
今後、人口減少でモノがますます売れなくなる日本。
消費者の購買行動が所有から利用へと大きな変化を遂げつつある中、売り切りではなく、サービスを利用した期間や利用量に対して対価を支払うビジネスモデルである、サブスクリプション(以下「サブスク」)ビジネスへの関心が、企業の間で高まっています。
この動向について、当然ながら気になるのが「売り切り型からサービス型(サブスク)に転換すれば儲かるのか?」というポイント。
この疑問を明らかにするために、まずはサブスクの収益構造から見ていきましょう。
サブスクの収益構造
従来的な売り切り型の販売モデルでは、製品を作って販売すれば、一時的に大きな収益を得られます。
ただし、シーズンや仕入れ状況、景気などの外的要因によって、収益が不安定となるため、事業の見通しも不透明になりがちです。
一方で、サブスクは顧客と契約して製品やサービスを継続的に利用してもらう、つまりモノではなくコトを売るビジネスモデルであるため、顧客の継続率が下がらないかぎりは収益が安定します。

また、売り切り型に比べサービスとして柔軟性を持たせることもできるため、外的要因にも強く、契約数や継続率などから事業の見通しを立てることも容易です。
鍵を握るのは、LTVの継続的な向上
では、既存のビジネスをサブスクに転換すれば、収益が安定するのか?
答えは「Yes」ですが、あくまで必要な取り組みを実践した上での話です。
サブスクで収益を生み出すための鍵を握るのは、顧客との長期的な関係構築。そこで重要視される指標が、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)です。
LTVは、サブスクにおけるKPIの1つであり、1人の顧客がそのサービスや商品を使い続ける間、企業側が受ける収益の総額を表します。
LTVにはさまざまな算出方法がありますが、ここでは
「1顧客あたりの平均月間売上高(ARPU) / 月次解約率」を例に見ていきます。
この計算式からもわかる通り、LTV向上で意識すべき指標なのが、1顧客あたりの月間売上高と解約率(チャーンレート、離脱率とも)です。
一度解約してしまった顧客は競合のサービスに乗り換えてしまうリスクがあることから、特に解約率はLTV向上のために重要な指標であると言えます。
新たな提案や充実したサポートでのリテンション
では、LTV向上に向けて、1顧客あたりの月間売上高を増加させ、解約を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?
サービスの料金体系を月額課金へ変更するだけでは、単に支払いが一括払いから分割払いに変わっただけで、顧客が感じるお得感はそれほどありませんし、企業にとっても料金回収に関するリスクが高まるだけです。
まず大事なのは、サービス内容に多様性を持たせ、顧客に選ばせることです。
単一のプランだけでなく、サービスランクの異なる複数のプランや追加オプションなどを設定することで、顧客は自身のニーズに応じてプランを選択することができます。
また、複数のプランを用意することにより、企業は顧客の利用動向に応じてアップセルやクロスセルを提案するなど、1顧客あたりの売上高を増加させることが可能になります。
例えば、多くの動画配信サービスでは、プランによって異なる画質や同時視聴可能数を設定しています。
標準的なプランを家族で利用していて、視聴時間が長いユーザーには、よりランクの高いプレミアムなプランを訴求するといったアップセルが可能です。
次に大事なのは、顧客のオンボーディングをサポートすることにより、サービス利用を促すことです。
サービスの利用率が低い、つまりそのサービスを使いこなしていない顧客は、早期解約に至る確率が非常に高い傾向にあります。
こうした解約を防ぐために、導入から軌道に乗せる過程をサポートすることにより、顧客がサービスを使いこなせるよう導いてあげることが肝心です。
そのほか、あるタイミングからサービス利用率が低下し始めるようなケースでは、よりランクの低いプランへの切り替え(ダウンセル)提案や、サービスの休止をお勧めする方が、解約を防ぎ顧客満足度を向上させる上でスマートな対策と言えます。
収益を上げるには、まず土台から
可能であれば、サブスク立ち上げ当初のプラン設計段階で、サービスを気に入ってくれた顧客を自動的にアップセルやクロスセルにつなげる仕組みを作っておくのが最善です。
しかし、そういった仕組みづくりは難易度が高いのも事実。まずは提案活動を通じてアップセルやクロスセルを促しましょう。

幸いなことに、サブスクが従来の販売モデルと大きく異なる点は、長期にわたる契約の中で、顧客の利用データを収集しやすいということ。
それらをうまく活用すれば、今後の提案活動の幅が大きく広がります。
そのためには、商品管理から請求管理、顧客とのエンゲージメントまで、サブスクに関連する一連の業務をどう運営していくのか、どのようにデータを管理するべきか、といった点も、設計段階における重要な検討課題と言えます。
一人ひとりの顧客と継続的な関係性を築いていくのに有効な料金体系を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

従量制×定額制がサブスクサービスの新常識
サブスクリプションをあえて定義するならば、「サービスや商品の利用を通して、顧客に価値を提供し続けることで、継続的な関係性を築くビジネスモデル」です。そこには…
繰り返しになりますが、サブスクへ転換した後に収益を上げていくためには、顧客との長期的な関係構築に基づくLTV向上の取り組みが不可欠、ということをご理解いただければと思います。