
定期的に自宅へ商品が届くサブスクリプション(以下「サブスク」)ビジネスの成長が続いています。中でも、食品の定期購入は、化粧品やアパレルと並び、最も人気のある分野の1つとなりました。
定期的に購入する定番商品のある食料品分野はサブスクに適しており、多くの企業が参入しています。
そして、競争が激化する市場において、継続的に利益を上げる企業がある一方で、顧客を獲得・維持できずに業務を停止する企業も見受けられます。
本記事では、食料品を取り扱うサブスク企業の事例を紹介します。
- 最適な食材の組み合わせから豊かな食卓を実現するOisixの定期宅配
- 柔軟なプランが人気のHelloFreshはグローバル展開に成功し、米国の市場シェアで一位を獲得
- 食品サブスクの肝は、料理とオペレーションの双方を同時に最適化できるかどうか
最適な食材の組み合わせから豊かな食卓を実現するOisixの定期宅配
食品宅配サービスOisix※1は、有機野菜や無添加加工食品を届けるECサイトとして有名であり、その会員数は2020年3月末時点で23万人、2020年12月末には28万人を超え、短期間での急成長を遂げています。※2
定期宅配の「おいしっくすくらぶ」では、複数のコースが提供されており、本格料理が簡単に作れるミールキット『Kit Oisix』は累計出荷食数が3,500万食を超えるヒット商品になりました。※3

他にも、Oisixの取扱商品約3,000点から旬の野菜やおすすめ食材をセレクトしてくれる『おいしいものセレクトコース』、離乳食や乳幼児向けにお子様の月齢に合った商品や時短商品を提供する『プレママ
&ママコース』から定期ボックスの内容を選択可能です。※4
定期宅配は2人前で約5,000円前後ですが、多くの消費者に支持されるのは、普段使っているスーパーでは購入しないような高品質の有機野菜や珍しい食材との出会いが、豊かな食卓を実現できるという体験をもたらしているからでしょう。
同サービスは定期購入を行うサブスクの特性を活かし、どのような属性の消費者が何の食材を購入しているかを長期的に分析しています。
料理は複数の食材を使うため、商品単位でのニーズだけではなく、最適な食材の組み合わせを見出すことができます。※5
※2 シェアードリサーチ
※3 必要量の食材と調味料、レシピがセット「ミールキット」認知度 2年前の4倍 80%超え
※4 有機野菜などの安全食材宅配 Oisix(おいしっくす)
※5 「味を科学する」お買い物サポート機能を開始
柔軟なプランが人気のHelloFreshはグローバル展開に成功し、米国の市場シェアで一位を獲得
海外で人気を集める食品サブスクの1つとして、2011年にドイツで創業されたHelloFreshが挙げられます。
栄養の配分を考えたレシピと、それに必要な食材が毎週提供される仕組みが人気を集めてきました。
HelloFreshの特長は、柔軟にプランを選択できる点で、ベジタリアン向け、家族向け、カロリー控えめといったオプションに加え、人数や配送頻度を選択できます。※6
米国では最も市場シェアを獲得した食品配送サービスであり、カナダ、英国、フランス、オーストラリア等、グローバルでサービスを展開してきました。
忙しい現代人にとって「今日、何を食べたい?」と考える義務から解放されることには価値があり、20分程度で簡単に調理できるミールキットの利便性は高く、満足度の高い食事の時間を過ごす助けとなります。
同社の徹底的なデータ分析に基づいたマーケティング施策が事業成功の秘訣と考えられています。
食品サブスクの肝は、料理とオペレーションの双方を同時に最適化できるかどうか
顧客を維持し事業を継続するサブスク・サービスがある一方で、事業停止を余儀なくされた企業も存在します。
2010年にサンフランシスコで創業したMuncheryは、多額の資金をベンチャーキャピタルから調達し、市場から大きな期待をかけられていましたが、2019年1月にサービスの停止を発表しました。※7

食料品のサブスクでは、食材の調達・下ごしらえと、食品の配送の双方について、優れたオペレーションを確立する必要があり、このビジネスモデルが事業の難易度を高めていると考えられます。
美味しい料理を提供することに気を取られて、それを届ける手段を考えなければ採算が合わなくなってしまうのです。
サブスクは顧客へ価値を提供し続けると共に、サービス品質を維持する必要があります。
継続的に取得できる顧客の行動データから、より深く顧客を理解し、どの顧客へ何の価値を提供して、それをどう見込顧客へアピールするのかを考える必要があるのです。
特に食品(モノ)のサブスクでは、料理・食材(サービス)の質と同じくらい、配送やオペレーションが重要であり、採算性および事業の継続性に大きく影響を及ぼします。
サブスクへの新規参入を検討している企業は、商品開発だけではなく、オペレーションやバックオフィスの運用についても、よく吟味する必要があるといえます。