
業務システムについて、SaaS(Software as a Service)という利用形態が普及したことから、多くの企業が直面するのが「オンプレミスでシステムを構築したほうが良いのか、それともSaaSを導入したほうが良いのか?」という選択です。
高速のインターネット回線が当たり前となった現在、企業ではOffice 365※1 やCreative Cloud※2 をはじめとする複数のSaaS運用が一般化しています。
SaaSは初期コストを抑えて短期で実稼働を開始でき、かつ解約も容易であることから、オンプレミスよりもはるかにハードルが低い選択肢と言えます。
その一方、企業のニーズやビジネスの種類、用途によっては、SaaSよりもオンプレミスでのシステム構築の方が望ましいケースも存在します。
※2 「Adobe Creative Cloud」は、米国および/またはその他の国におけるAdobe Systems.Incの登録商標または商標です。
オンプレミスでシステムを構築した場合のメリット・デメリット
オンプレミスでのシステム構築、その最大の魅力は、何と言っても設計自由度の高さと柔軟性ではないでしょうか。
自社のニーズに合わせて独自のカスタマイズが可能であり、社内の既存システムとの連携や統合がしやすい。
社内のネットワークを使用して接続するため、秘匿性が確保できるほか、回線の速度や質も安定し、負荷分散や冗長化により信頼性を高めることができるといったメリットがあります。

そのため、重要な機密事項を取り扱う場合や、ライフラインなどの社会インフラを管理する場合等、ミッションクリティカルなシステムについては、コストをかけてでもオンプレミスで構築する必要があるといえるでしょう。
一方、デメリットとして真っ先に挙げられるのが、膨大な初期コストと構築期間の長さです。
汎用機の技術を持った人員の確保に要する人件費、稼働に必要なサーバーやソフトウェアライセンス、ネットワーク機器の購入費用などが発生します。
結果として数億円や数十億円までコストが膨らむことも珍しくはありません。
また、それだけのコストと時間をかけて構築したシステムですから、当然長期にわたり利用することが前提となるため、保守・運用にもランニングコストが発生し続けます。
購入したサーバーやソフトウェアの資産管理も必要となり、減価償却費を毎年計上する必要も出てきます。
このため、ビジネスの失敗による事業縮小や、ビジネスから撤退するような事態に陥った場合、投資回収できずに減損処理を行う必要に迫られる等、企業として大きな痛手を被ることになります。
加えて、後々EOL(End Of Life)を迎えた場合、システムの更改やデータ移行にかかるコストも甚大なものとなります。
以上の要素を考慮すると、オンプレミスでのシステム構築は、業界標準の業務プロセスを採用できない独自のサービスや、ミッションクリティカルなサービスには適していますが、それ以外のサービスへ適用するにはメリットよりもデメリットの方が大きいと考えられます。
SaaSを導入した場合のメリット・デメリット
では、SaaSにはどのようなメリットがあるでしょうか。
すでに稼働しているシステムをサービスとして利用することになるため、自社向けの設定に数日から1カ月程度の期間を要するだけで導入することができます。
また、需要増によるリソース調整等はすべてSaaS事業者側で行われるため、サービスを受けるユーザーは考慮する必要がありません

コストの面でも、通常は月額課金や年間契約のサブスクリプション制であるため、サービスの種類にもよりますが、月々数千円〜数十万円の利用料でスタートできます。
さらに、すべてがインターネット経由で提供されるため、資産管理の必要がなく、経費として利用したい場合には有効です。
インターネットに接続できる環境であれば、原則としてどこからでもアクセス可能であるため、デバイスの縛りがなく、テレワークなど多様な働き方にも適しています。
また、よく懸念されがちな安全面も、導入前にセキュリティやサービスレベルを確認し、自社のポリシーと一致することさえ押さえられていれば問題になりません。
こうした数々のSaaSのメリットは、スモールスタートで迅速にビジネス展開したいケース、たとえば現在企業の間でも関心が高まっているサブスクリプションビジネスのようなビジネスモデルには非常に適しています。
かつ、オンプレミスと比べれば月単位や年単位の契約により短期間で解約できるため、仮に成長や収益が見込めなくなった場合でも、容易に事業の撤退が可能であり、リスクの少ない選択といえるでしょう。
SaaSのより詳しいメリットについては、こちらの記事をご覧ください。

SaaS活用でシステムの保守運用から解放!
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もちろん、SaaSにもデメリットは存在します。
たとえば5〜7年と長期にビジネスが成長し継続していくことが見込まれる場合、オンプレミスと比較して、月額課金や年額課金のSaaSはトータルコストが割高となる場合があります。
また、すでに稼働しているSaaSを利用することで、そのSaaSに合わせた業務へ適合するためのスイッチングコストがかかります。
既存業務が変更できず、SaaSに合わせた業務へ適合できない場合においては、独自の設計や個別カスタマイズが伴うなど、追加コストと開発期間が発生します。
さらに、インターネット経由での利用となるため、ネットワークへの負荷が増大した場合など、接続の速度と品質が低下するリスクも否めません。
このように、オンプレミスとSaaS、それぞれに長所と短所が存在します。
今後、業務システム導入やシステムリプレースが必要となった場合、どちらの選択肢が品質、コスト、スピードの面で自社のサービスに適しているかを見極めることが肝要になるでしょう。
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