社し顔を合わせながらやり取りする状況と比べると、行き違いや誤解など、コミュニケーション不足が生まれる可能性があります。

テレワークに関するアンケート調査で最大規模を誇るのが、国土交通省による「令和2年度テレワーク人口実態調査(※2)」です(サンプル数/調査規模4万人、2020年11~12月に実施)。

※2 国土交通省「テレワーク人口実態調査」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001391381.pdf

その調査結果によると、テレワークの悪かった点として挙げられている中で最も高いのが、「仕事に支障が生じる(コミュニケーションのとりづらさや業務効率低下など)、勤務時間が長くなるなど、勤務状況が厳しくなった」で、約47%となっています。

また、緊急事態宣言前後の2020年3月と4月、東京都が独自に実施した緊急調査(※3)の結果によると、3月時点のテレワーク導入率は24%だったのに対し、4月時点では62.7%と40%近く急激に上昇しています。

※3 東京都『テレワーク「導入率」緊急調査』
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/12/documents/10.pdf

ちょうどその頃はコロナ対策として、テレワーク導入が喫緊の課題でした。テレワークに関して十分な検討をするゆとりもなく導入に踏み切った企業も多く、テレワーク特有の問題・課題を把握できていなくても不思議ではありません。また、それらの問題・課題を考慮に入れずにテレワークを導入する一方、従前の仕事のやり方・ノウハウを踏襲したままでいると、テレワーク特有の罠に陥り、コミュニケーション不足が生まれ、様々な悪循環をもたらす可能性も否定できません。

コミュニケーション不足の弊害

そもそもコミュニケーション不足に陥ると何が起こるのでしょうか。当然、誤った内容が伝わったり、伝達すべき情報に漏れがあったりと、ミス・トラブルの種が増えることが想定されます。また、必要なタイミングに必要な情報が行き届かなくなり、業務の成果や進捗状況が把握しづらくなると、社員は業務に対する不満を募らせるようになり、生産性やモチベーションは低下し、ひいては人材流出のリスクが増大します。百害あって一利なしですので、コミュニケーション不足の芽は可能な限り摘み取っておくべきだといえるでしょう。

テレワークに伴ってコミュニケーション不足が生まれる原因

ここではテレワークに伴ってコミュニケーション不足が生まれる原因について考察します。

物理的な距離の壁

なによりまず、社員同士の作業場所が離れているため、人間関係を円滑にするために欠かせない気軽な会話や雑談を含めたコミュニケーションが減る傾向にあります。

対面ならば相手の状況を目視できるため、声をかけるタイミングも見極めやすいところ、テレワークだと相手の状況が見えづらく、電話やメール、チャットなどツールはあるにせよ、そもそもコミュニケーションをとるのに躊躇してしまいがちです。

したがって、対面より会話の頻度が落ちるのは不可避のことかもしれません。また、リアルタイムのコミュニケーションの頻度が減ることでタイムラグが生じやすく、場合によっては生産性の低下につながりかねません。

ノンバーバルコミュニケーションの壁

「ノンバーバルコミュニケーションを活用するには?意味や具体例まで解説(※4)」によると、ノンバーバルコミュニケーションとは「言語以外で行うコミュニケーション方法」のことです。具体的には、人の表情や声の調子、香りなど、人間が五感によって捉えることのできるコミュニケーションが該当します。

アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは1971年、「7-38-55ルール」または「3vの法則」と呼ばれる重要な法則を発表しました。この法則が示すのは、人がコミュニケーションの際に受け取る情報を100とした場合、相手から発せられる言語情報は7%であり、非言語情報は合計93%にもなるということです。その93%の非言語情報の内訳としては、見た目や表情、身だしなみなどの視覚情報が55%、声のトーン・大きさ、話し方の速度などの聴覚情報が38%となっています。

こうしたメラビアンによる法則やデータから、日常生活やビジネスにおいてコミュニケーションを円滑にとりたいなら、非言語情報を大切に考えなければならないことが理解できます。

※4 株式会社サイダス「ピポラボ ノンバーバルコミュニケーションを活用するには?意味や具体例まで解説」
https://www.cydas.com/peoplelabo/non-verbal-communication/

テレワーク環境下では、会話の代わりにメールやチャットなど文字・言語情報によるコミュニケーションが増えます。メラビアンの法則によると言語情報は、コミュニケーションの際に受け取る情報の7パーセントにすぎないため、いままで会話で伝えていた内容をメールやチャットなどの文字情報に切り替えた分だけ、情報の伝達効率は落ちていきます。

メールやチャットと違い電話であれば、言語情報に加えて音声情報を活用することができます。また、電話と違いビデオカメラも併用可能なWEB会議であれば、聴覚情報に加えて視覚情報も活用することができます。もっとも、ノンバーバルコミュニケーションを駆使できるのでWEB会議は万能かといえば、必ずしもそうではありません。

鍵を握っているのは視覚情報と聴覚情報の品質にあります。言うまでもなくWEB会議よりも対面のほうが相手の仕草や表情を読み解きやすく、その場の雰囲気も察知しやすいはずです。マイクやステレオ、ビデオカメラを通じての視覚・聴覚情報の品質が対面を凌駕することは考えづらく、さらにネットワーク回線が細かったり、不安定であったり、ICT技術の品質が悪かったりすると、その差はさらに開くばかりです。当然のことながら、対面でのコミュニケーションならばノンバーバルコミュニケーションの情報を最大限生かすことができます。

セキュリティ対策の壁

また、テレワークではオフィス外に情報が漏えいしないように、セキュリティ対策を万全にしていることが少なくありませんが、それによる影響も想定されます。例えば、急遽打ち合わせをすることになったとしましょう。オフィス勤務をしていればその場で話し合えば済むことです。

一方テレワークでは、セキュリティが堅牢な2重認証の業務用パソコンを立ち上げ、セキュアなVPNネットワークに接続し、DaaSサービスアプリを立ち上げ、WEB会議システムを起動し、打ち合わせ相手を招待して待つ……といったオフィス業務では不要な作業に時間と手間がかかってしまいます。また、Wi-Fiなどのネットワークが不安定になる分、打ち合わせの中断を余儀なくされる可能性があり、結果、作業効率の低下をもたらしかねません。

もちろん、VPNや仮想デスクトップやDaaSなど、テレワークを前提にした設計となっている、セキュリティ対策が万全な先端のICT技術を活用することが推奨されることでしょう。しかし、仮想デスクトップやDaaSといったネットワーク経由で使用することを前提にしたICT技術の場合、ネットワークが安定しないことによる悪影響は避けられません。

このようにセキュリティ対策によるデメリットがあるとはいえ、セキュリティ事故がいったん起こると甚大な損害を与えかねず、セキュリティ対策は万全を期すべきです。オフィス勤務よりも作業効率が下がることについては、その代償として受け入れざるを得ないのかもしれません。加えて、繰り返しになりますが、オフィス業務では不要な一連の準備作業に対し、煩わしさやストレスを感じる社員もいるでしょう。

テレワークの導入とコミュニケーション不足発生のジレンマ

新型コロナウイルスの蔓延・パンデミックが収束する以前

新型コロナウイルスの蔓延・パンデミックが収束するまでは、テレワークに伴うコミュニケーション不足を解消するために、(少なくともテレワークが可能なビジネス領域においては)通常勤務に戻すという選択は、主として感染抑止の観点から得策といえないのは明らかでしょう。

新型コロナウイルスの蔓延・パンデミックが収束して以後

それでは、新型コロナウイルス収束後ではどうでしょうか。テレワーク自体に、BCP(事業継続計画)対策、多様な働き方の推進と生産性の向上、ワーク・ライフ・バランスの充実を促進する効果があります。これまで見てきたようにコミュニケーション不足というマイナス面はあるにせよ、テレワークのメリットとデメリットを天秤にかけて判断する必要があるでしょう。ビフォー・コロナ時代にテレワークを導入した企業では、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイルワーク、本社勤務など、勤務場所を比較的自由に選べました。いわゆる、在宅勤務とオフィス出社を組み合わせたハイブリットな勤務体制が前提の企業は多かったはずです。

新型コロナウイルス感染症流行前の2016年、厚労省が策定・公表した「テレワークではじめる働き方改革(厚生労働省 2016年)(※5)」には、テレワークを実施した効果に関するデータがあります。

※5 厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革(テレワークの導入・運用ガイドブック)」
http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/14.pdf

まず、企業の雇用面に関するものとして、「職場におけるコミュニケーションの活性化」の9.4%が挙げられます。一方、従業員にとっての効果については、「テレワーク導入前よりもコミュニケーションが良くなった」の10.6%が挙げられており、コミュニケーション不足に陥るどころか改善していることを示しています。

テレワークが適したタイミングではテレワークを実施し、オフィス勤務が適している場合には出社することができれば、コミュニケーションに関連する問題・課題を改善・克服することが可能だと想定されます。新型コロナウイルスの蔓延・パンデミックの収束後には、在宅勤務とオフィス出社を組み合わせた「ハイブリット勤務体制」が採用され、コミュニケーションが改善の方向に転じても不思議ではないでしょう。

テレワークに伴うコミュニケーション不足との向き合い方

調査規模15,603名、調査期間2020年11月18日~11月23日の、株式会社パーソル総合研究所が実施した「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査(※6)」というデータがあります。

※6 株式会社パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/assets/telework-survey4-1.pdf

その調査結果によると、出社時の生産性を100%としたとき、テレワーク時の生産性は正規雇用就業者全体で平均84.1%、新型コロナウイルス対策がきっかけで初めてテレワークを行った者は82.2%、以前から行っていた者は89.4%と差がありました。

また、テレワーク時の生産性が高まる傾向にあるのは、業務プロセスと上司のマインドにともに柔軟性があり、結果を重視する志向性を持つ組織においてでした。逆に生産性を低めていたのは、集団・対面志向が強く、年功序列を重んじるような組織でした。テレワークに伴うコミュニケーション不足を解消するには、上司・マネージャーの役割がポイントになります。

彼らマネジメント層が柔軟な働き方を志向する組織風土を醸成すべく、テレワークに適したマインドセットでマネジメントを行い、率先して部下や同僚とコミュニケーションの活性化を図る必要があります。マインドセットの具体例としては、新しい環境への適応力、遠隔でも会社内調整をスムーズに行える人的つながり、部下の個別のキャリアへの関心などが挙げられます。

また、マネジメント行動では、ビジョンの共有、適切なジョブアサインと業務支援、オンライン会議のファシリテーションなどが挙げられます。そういったマインドセットでのマネジメントや部下・同僚と円滑なコミュニケーションを展開することで、テレワークに伴うコミュニケーション不足の原因である物理的な距離の壁やノンバーバルコミュニケーションの壁を乗り越えられる可能性が高まるでしょう。

他方、セキュリティ対策の壁に対しては、安定したネットワーク環境を構築するなど、最適なICT技術を整備・適用することで、可能な限りテレワークに関する煩わしさを軽減させることをお勧めします。テレワークの導入に関して十分な検討をすることなく、新型コロナウイルス感染症対策として、急いでテレワークを導入した企業では特に、ICT技術の最適化には、改善ポイント・ノビシロがあると予想されます。

コミュニケーション不足解消のためのコミュケーションツールの紹介に関しては、「テレワークにおけるコミュニケーション不足の課題と解決方法(※7)」をご参照ください。

※7 NTTコムウェア「テレワークにおけるコミュニケーション不足の課題と解決方法」
https://www.nttcom.co.jp/dscb/column/detail89/index.html

まとめ

WEB会議ツールの導入にあたっては、余裕があるならば慣習や文化、国民性の違いも考慮すべきでしょう。「日本の会議」というくくりで言うなら、それを研究し尽くしたリモートミーティングサービス「letaria(レタリア)(※8)」は候補として有力で、検討をお勧めします。

※8 NTTコムウェア「日本の会議を考え抜いたWEB会議システム」
https://www.nttcom.co.jp/dscb/letaria/

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